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退部
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出場辞退の余波で、その事後処理に追われていた監督の園山は、ようやく落ち着きを取り戻し、監督室で一息ついていた。
優里が訪ねてきたのは、その日の授業が終わり、しばらく経ってからだった。
「失礼します。
よろしいですか?」
ノックをし、ドアを開けて一礼した優里は園山に向かってそう告げた。
「水谷か。
どうした?」
「監督、実は野球部を辞めさせていただこうと思いまして」
「えっ」
優里はブレザーの内ポケットから退部届を取り出し、園山に手渡した。
園山は退部届を見つめながら、ため息をついた。
「すまんな、水谷
お前と大輔は我が校始まって以来の天才球児として、俺はもちろん、学校の皆が大きな期待をしていたんだ。
お前らがいたら甲子園なんて夢でなくなるってな。
それをこんな不祥事で台無しにしてしまうんだから、お前も愛想が尽きただろ。」
「いえ、そういうわけではありません。
甲子園目指して野球をしようと思ってたのは一年生のうちだけです。
それが断たれてしまったので、辞めさせてもらおうと。」
「そうか。
辞めてどうするんだ?」
「野球部に入る時にお話をさせていただきましたが、僕は性同一性障害なんです。
部を辞めた後はホルモン療法を始めて、一定期間が過ぎたら性適合手術を受けます。」
「そうだったな…」
「はい。」
「まあ、気持ちは変わらんと思うが、水谷
このまま野球を続けたらプロに入るのも夢じゃないと思う。いや、それどころか、すぐにスターになれる実力がお前にはある。
何十億という金を稼げる一握りの選手だ。
それでも、辞めるか?」
「はい。辞めます。
野球は好きですが、女性として生活したいという夢の方が大きいんです。
だから辞めても後悔はありません。」
「そうか、わかった。
これもお前の人生だ。俺も何も出来はしないと思うが、陰ながら応援してるよ。
困った事があったら何でも言ってきてくれよ。」
「はい。ありがとうございます」
優里は深々と頭を下げてその場を後にした。
優里が訪ねてきたのは、その日の授業が終わり、しばらく経ってからだった。
「失礼します。
よろしいですか?」
ノックをし、ドアを開けて一礼した優里は園山に向かってそう告げた。
「水谷か。
どうした?」
「監督、実は野球部を辞めさせていただこうと思いまして」
「えっ」
優里はブレザーの内ポケットから退部届を取り出し、園山に手渡した。
園山は退部届を見つめながら、ため息をついた。
「すまんな、水谷
お前と大輔は我が校始まって以来の天才球児として、俺はもちろん、学校の皆が大きな期待をしていたんだ。
お前らがいたら甲子園なんて夢でなくなるってな。
それをこんな不祥事で台無しにしてしまうんだから、お前も愛想が尽きただろ。」
「いえ、そういうわけではありません。
甲子園目指して野球をしようと思ってたのは一年生のうちだけです。
それが断たれてしまったので、辞めさせてもらおうと。」
「そうか。
辞めてどうするんだ?」
「野球部に入る時にお話をさせていただきましたが、僕は性同一性障害なんです。
部を辞めた後はホルモン療法を始めて、一定期間が過ぎたら性適合手術を受けます。」
「そうだったな…」
「はい。」
「まあ、気持ちは変わらんと思うが、水谷
このまま野球を続けたらプロに入るのも夢じゃないと思う。いや、それどころか、すぐにスターになれる実力がお前にはある。
何十億という金を稼げる一握りの選手だ。
それでも、辞めるか?」
「はい。辞めます。
野球は好きですが、女性として生活したいという夢の方が大きいんです。
だから辞めても後悔はありません。」
「そうか、わかった。
これもお前の人生だ。俺も何も出来はしないと思うが、陰ながら応援してるよ。
困った事があったら何でも言ってきてくれよ。」
「はい。ありがとうございます」
優里は深々と頭を下げてその場を後にした。
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