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終焉
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17時から緊急の職員会議が行われ、園山も出席した。
「佐渡先生、説明をお願いします。」
校長の斎賀に促され、生活指導の沢渡が頷き立ち上がった。
「昨日の午後7時ごろ、白楽駅近くの路上で、当校の三年生、峰山瑛太と西原剛志の二名が、田ヶ原学園の男子生徒二名と口論になり、暴行を加えたということです。」
「ウチの生徒が暴行を…
相手からは?」
峰山瑛太、西原剛志の担任の山際が質問すると、沢渡は頷いて話を続けた。
「峰山が先に手を出し、西原も加勢
一方的な形となり、相手からはほとんど反撃もなかった模様です。」
「…」
「その後、相手の生徒二名の所持金、計18000円を奪い、その場を後にしたそうです。」
「金を取ったんですか!」
「ええ。被害を受けた生徒が警察に連絡し、1時間後に現場近くにいた二人を逮捕しました。」
「逮捕、ですか?」
「そうです。暴行と恐喝という大人顔負けの罪で。」
「さて、どうしたものか。
園山監督、彼ら二人について説明して下さい。」
「はい。峰山瑛太、西原剛志の二名は、共に一年から硬式野球部に所属し、西原は投手、峰山は捕手として、昨年秋の新チーム発足のときにレギュラーとなりました。
しかし、今春、水谷優里と冨樫大輔の二名が入学し、彼らにレギュラーの座を奪われてしまいました。
実力社会ですので、明らかに才能のある一年の出現については彼らも理解してくれていると思っていたのですが、納得できなかったようで。
西原は即座に退部、峰山は最初のうちは練習に参加していましたが、しばらくすると顔を出さなくなりました。」
「先ほど、園山監督と話をしたんですが、峰山君は今も野球部に席を置いているんです。」
「それはマズイですね」
「高野連に速やかに連絡を入れ、今開催中の夏の予選への出場を辞退するのが良いのではないか。」
「ちょっと待って下さい。
丸和はずっと弱小でしたが、今年は違います。
強豪校にスカウトされてもおかしくないような二人の一年生が入ったおかげで、予選はおろか、甲子園出場、全国大会でも良いところまでいける可能性があるんです。」
園山の言葉に、皆が渋い表情を見せた。
「こんな話はね、高野連が一番嫌うし、マスコミは嬉々として報道するんだよ。
辞退したら生徒が可哀想、辞退しなければ反省してない、隠蔽しようとしている等と散々叩かれてしまう。
我々には前者を選ぶしか道は無いんだよ。
たとえ生徒が可哀想だと言われようがね。」
斎賀はかなりキツイ口調で園山を嗜めた。
「…わかりました。先生方に一任します。」
園山は立ち上がり、頭を下げると会議室を出て行った。
「やむを得まい…」
斎賀はため息をつき、居並ぶ教職員達に視線を送ったが、一様に言葉を発せず、重苦しい空気が場を包んだのだった。
「佐渡先生、説明をお願いします。」
校長の斎賀に促され、生活指導の沢渡が頷き立ち上がった。
「昨日の午後7時ごろ、白楽駅近くの路上で、当校の三年生、峰山瑛太と西原剛志の二名が、田ヶ原学園の男子生徒二名と口論になり、暴行を加えたということです。」
「ウチの生徒が暴行を…
相手からは?」
峰山瑛太、西原剛志の担任の山際が質問すると、沢渡は頷いて話を続けた。
「峰山が先に手を出し、西原も加勢
一方的な形となり、相手からはほとんど反撃もなかった模様です。」
「…」
「その後、相手の生徒二名の所持金、計18000円を奪い、その場を後にしたそうです。」
「金を取ったんですか!」
「ええ。被害を受けた生徒が警察に連絡し、1時間後に現場近くにいた二人を逮捕しました。」
「逮捕、ですか?」
「そうです。暴行と恐喝という大人顔負けの罪で。」
「さて、どうしたものか。
園山監督、彼ら二人について説明して下さい。」
「はい。峰山瑛太、西原剛志の二名は、共に一年から硬式野球部に所属し、西原は投手、峰山は捕手として、昨年秋の新チーム発足のときにレギュラーとなりました。
しかし、今春、水谷優里と冨樫大輔の二名が入学し、彼らにレギュラーの座を奪われてしまいました。
実力社会ですので、明らかに才能のある一年の出現については彼らも理解してくれていると思っていたのですが、納得できなかったようで。
西原は即座に退部、峰山は最初のうちは練習に参加していましたが、しばらくすると顔を出さなくなりました。」
「先ほど、園山監督と話をしたんですが、峰山君は今も野球部に席を置いているんです。」
「それはマズイですね」
「高野連に速やかに連絡を入れ、今開催中の夏の予選への出場を辞退するのが良いのではないか。」
「ちょっと待って下さい。
丸和はずっと弱小でしたが、今年は違います。
強豪校にスカウトされてもおかしくないような二人の一年生が入ったおかげで、予選はおろか、甲子園出場、全国大会でも良いところまでいける可能性があるんです。」
園山の言葉に、皆が渋い表情を見せた。
「こんな話はね、高野連が一番嫌うし、マスコミは嬉々として報道するんだよ。
辞退したら生徒が可哀想、辞退しなければ反省してない、隠蔽しようとしている等と散々叩かれてしまう。
我々には前者を選ぶしか道は無いんだよ。
たとえ生徒が可哀想だと言われようがね。」
斎賀はかなりキツイ口調で園山を嗜めた。
「…わかりました。先生方に一任します。」
園山は立ち上がり、頭を下げると会議室を出て行った。
「やむを得まい…」
斎賀はため息をつき、居並ぶ教職員達に視線を送ったが、一様に言葉を発せず、重苦しい空気が場を包んだのだった。
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