106 / 114
番外編:拗らせ天才魔術師の、華麗なるやり直し
VS 隼斗
しおりを挟む「ヒュー。こ、これ、どーぞ」
「…………え?」
二人で生活している部屋に戻ってきた僕は、手にした紺色のハート型の箱を隼斗の前に、差し出した。この異世界に来てから、もう半年もの時間が過ぎていた。季節は、冬で、日本ではもう二月なのだ。
この世界では、王都をベースに羽里が活動しているおかげで、僕たちも、比較的のんびりと過ごすことができている。はじめこそ、心配で過保護になっていたけれども、羽里は、異世界生活を信じられないほど満喫している。
本当は、彼女が一人で召喚されるはずだったんだろうが、それでもやっぱり、僕も、巻き込まれることができてよかった。それに、隼斗がいてくれて、とても心強いのだ。
僕が渡すのも、微妙かなとは思ったけど、感謝の気持ちということで、――バレンタインの、チョコレート。
隼斗は、何かに思い至ったのか、右手を額に当てながら、ちょっと待って、と言うように、左手の平を僕の前に出した。
別に、ただのチョコレートだし、そんなにすごい想いがこもっているというわけではなくて、本当に、感謝の気持ちだから……と思ったのだけど、何かまずかっただろうか。僕は、その沈黙に、だんだん落ち着かなくなって、以前から思っていたことを、尋ねた。
「あ、あの……ヒュー、あのさ、隼斗って、呼ぶのは変なの?」
前に一度呼んで以来、実は、二人の時に『隼斗』と呼んだことはない。もちろん、羽里の前や、他の人の前では、『隼斗』と呼んでいるのだが、ヒューに「また今度でいい」と言われたから、なんとなく、呼べずにいる。ちらっと隼人の様子を伺ってみて、僕は、動きを止めた。
右手の隙間から、ぶ、わ、わ、と、隼斗の顔がどんどん、赤くなっていくのを見て、え! と、僕は、目をぱちぱちと瞬かせた。
顔を隠したまま、隼斗が言った。
「ち、違うんだ。他の世界の俺とは……」
「どういうこと?」
珍しく、緊張したように、少し吃る姿に、僕はまだ驚いていた。
隼斗が言うには、大体、どこの世界でも、ヒューの記憶は六・七歳で戻っていたらしい。だから、それまでの記憶は、ヒューではなく、純粋にその世界の記憶だけで生活をしていたということだ。
隼斗は、まっ赤になったまま、はあ、と一つ大きく呼吸をしてから、ゆっくりと、続けた。
「お前のこと、記憶が戻る前から……好きだったんだ」
「えっ」
「何がはじめっていうのは、わからない。たまに、公園で見かけるぐらいで、ちゃんと話したのは小学校に入学してからだと、思う。だけど……ただ、なんかお前の笑顔を見ると、ほっとしてて。妹のこと、守ってるのも、目が合うとにこって笑ってくれるのとか、全部、ずっと、……見てた」
僕は、どきッと、胸に何か強い衝撃を受け、思わず背筋が伸びた。
そして、ど、どっどっ、どっどっどっ、と、自分の心臓の鼓動が、少しずつ、早くなる。
今まで、何十回も抱き合ってるのに、胸が、きゅうっとして、まるではじめて、告白されるみたいに、心臓が、ばくばくと音を立てた。
再会してからのヒューは、いつだって涼しい顔して、余裕で、まさか、こんな風に思われてただなんて、考えもしなかった。
隼斗は続けた。
「ずっと、好きだったんだ。お前が、俺に出会う前から、ずっと」
その言葉に、――思わず、じわっと視界が滲む。
眉が、下がってしまう。鼻の奥がつんと痛んだ。堪えるように、むっ、と唇を噛みしめる。
僕の目には、隼斗だけが、映っていた。
「好きだよ……乃有」
「は、隼斗」
「……正直、未だに、名前呼ばれるだけで、震える」
恥ずかしそうに、困ったように笑う隼斗に、きゅんと心臓が跳ねた。
地球に、僕の世界に来ても、意識がなくても、僕のことを好きでいてくれたんだと、奇跡みたいな気持ちが胸の中で、大きく膨らむ。
ヒューが過ごしてきた時間に比べれば、地球で過ごした時間は、短いことかもしれない。それでも、その時間は全部。僕と出会ってからの時間は全部、――僕のことを、想ってくれていたんだと、涙が溢れた。
そっと、隼人の震える手が、頬に当たった。
「キス……しても、いい?」
控えめに尋ねられたその言葉に、そうか、これはヒューじゃなくて、隼斗なんだと思って、また、ぽろっと涙が一つこぼれた。
キスなんて、今まで、何百回も、してきた。
そんなこと聞かれて、また、こんな気持ちになるなんて。ぶわっと切ない気持ちが広がっていく。
まだ二月なのに、僕の心の中では、桜の花びらが舞い上がるみたいに、びゅっと春を呼ぶ風が吹き抜ける。
僕の顔は、まっ赤に、なってしまっているだろう。まるで、はじめてキスするみたいに、恥ずかしい気持ちでいっぱいで、小さく、本当に小さく、こくっと頷いた。
優しく手を取られ、ハッと息を飲む。目の前に、じっと僕のことを見つめる隼斗がいて、僕は、思わず、ぎゅっと目を閉じた。そのまま、ふにっと唇に柔らかい感触があって、しばらく重なったままだったそれが、濡れた音を立てて、離れた。隼斗の息遣いが、まだ、唇に感じられて、そっと震える瞼を上げた。
ヒューとは違う、色素の薄い瞳。その視線を見ただけで、愛おしいと、そう思ってくれていることが、伝わる。思わず、はあっと、息を飲む。こんなの……こんなの、――
何度だって、――何度だって、恋に落ちてしまう。
また、ぶわっと切ない気持ちがこみ上げる。まるで、ヒューと出会ってから、今までの、全部の気持ちが舞い上がるみたいに、僕の口から、言葉が溢れた。
「僕も……僕も、好き」
言葉と一緒に、また涙が溢れてしまう。隼斗は、僕の目元をそっと指先で拭いながら、優しく、優しく笑って、言った。
「………………うん、ありがとう。すごく、……嬉しい」
その嬉しそうな笑顔に、僕は、思わず隼斗に抱きついた。ただの感謝用だったけど、チョコレートを用意して、よかった。こんなに喜んでくれるだなんて、予想だにしなかったけど、すごく、すごく幸せで、ぎゅうっと隼斗を抱きしめた。
(好き……もう、なんでも好き……ヒュー大好き)
だけど、――。
「え、待って。どういうこと」
「やり直してよ。それ、バレンタインのチョコだろ? 俺、それ、乃有にもらうのはじめてだから」
「え、そうだけど……え?」
「それ、地球の日本の風習だから。異世界でもらうのとか、嫌だから。告白バージョンで、やり直し、ぜひ」
言っている意味が、全くわからない。
そして、もっとわからないことが、もう一つある。
今の今まで、僕たちは、一緒に生活している部屋にいたのだ。だが、どうしたことだろう。僕の目の前には、明らかに、いつも通っている高校の教室の景色が広がっている。そして、気がつけば、僕も隼斗も、制服を着ている。呆然としたまま、目で隼斗に訴えると「幻覚みたいなもんだから」と言われて、それで大賢者様からの説明は終わった。
そして今、――告白バージョンでやり直せと、そう言われている。これはまさか、――
「え……まさか、これも、、」
「だからさっきからそう言ってるだろ。『やり直し』」
動揺して、おろおろしていたけど、目で制され、渋々、僕は『告白バージョン』のやり直しを敢行することになった。
はー、とため息をつき、そして、口にした。
「は、隼斗……あの、これ」
「え?」
「…………じ、実は、ずっと、す、好きでした」
若干、――「え?」ってなんだよ、と冷静な自分のツッコミが入ったが、でも、ふわあっと、こぼれるように、すごく、すごく嬉しそうに笑う隼斗の顔を見たら、なんだか、幸せな気持ちが広がってしまって、きゅんと胸が跳ねてしまって、結局、――結局そうなのだ。
僕は、ずっと、好きだったので、これはこれで、正解な気になってしまった。
「嬉しい。乃有。ありがとう……嬉しい」
手を取られ、ぎゅっと抱きしめられる。強い風が吹き込み、カーテンがぶわっと舞った。本当に、学校で、隼斗に告白したみたいで、僕の心臓は、どっどっ、どっどっ、と、ものすごい速さで脈打っていた。
チョコレートがとろけたみたいな瞳をした隼斗が、僕のことを抱きしめたまま、椅子に座る。本当にどうなっているのか、学校の机と椅子、そのままなのだ。自然と、隼斗の膝の上に跨る体勢になってしまって、教室でいちゃついてるみたいで、恥ずかしい。隼斗が「口に入れてよ」と言うので、どきどきしながら、チョコを一つ、口の中に入れようとして、そのまま、指ごと絡めとられた。
「え、わあっ、ちょ、ちょっと、ヒュ…は、隼斗っ」
「何?」
「何って! 指、だめっ」
「……なんで? 俺の、だろ」
甘い茶色の瞳に、上目遣いで見られて、つい、ドキッと心臓が跳ねる。
そうだけど、そうなんだけど、と、思いながら、慌てて、だけど、手を押さえられ、そのまま、ゆっくり、ゆっくりと、ねぶられる。ぴくっと腰が動いてしまい、そのまま、隼斗の膝に伝わってしまう。少しだけ、フィリの膝の上でやらしいことをした記憶が浮かんでしまい、ふるりと震えた。
物欲しい顔を、してしまっているかもしれない。こんな、教室の幻覚の中で、ずっと抱いていた幼馴染への想いを、伝えられたみたいで。どき、どき、と、胸が高鳴る。れっと僕の人差し指を、内側から舐め上げた隼斗が、悪戯っぽく言った。
「おいひ」
つい、「ふぁっ」と、やらしい声を上げてしまった。案の定、にやっと意地悪そうに笑った隼斗の手が、制服のシャツの中から入り込み、反対側の手で、首を引き寄せられる。
ふにっと唇が当たる。柔らかい、隼斗の、ヒューの薄い唇が、僕の唇を撫でる。それだけで、きゅうっと胸が締め付けられる。きゅっと握られた指先に、隼斗の指が、絡まった。その、あたたかな熱を感じるだけで、隼斗の気持ちが、伝わってくるようで、胸がいっぱいになった。
「俺の、はじめても、もらって……」
「は、はやとっ」
その熱っぽい視線に。ずっと、ずっと好きでいてくれた幼馴染の視線に、じわっと体の芯が、熱くなる。
正確には、隼斗の姿のヒューとは、何度も抱き合っているのだ。でも、多分、ヒューが言ってるのは、隼斗っていう自覚を持って、僕のことを抱いたことがないっていう、そういうことだと思う。
←↑→↓←↑→
「ああっ はやとっ だめ、ふ、ぅ」
「好き。好きだよ……乃有」
教室の机の上で、大きく股を開いたまま、僕の中に、熱い、隼斗の想いの丈を突っ込まれていた。
何回も抱き合っているのに、だけど、こんな、本当にはじめて、ずっと好きだった幼馴染と繋がったみたいな愛の言葉に、僕の目には涙が滲む。
どういうことだろう。
全部、全部、ヒューなのに。全部、僕の大好きな人なのに、それでもやっぱり、隼斗に抱かれながら、とろとろになってしまう自分の体が、恥ずかしくて、まっ赤になってしまう。僕の体は、ヒューに、エミル様に、ユノさんに、すっかり慣らされてしまっていて、なんだか、隼斗はずっと想っていてくれたのに、自分だけだが、はしたない体になってしまっているようで、変な感じがするのだ。
それに、偶然が重なったとは言え、こんなに好きでいてくれた幼馴染のことを、忘れてしまっていた、やるせなさが、募る。きゅうっと下がってしまった僕の眉を見て、隼斗がふっと笑って言う。
「いいんだ。好き、好きだよ。……想いをさ、伝えることができただけで……」
「ああんっ は、はやとっ」
その、健気な隼斗の様子に、また、じわあっと涙で視界が滲んだ。
別に、浮気をしているわけではないのに、なんだか、隼斗を裏切っているみたいな、変な感覚なのだ。隼斗が純粋であればあるほど、自分の体の淫らさが際立つようで。中を、やらしい腰使いで、優しく擦られ、僕はどうしたって、声を上げてしまう。
「ああぅっ ひあっ あっ」
「……かわいい」
ひくひくと震える僕の腹を、ゆっくり撫でながら、にこっと、慈しむように微笑まれた。やってることは、卑猥で、明らかに、僕の体を知り尽くしているヒューなのに、それでも、隼斗から伝えられる言葉が、――言葉が、――!
「ほんと……しあわせ」
そして、強く、突き上げられる。敏感な体に、硬いペニスを打ちつけられて、気持ちよくて、気持ちよくて、腰が動いてしまう。幻覚とは言え、教室でこんなにえっちなことをしてるなんて、だめなのにって思う理性が、たまに浮上しては、舐めるように中を擦られて、体全部を揺さぶられて、すぐに消えていく。
「は、隼斗っ ああんっ 気持ちいい。好き 好き」
「うん……俺も、好き。好きだよ、乃有」
「や、だあっ イッちゃう」
優しい声色に、涙が溢れる。びくんっびくんっと、体を大きく震わせ、白濁を吐き出した。
気持ちよくて、中にある隼斗のペニスを締め上げてしまい、隼斗が「はあ」と、小さく熱い息を漏らした。その小さな声に、きゅんとして、隼斗に自ら口付ける。好きで、好きで、ヒューと違って、隼斗は、頬が赤くなってて、なんだかかわいくて、胸が熱くなる。絡まった唾液が、お互いの唇から滴った。好きで、大好きで、愛しくて、きゅんとする。
だけど、――。
「教室ですんの、よかったんだろ。こんなとこで股開いて、ほんと、淫乱だな」
「…………い、今のがヒューだっていうのは、なんかわかるよ!」
「全部、俺だからいいんだよ。ほら、もっとやらしい声あげて、聞かせて。誰かに聞こえちゃうかもな」
「ちょ、ちょっと!」
誰かって誰だよって思うけど、ゆるゆると、焦らすように、腰を進められて、背筋が震えた。こんなはじめてがあってたまるか! と、エミル様にも、ユノさんにも思ったことを、隼斗にも思う。隼斗が、「チョコ」と、悪戯な顔で言われたと思ったら、れっと舌を前に出して、「ちょーらい」と隼斗が言った。その、やらしく差し出された舌が、何を求めてるのかがわかって、それでいて、僕のはしたない体は、きゅうっと隼斗のペニスを締め付けた。机の上に押し倒されたまま、口にチョコを一つ含み、そのまま、差し出された舌に口づける。
「んんんっっ」
深く、深く、深くまで、入ってきた隼斗のペニスが、隙間なく、ぴったりと僕のお腹の中にはまり、そして、そのまま、奥の奥まで、侵される。
じんと体の芯が震える。離したくないみたいに、ぎゅうっと内壁が縮む。こんなに深くまで、繋がってるのが、愛おしい人の体の一部だと思うだけで、じわっと涙が溢れた。
口の中に広がるチョコレートが溶けるのと一緒に、僕の頭の中も、体の奥も、とろとろに、溶けてしまったみたい。お互いの熱で、とろとろに溶けたチョコレートを、隼斗が、こくんと、飲み込んだ。「甘い」って言われて、それだけで、胸がきゅうっとなった。
「んんっ」
「乃有、甘い。全部食べたい」
そう言いながら、体の奥の、奥まで、隼斗の熱が内壁を押し広げた。もう、幾度も体を重ねて、ヒューの形に、なっちゃってる気がする。中を全部で擦られて、腰が淫らに揺れる。じゅぷっじゅぷっと濡れた音がして、肌が、羞恥に染まる。
それでも、気持ちいのが止まらなくて、目の前がチカチカした。隼斗の与えてくれる糖度と蜜度の方が、チョコレートよりもずっと、ずっと、甘いと思った。
「あんっ だめ、そんなにしたら……見つかっちゃう ああっ」
「あははっ、お前もだんだん俺に汚染されてない? そんなに腰振ってるの、見られたらどうするの?」
「やだあっ はやとぉ、らめ、気持ちいいの、止まらないっ」
「机、こんなに穢して。悪い子だね」
自分のペニスから、だらだらと液体が垂れてるのは、わかってた。
でもそれを指摘されて、恥ずかしくて、なぜかきゅうっと隼斗のことを締め付けてしまった。にやにやしてる隼斗を見て、じわっと視界が滲む。もう、目の前にいるのが、隼斗じゃなくてヒューなんだってことくらい、僕にはわかっていた。
負け惜しみに、文句を言う。
「ねえ、僕のかわいい隼斗はどこ行っちゃったのっ」
「なんかそれ、妬けるな。隼斗の方が好きなの? 浮気すんなよ」
「あっやっ あああんっ」
ぐりぐりと、気持ちいいところをねぶられて、頭の中までとろっとろで、もう体が溶けちゃう、と思う。
でも、でも、と、伝えたい気持ちが、溢れる。快楽に溺れてしまいそうで、必死で、隼斗の首に手を回し、潤んだ瞳で伝えた。
「ぜ、全部、好き……ヒューだから。ヒューなら、なんでも、いっ」
隼斗の目が、ぱちっと見開かれて、そしてピタッと動きが止まった。もっと動いて欲しくて、僕の腰は、ぴくぴくと震えた。でもそれから、しばらくして、隼斗が、脱力したように、僕の肩口に頭ごと倒れ込んで来た。頭に疑問符を浮かべていると、そのまま、すごい勢いで貫かれた。
「ひあああっ」
「あーかわいい。かわいい。かわいい」
「やっ ひゅうっ だめ、らめぇっ」
体全部を揺さぶられて、必死で隼斗に抱きついた。足の指まで、ぴりぴりと快感が走り、自然とつま先がぎゅうっと丸まる。身体の中に感じる、愛おしい存在を締めつければ、さらに擦られ、頭の芯まで痺れる。
恍惚としてしまって、わかるのは、ただ、目の前にいる、この信じられない快楽を与えてくれる人が、自分の愛おしい人だってことだけ。好きで、好きで、仕方がなくて、大好きって思ってたら、降ってきた甘い言葉に、さらに、その身を溶かされた。
「好き。好きだよ、乃有」
「あっあっ……僕も、僕も好き、ひゅうっ 好きっ も、だめっ 出ちゃう」
「ん。……俺も、出すね」
「あっ あ、ああああっ」
その声に、頷く間も無く、最奥まで貫かれる。浅いところから奥までを、数回、隼斗の腰が撫でられ、背中は弓のようにしなった。そして、僕のペニスから、悦びが溢れた。
一緒に、じわあっと僕の中に広がる、ぬるっとした感触。それにすら感じてしまい、ひくっひくっと体が震えた。
羞恥と嬉しさと、過ぎた快感と、色んな感情で、わけが、わからなくなって、僕は、なぜか泣き出してしまった。ぐずっと鼻を啜りながら、ぎゅっと隼斗に抱きついた。
「……かわいい。もう、離さないから」
聞こえてきた、柔らかい隼斗の言葉に、僕は、こくっと小さく、頷いた。
甘いチョコレートの匂いがする中で、僕は、ことりと、眠りについたのだった。
――そんな、二月の甘い日。
――――――――――――
読んで頂き、ありがとうございました!
バレンタインは隼斗かなと思って書きました。次回はミュエリー。
ちょっと毛色が違うのですが、吸血鬼の話を更新しました!
もしよかったら、作者ページから、ぜひぜひ。
すてきな1日をお過ごし下さい♡
35
お気に入りに追加
994
あなたにおすすめの小説
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。
山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。
その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。
2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる