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地下四階ですごいものを見ました。
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ノグを倒し、部屋の最奥部にある階段を下りていく。その先にあったのは、大量の書棚が点在している部屋だった。
「わー。こっちは図書館みたい」
『すばらしい……!』
「ここが……あれか。六賢者の許可がないと見られない資料があるという……」
どこかに魔人王の記録とかあるのかもしれないが……如何《いかん》せん資料があまりにも多い。この中から目的のものを見つけるのは、かなり時間がかかるだろうな。
「でもだれもいないみたいだよー?」
リュインは高く飛んで、周囲を観察している。どうやら見渡しても、俺たち以外にだれもいないようだ。
「そんなわけはないんだが……」
『ううむ……ここにある資料のすべてを記録しておきたいところだ……』
「時間があればな……って、おい。リュイン」
リュインは適当にひゅいーんと飛んでいく。どこになにがあるかわからないってのに……。
「ねぇねぇ! こっち! 階段があるよ!」
「ん……?」
どうやら適当に飛んでいたわけではなく、気になるものを見つけていたらしい。
俺は書棚の間を通り抜けながら、リュインのいる部屋の最奥部へと移動した。
「これは……」
「まだこの下があるみたいー」
なんだ……? 階段や壁に、水晶みたいな材質が使われている……?
ほのかに輝いているし、視界もそれほどわるくはない。
「どうやらエンブレストたちはこの先みたいだな」
「行ってみようよ!」
「ああ」
前方に警戒しながら階段を下りていく。その先に広がっていたのは、これまでとはちがってそれほど広くはない空間だった。
「なんだこりゃ……」
「見て見て! 真ん中のやつ、すっごくキレイ~!」
部屋の中心部ではどでかい球体が光っている。周囲で回っている金属環といい、芸術を感じさせるオブジェっぽい印象だ。
またこの球体を取り囲むように、6つの台座が設置されていた。
「って……! ちょ、ちょっとマグナ! これこれ!」
「どうしたよ、リュイン」
すこし離れたところでリュインが床に指をさしている。なにかが落ちているな。
視力抜群で暗視機能もあるコンタクトレンズのおかげで、落ちているものの正体はだいたいわかったのだが。俺はそれを確認すべく、側まで移動する。
「うげぇ……」
『腕と眼球か』
見間違いでもなんでもなかった。そこには1組の腕と眼球が落ちていた。
眼球は透明なケースに入っている。前にリュインがさらわれたときも、こんなケースが使用されていたな……。
『切断されてからまだ1日は経過していないようだが……。この場で斬られたわけではなさそうだ』
「……あん? それじゃエンブレストは、わざわざこんな地下まで他人の腕と眼球を持ち込んだってのか? なんのために?」
『さて……』
なにか目的があって持ち込んだのなら、どうしてここに放置されているんだとなる。どう見ても捨てられているようにしか思えないし。
それに球体のすぐそばには、さらに地下に続く階段があった。部屋にエンブレストがいない以上、この先にいるのだろう。
「なぁ。大図書館ってそもそも地下二階までなんじゃなかったのか? ここは地下三階だし……さらにこの先も続いているし。どうなっている……?」
『一般的には地下二階までしか知られていないのだろう』
「え?」
『思い出してみろ。地下三階へ向かう階段から、壁や階段を形成している素材が大きく変化している。建築様式も異なっているし、おそらく同時代に建造されたものではないのだろう』
リリアベルの解析によると、この地下三階以降の方が建築に高度な技術が使われているとのことだった。
『そもそも地下階層を作るという発想は、一定水準以上の建築技能を有していなければ生まれないものだ』
地盤の安定性や強度、またそれらを計算したうえでどれくらいの大きさの穴を掘るのか。掘った穴の補強はどう進めるのか。いくつもの計算が必要になってくるらしい。
『ただ穴を掘ってフタをし、その上に建物を建てる……ここはそんなレベルを優に超えている。地下二階との建築様式のちがいから見て、普段は隠されたエリアになっているのではないか? 階段もいかにもなにか仕かけが施されている風のデザインだった』
まじか……ぜんぜんわからなかったぜ……。リリアベルの解析では、ただの階段には見えなかったらしい。
『この地下に続く階段にしてもそうだ。なにか仕かけが動いて姿を見せたような……そんな痕跡が確認できる』
「つまり……だれも知らない未知がこの先にある……?」
おお……。魔獣大陸じゃないけど、冒険者っぽいな……!
そんな場合ではないけど、ちょっとワクワクしてきた。
「ねぇねぇ。行ってみようよ」
「そうだな」
螺旋階段をゆっくりと降りていく。階段は予想以上に長く続いていた。
「なぁ。さっきのリリアベルの話だと、地下建設は高度な技術が必要なんだよな? こんなに深く地下を作っているってことは……この星の建築技術って、じつはすごいのか?」
『…………これまで見てきた建築を見るに、このような規模の地下階層が作れるとは思えん。そもそも掘削一つとっても、高度な技術が必要になる』
「でも現実に存在してんじゃん?」
『ああ。この星独自のエネルギー……魔力がなんらかの形で独自の発展を遂げている可能性もあるが。……ルシアから聞いたオーパーツの話は覚えているな?』
「え? あ、ああ……」
大昔の遺跡から稀に発見される不思議道具だな。現在の魔道具では再現不可能な機能を持っているらしい。
『この星には昔、今より高度でかつ別軸の文明が発達していたのだろう。文明のリセットは、他の惑星でもしばしば見られる現象だ』
一度栄えた文明がなんらかの災害でリセットされ、また一から文明を築きなおす。たしかにそうした惑星は存在している。
「ここもそうだってのか……?」
『その可能性は高いだろう。おそらくオーパーツやこの地下層を作ったのは、そうした高度文明期に存在していた者たちだ』
「そういや2000年前に魔人王がいたとかいうし。そのときにリセットされたのか……?」
『いや、もっと昔だろう。いくつか根拠となる理由はあるが……』
リリアベルの言葉の途中でいよいよ出口が見えてきた。俺はゆっくりと足を進め、出口から顔を出す。
「へ……」
そっと様子を見るつもりだったのに、俺は思わず全身を進ませてしまう。そして地下四階に足を踏み入れたのだった。
「うぉ……!? なんだあれ!?」
「すっごーい! 巨人が鎧を着てる~!」
目の前の光景を見て、この星に来て以来になる最大の衝撃を受けていた。
甲冑を着こんだどでかい巨人が、これまた超サイズの椅子に座り込んでいるのだ。しかも巨人サイズの剣まで刺さっている。
巨人はその剣の柄に両手を置いており、堂々とした佇まいだった。
(俺の機動鎧、エルベイジュよりもでけぇ……!)
ざっと3倍くらいはでかいだろうか。たまに帝国でもロマンを追及する科学者がでかい機動鎧を作成することはあるが、なんとなくそれと雰囲気が似ている気がする。
だがロボというよりは、甲冑を着こんだ騎士という見た目だ。
あまりメカメカしく見えないので、初めは巨人が甲冑を着こんでいるものだと誤解してしまった。しかしどう見ても甲冑の中身はスカスカじゃない。
それに暗めの赤と黒でカラーリングされている点といい、威圧感も強かった。
『正面だ!』
「っ!?」
リリアベルの警告に意識を前に集中させる。するとキレイなお姉さんが曲刀を振ってきていた。
「うぉ!?」
身をかがめてかわすが、お姉さんは流れるような動作で曲刀を振るってくる。
かなりはやい……というか! 普通に強い!?
「っぶねぇ!」
俺は本気のハルトと直接戦ったことはないが、お姉さんはアハトと戦ったハルトとほぼ同水準の動きを見せていた。
うまく腰や腕を狙ってきており、なかなか剣を抜かせてもらえない。
ったく……! 俺はアハトとちがって、剣を片手で止めることなんてできねぇっての!
「いきなりなんだ……よ!」
横に振るわれる曲刀にタイミングを合わせ、俺は下から蹴り上げる。
「な……!?」
予想外の力で蹴り上げられ、しかしそれでも曲刀を手放さなかったことで、お姉さんは腕を上げる姿勢となった。
その隙に剣を抜き、ためらいなく斬りかかる。
「っ!!」
しかしここでお姉さんは地を滑るような動きで後方へと飛んだ。
やっぱりはやいな……! 総合力だとハルトの上をいっているかもしれない……!
距離が空いたことで、あらためてお姉さんに視線を向ける。
褐色の肌に灰色の髪、そして踊り子のような衣服。腕や腰にひらひらした布がついており、それがますます見た目の踊り子感を強くしている。
上着はへそを出しているし、胸もまぁまぁあるな。うーん、セクシー……。
(だが本当に踊り子ってことはないよな……。どう見ても殺す気満々だったし)
殺意の高いお姉さんに謎の巨大甲冑。これまでのことも加えて、情報があまりに多すぎる……!
「あなた……なにもの? 上にはノグもいたはず……」
お姉さんは再び曲刀を構える。さて……とりあえずこの質問には、なんかかっこいい感じに答えたいところだけど……。
「その男はもうやっつけたわ! ハイスという男もね! あなたはもう袋のネズミよっ!」
「………………」
リュインにセリフを取られてしまった。というか2人ともやっつけたのは俺だっての!
「ノグと……ハイスを……!?」
「わー。こっちは図書館みたい」
『すばらしい……!』
「ここが……あれか。六賢者の許可がないと見られない資料があるという……」
どこかに魔人王の記録とかあるのかもしれないが……如何《いかん》せん資料があまりにも多い。この中から目的のものを見つけるのは、かなり時間がかかるだろうな。
「でもだれもいないみたいだよー?」
リュインは高く飛んで、周囲を観察している。どうやら見渡しても、俺たち以外にだれもいないようだ。
「そんなわけはないんだが……」
『ううむ……ここにある資料のすべてを記録しておきたいところだ……』
「時間があればな……って、おい。リュイン」
リュインは適当にひゅいーんと飛んでいく。どこになにがあるかわからないってのに……。
「ねぇねぇ! こっち! 階段があるよ!」
「ん……?」
どうやら適当に飛んでいたわけではなく、気になるものを見つけていたらしい。
俺は書棚の間を通り抜けながら、リュインのいる部屋の最奥部へと移動した。
「これは……」
「まだこの下があるみたいー」
なんだ……? 階段や壁に、水晶みたいな材質が使われている……?
ほのかに輝いているし、視界もそれほどわるくはない。
「どうやらエンブレストたちはこの先みたいだな」
「行ってみようよ!」
「ああ」
前方に警戒しながら階段を下りていく。その先に広がっていたのは、これまでとはちがってそれほど広くはない空間だった。
「なんだこりゃ……」
「見て見て! 真ん中のやつ、すっごくキレイ~!」
部屋の中心部ではどでかい球体が光っている。周囲で回っている金属環といい、芸術を感じさせるオブジェっぽい印象だ。
またこの球体を取り囲むように、6つの台座が設置されていた。
「って……! ちょ、ちょっとマグナ! これこれ!」
「どうしたよ、リュイン」
すこし離れたところでリュインが床に指をさしている。なにかが落ちているな。
視力抜群で暗視機能もあるコンタクトレンズのおかげで、落ちているものの正体はだいたいわかったのだが。俺はそれを確認すべく、側まで移動する。
「うげぇ……」
『腕と眼球か』
見間違いでもなんでもなかった。そこには1組の腕と眼球が落ちていた。
眼球は透明なケースに入っている。前にリュインがさらわれたときも、こんなケースが使用されていたな……。
『切断されてからまだ1日は経過していないようだが……。この場で斬られたわけではなさそうだ』
「……あん? それじゃエンブレストは、わざわざこんな地下まで他人の腕と眼球を持ち込んだってのか? なんのために?」
『さて……』
なにか目的があって持ち込んだのなら、どうしてここに放置されているんだとなる。どう見ても捨てられているようにしか思えないし。
それに球体のすぐそばには、さらに地下に続く階段があった。部屋にエンブレストがいない以上、この先にいるのだろう。
「なぁ。大図書館ってそもそも地下二階までなんじゃなかったのか? ここは地下三階だし……さらにこの先も続いているし。どうなっている……?」
『一般的には地下二階までしか知られていないのだろう』
「え?」
『思い出してみろ。地下三階へ向かう階段から、壁や階段を形成している素材が大きく変化している。建築様式も異なっているし、おそらく同時代に建造されたものではないのだろう』
リリアベルの解析によると、この地下三階以降の方が建築に高度な技術が使われているとのことだった。
『そもそも地下階層を作るという発想は、一定水準以上の建築技能を有していなければ生まれないものだ』
地盤の安定性や強度、またそれらを計算したうえでどれくらいの大きさの穴を掘るのか。掘った穴の補強はどう進めるのか。いくつもの計算が必要になってくるらしい。
『ただ穴を掘ってフタをし、その上に建物を建てる……ここはそんなレベルを優に超えている。地下二階との建築様式のちがいから見て、普段は隠されたエリアになっているのではないか? 階段もいかにもなにか仕かけが施されている風のデザインだった』
まじか……ぜんぜんわからなかったぜ……。リリアベルの解析では、ただの階段には見えなかったらしい。
『この地下に続く階段にしてもそうだ。なにか仕かけが動いて姿を見せたような……そんな痕跡が確認できる』
「つまり……だれも知らない未知がこの先にある……?」
おお……。魔獣大陸じゃないけど、冒険者っぽいな……!
そんな場合ではないけど、ちょっとワクワクしてきた。
「ねぇねぇ。行ってみようよ」
「そうだな」
螺旋階段をゆっくりと降りていく。階段は予想以上に長く続いていた。
「なぁ。さっきのリリアベルの話だと、地下建設は高度な技術が必要なんだよな? こんなに深く地下を作っているってことは……この星の建築技術って、じつはすごいのか?」
『…………これまで見てきた建築を見るに、このような規模の地下階層が作れるとは思えん。そもそも掘削一つとっても、高度な技術が必要になる』
「でも現実に存在してんじゃん?」
『ああ。この星独自のエネルギー……魔力がなんらかの形で独自の発展を遂げている可能性もあるが。……ルシアから聞いたオーパーツの話は覚えているな?』
「え? あ、ああ……」
大昔の遺跡から稀に発見される不思議道具だな。現在の魔道具では再現不可能な機能を持っているらしい。
『この星には昔、今より高度でかつ別軸の文明が発達していたのだろう。文明のリセットは、他の惑星でもしばしば見られる現象だ』
一度栄えた文明がなんらかの災害でリセットされ、また一から文明を築きなおす。たしかにそうした惑星は存在している。
「ここもそうだってのか……?」
『その可能性は高いだろう。おそらくオーパーツやこの地下層を作ったのは、そうした高度文明期に存在していた者たちだ』
「そういや2000年前に魔人王がいたとかいうし。そのときにリセットされたのか……?」
『いや、もっと昔だろう。いくつか根拠となる理由はあるが……』
リリアベルの言葉の途中でいよいよ出口が見えてきた。俺はゆっくりと足を進め、出口から顔を出す。
「へ……」
そっと様子を見るつもりだったのに、俺は思わず全身を進ませてしまう。そして地下四階に足を踏み入れたのだった。
「うぉ……!? なんだあれ!?」
「すっごーい! 巨人が鎧を着てる~!」
目の前の光景を見て、この星に来て以来になる最大の衝撃を受けていた。
甲冑を着こんだどでかい巨人が、これまた超サイズの椅子に座り込んでいるのだ。しかも巨人サイズの剣まで刺さっている。
巨人はその剣の柄に両手を置いており、堂々とした佇まいだった。
(俺の機動鎧、エルベイジュよりもでけぇ……!)
ざっと3倍くらいはでかいだろうか。たまに帝国でもロマンを追及する科学者がでかい機動鎧を作成することはあるが、なんとなくそれと雰囲気が似ている気がする。
だがロボというよりは、甲冑を着こんだ騎士という見た目だ。
あまりメカメカしく見えないので、初めは巨人が甲冑を着こんでいるものだと誤解してしまった。しかしどう見ても甲冑の中身はスカスカじゃない。
それに暗めの赤と黒でカラーリングされている点といい、威圧感も強かった。
『正面だ!』
「っ!?」
リリアベルの警告に意識を前に集中させる。するとキレイなお姉さんが曲刀を振ってきていた。
「うぉ!?」
身をかがめてかわすが、お姉さんは流れるような動作で曲刀を振るってくる。
かなりはやい……というか! 普通に強い!?
「っぶねぇ!」
俺は本気のハルトと直接戦ったことはないが、お姉さんはアハトと戦ったハルトとほぼ同水準の動きを見せていた。
うまく腰や腕を狙ってきており、なかなか剣を抜かせてもらえない。
ったく……! 俺はアハトとちがって、剣を片手で止めることなんてできねぇっての!
「いきなりなんだ……よ!」
横に振るわれる曲刀にタイミングを合わせ、俺は下から蹴り上げる。
「な……!?」
予想外の力で蹴り上げられ、しかしそれでも曲刀を手放さなかったことで、お姉さんは腕を上げる姿勢となった。
その隙に剣を抜き、ためらいなく斬りかかる。
「っ!!」
しかしここでお姉さんは地を滑るような動きで後方へと飛んだ。
やっぱりはやいな……! 総合力だとハルトの上をいっているかもしれない……!
距離が空いたことで、あらためてお姉さんに視線を向ける。
褐色の肌に灰色の髪、そして踊り子のような衣服。腕や腰にひらひらした布がついており、それがますます見た目の踊り子感を強くしている。
上着はへそを出しているし、胸もまぁまぁあるな。うーん、セクシー……。
(だが本当に踊り子ってことはないよな……。どう見ても殺す気満々だったし)
殺意の高いお姉さんに謎の巨大甲冑。これまでのことも加えて、情報があまりに多すぎる……!
「あなた……なにもの? 上にはノグもいたはず……」
お姉さんは再び曲刀を構える。さて……とりあえずこの質問には、なんかかっこいい感じに答えたいところだけど……。
「その男はもうやっつけたわ! ハイスという男もね! あなたはもう袋のネズミよっ!」
「………………」
リュインにセリフを取られてしまった。というか2人ともやっつけたのは俺だっての!
「ノグと……ハイスを……!?」
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