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番外編:拗らせ天才魔術師の、華麗なるやり直し

VS 隼斗

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「ヒュー。こ、これ、どーぞ」
「…………え?」

 二人で生活している部屋に戻ってきた僕は、手にした紺色のハート型の箱を隼斗の前に、差し出した。この異世界に来てから、もう半年もの時間が過ぎていた。季節は、冬で、日本ではもう二月なのだ。
 この世界では、王都をベースに羽里が活動しているおかげで、僕たちも、比較的のんびりと過ごすことができている。はじめこそ、心配で過保護になっていたけれども、羽里は、異世界生活を信じられないほど満喫している。
 本当は、彼女が一人で召喚されるはずだったんだろうが、それでもやっぱり、僕も、巻き込まれることができてよかった。それに、隼斗がいてくれて、とても心強いのだ。
 僕が渡すのも、微妙かなとは思ったけど、感謝の気持ちということで、――バレンタインの、チョコレート。
 隼斗は、何かに思い至ったのか、右手を額に当てながら、ちょっと待って、と言うように、左手の平を僕の前に出した。
 別に、ただのチョコレートだし、そんなにすごい想いがこもっているというわけではなくて、本当に、感謝の気持ちだから……と思ったのだけど、何かまずかっただろうか。僕は、その沈黙に、だんだん落ち着かなくなって、以前から思っていたことを、尋ねた。 

「あ、あの……ヒュー、あのさ、隼斗って、呼ぶのは変なの?」

 前に一度呼んで以来、実は、二人の時に『隼斗』と呼んだことはない。もちろん、羽里の前や、他の人の前では、『隼斗』と呼んでいるのだが、ヒューに「また今度でいい」と言われたから、なんとなく、呼べずにいる。ちらっと隼人の様子を伺ってみて、僕は、動きを止めた。
 右手の隙間から、ぶ、わ、わ、と、隼斗の顔がどんどん、赤くなっていくのを見て、え! と、僕は、目をぱちぱちと瞬かせた。
 顔を隠したまま、隼斗が言った。

「ち、違うんだ。他の世界の俺とは……」
「どういうこと?」

 珍しく、緊張したように、少し吃る姿に、僕はまだ驚いていた。
 隼斗が言うには、大体、どこの世界でも、ヒューの記憶は六・七歳で戻っていたらしい。だから、それまでの記憶は、ヒューではなく、純粋にその世界の記憶だけで生活をしていたということだ。
 隼斗は、まっ赤になったまま、はあ、と一つ大きく呼吸をしてから、ゆっくりと、続けた。

「お前のこと、記憶が戻る前から……好きだったんだ」
「えっ」
「何がはじめっていうのは、わからない。たまに、公園で見かけるぐらいで、ちゃんと話したのは小学校に入学してからだと、思う。だけど……ただ、なんかお前の笑顔を見ると、ほっとしてて。妹のこと、守ってるのも、目が合うとにこって笑ってくれるのとか、全部、ずっと、……見てた」

 僕は、どきッと、胸に何か強い衝撃を受け、思わず背筋が伸びた。
 そして、ど、どっどっ、どっどっどっ、と、自分の心臓の鼓動が、少しずつ、早くなる。
 今まで、何十回も抱き合ってるのに、胸が、きゅうっとして、まるではじめて、告白されるみたいに、心臓が、ばくばくと音を立てた。
 再会してからのヒューは、いつだって涼しい顔して、余裕で、まさか、こんな風に思われてただなんて、考えもしなかった。
 隼斗は続けた。

「ずっと、好きだったんだ。お前が、俺に出会う前から、ずっと」

 その言葉に、――思わず、じわっと視界が滲む。
 眉が、下がってしまう。鼻の奥がつんと痛んだ。堪えるように、むっ、と唇を噛みしめる。
 僕の目には、隼斗だけが、映っていた。

「好きだよ……乃有」
「は、隼斗」
「……正直、未だに、名前呼ばれるだけで、震える」

 恥ずかしそうに、困ったように笑う隼斗に、きゅんと心臓が跳ねた。
 地球に、僕の世界に来ても、意識がなくても、僕のことを好きでいてくれたんだと、奇跡みたいな気持ちが胸の中で、大きく膨らむ。
 ヒューが過ごしてきた時間に比べれば、地球で過ごした時間は、短いことかもしれない。それでも、その時間は全部。僕と出会ってからの時間は全部、――僕のことを、想ってくれていたんだと、涙が溢れた。
 そっと、隼人の震える手が、頬に当たった。

「キス……しても、いい?」

 控えめに尋ねられたその言葉に、そうか、これはヒューじゃなくて、隼斗なんだと思って、また、ぽろっと涙が一つこぼれた。
 キスなんて、今まで、何百回も、してきた。
 そんなこと聞かれて、また、こんな気持ちになるなんて。ぶわっと切ない気持ちが広がっていく。
 まだ二月なのに、僕の心の中では、桜の花びらが舞い上がるみたいに、びゅっと春を呼ぶ風が吹き抜ける。
 僕の顔は、まっ赤に、なってしまっているだろう。まるで、はじめてキスするみたいに、恥ずかしい気持ちでいっぱいで、小さく、本当に小さく、こくっと頷いた。
 優しく手を取られ、ハッと息を飲む。目の前に、じっと僕のことを見つめる隼斗がいて、僕は、思わず、ぎゅっと目を閉じた。そのまま、ふにっと唇に柔らかい感触があって、しばらく重なったままだったそれが、濡れた音を立てて、離れた。隼斗の息遣いが、まだ、唇に感じられて、そっと震える瞼を上げた。

 ヒューとは違う、色素の薄い瞳。その視線を見ただけで、愛おしいと、そう思ってくれていることが、伝わる。思わず、はあっと、息を飲む。こんなの……こんなの、――


 何度だって、――何度だって、恋に落ちてしまう。


 また、ぶわっと切ない気持ちがこみ上げる。まるで、ヒューと出会ってから、今までの、全部の気持ちが舞い上がるみたいに、僕の口から、言葉が溢れた。

「僕も……僕も、好き」

 言葉と一緒に、また涙が溢れてしまう。隼斗は、僕の目元をそっと指先で拭いながら、優しく、優しく笑って、言った。

「………………うん、ありがとう。すごく、……嬉しい」

 その嬉しそうな笑顔に、僕は、思わず隼斗に抱きついた。ただの感謝用だったけど、チョコレートを用意して、よかった。こんなに喜んでくれるだなんて、予想だにしなかったけど、すごく、すごく幸せで、ぎゅうっと隼斗を抱きしめた。

(好き……もう、なんでも好き……ヒュー大好き)

 だけど、――。


「え、待って。どういうこと」
「やり直してよ。それ、バレンタインのチョコだろ? 俺、それ、乃有にもらうのはじめてだから」
「え、そうだけど……え?」
「それ、地球の日本の風習だから。異世界でもらうのとか、嫌だから。告白バージョンで、やり直し、ぜひ」

 言っている意味が、全くわからない。
 そして、もっとわからないことが、もう一つある。
 今の今まで、僕たちは、一緒に生活している部屋にいたのだ。だが、どうしたことだろう。僕の目の前には、明らかに、いつも通っている高校の教室の景色が広がっている。そして、気がつけば、僕も隼斗も、制服を着ている。呆然としたまま、目で隼斗に訴えると「幻覚みたいなもんだから」と言われて、それで大賢者様からの説明は終わった。
 そして今、――告白バージョンでやり直せと、そう言われている。これはまさか、――

「え……まさか、これも、、」
「だからさっきからそう言ってるだろ。『やり直し』」

 動揺して、おろおろしていたけど、目で制され、渋々、僕は『告白バージョン』のやり直しを敢行することになった。
 はー、とため息をつき、そして、口にした。

「は、隼斗……あの、これ」
「え?」
「…………じ、実は、ずっと、す、好きでした」

 若干、――「え?」ってなんだよ、と冷静な自分のツッコミが入ったが、でも、ふわあっと、こぼれるように、すごく、すごく嬉しそうに笑う隼斗の顔を見たら、なんだか、幸せな気持ちが広がってしまって、きゅんと胸が跳ねてしまって、結局、――結局そうなのだ。
 僕は、ずっと、好きだったので、これはこれで、正解な気になってしまった。

「嬉しい。乃有。ありがとう……嬉しい」

 手を取られ、ぎゅっと抱きしめられる。強い風が吹き込み、カーテンがぶわっと舞った。本当に、学校で、隼斗に告白したみたいで、僕の心臓は、どっどっ、どっどっ、と、ものすごい速さで脈打っていた。
 チョコレートがとろけたみたいな瞳をした隼斗が、僕のことを抱きしめたまま、椅子に座る。本当にどうなっているのか、学校の机と椅子、そのままなのだ。自然と、隼斗の膝の上に跨る体勢になってしまって、教室でいちゃついてるみたいで、恥ずかしい。隼斗が「口に入れてよ」と言うので、どきどきしながら、チョコを一つ、口の中に入れようとして、そのまま、指ごと絡めとられた。

「え、わあっ、ちょ、ちょっと、ヒュ…は、隼斗っ」
「何?」
「何って! 指、だめっ」
「……なんで? 俺の、だろ」

 甘い茶色の瞳に、上目遣いで見られて、つい、ドキッと心臓が跳ねる。
 そうだけど、そうなんだけど、と、思いながら、慌てて、だけど、手を押さえられ、そのまま、ゆっくり、ゆっくりと、ねぶられる。ぴくっと腰が動いてしまい、そのまま、隼斗の膝に伝わってしまう。少しだけ、フィリの膝の上でやらしいことをした記憶が浮かんでしまい、ふるりと震えた。
 物欲しい顔を、してしまっているかもしれない。こんな、教室の幻覚の中で、ずっと抱いていた幼馴染への想いを、伝えられたみたいで。どき、どき、と、胸が高鳴る。れっと僕の人差し指を、内側から舐め上げた隼斗が、悪戯っぽく言った。

「おいひ」

 つい、「ふぁっ」と、やらしい声を上げてしまった。案の定、にやっと意地悪そうに笑った隼斗の手が、制服のシャツの中から入り込み、反対側の手で、首を引き寄せられる。
 ふにっと唇が当たる。柔らかい、隼斗の、ヒューの薄い唇が、僕の唇を撫でる。それだけで、きゅうっと胸が締め付けられる。きゅっと握られた指先に、隼斗の指が、絡まった。その、あたたかな熱を感じるだけで、隼斗の気持ちが、伝わってくるようで、胸がいっぱいになった。

「俺の、はじめても、もらって……」
「は、はやとっ」

 その熱っぽい視線に。ずっと、ずっと好きでいてくれた幼馴染の視線に、じわっと体の芯が、熱くなる。
 正確には、隼斗の姿のヒューとは、何度も抱き合っているのだ。でも、多分、ヒューが言ってるのは、隼斗っていう自覚を持って、僕のことを抱いたことがないっていう、そういうことだと思う。


 ←↑→↓←↑→


「ああっ はやとっ だめ、ふ、ぅ」
「好き。好きだよ……乃有」

 教室の机の上で、大きく股を開いたまま、僕の中に、熱い、隼斗の想いの丈を突っ込まれていた。
 何回も抱き合っているのに、だけど、こんな、本当にはじめて、ずっと好きだった幼馴染と繋がったみたいな愛の言葉に、僕の目には涙が滲む。
 どういうことだろう。
 全部、全部、ヒューなのに。全部、僕の大好きな人なのに、それでもやっぱり、隼斗に抱かれながら、とろとろになってしまう自分の体が、恥ずかしくて、まっ赤になってしまう。僕の体は、ヒューに、エミル様に、ユノさんに、すっかり慣らされてしまっていて、なんだか、隼斗はずっと想っていてくれたのに、自分だけだが、はしたない体になってしまっているようで、変な感じがするのだ。
 それに、偶然が重なったとは言え、こんなに好きでいてくれた幼馴染のことを、忘れてしまっていた、やるせなさが、募る。きゅうっと下がってしまった僕の眉を見て、隼斗がふっと笑って言う。

「いいんだ。好き、好きだよ。……想いをさ、伝えることができただけで……」
「ああんっ は、はやとっ」

 その、健気な隼斗の様子に、また、じわあっと涙で視界が滲んだ。
 別に、浮気をしているわけではないのに、なんだか、隼斗を裏切っているみたいな、変な感覚なのだ。隼斗が純粋であればあるほど、自分の体の淫らさが際立つようで。中を、やらしい腰使いで、優しく擦られ、僕はどうしたって、声を上げてしまう。

「ああぅっ ひあっ あっ」
「……かわいい」

 ひくひくと震える僕の腹を、ゆっくり撫でながら、にこっと、慈しむように微笑まれた。やってることは、卑猥で、明らかに、僕の体を知り尽くしているヒューなのに、それでも、隼斗から伝えられる言葉が、――言葉が、――!

「ほんと……しあわせ」

 そして、強く、突き上げられる。敏感な体に、硬いペニスを打ちつけられて、気持ちよくて、気持ちよくて、腰が動いてしまう。幻覚とは言え、教室でこんなにえっちなことをしてるなんて、だめなのにって思う理性が、たまに浮上しては、舐めるように中を擦られて、体全部を揺さぶられて、すぐに消えていく。

「は、隼斗っ ああんっ 気持ちいい。好き 好き」
「うん……俺も、好き。好きだよ、乃有」
「や、だあっ イッちゃう」

 優しい声色に、涙が溢れる。びくんっびくんっと、体を大きく震わせ、白濁を吐き出した。
 気持ちよくて、中にある隼斗のペニスを締め上げてしまい、隼斗が「はあ」と、小さく熱い息を漏らした。その小さな声に、きゅんとして、隼斗に自ら口付ける。好きで、好きで、ヒューと違って、隼斗は、頬が赤くなってて、なんだかかわいくて、胸が熱くなる。絡まった唾液が、お互いの唇から滴った。好きで、大好きで、愛しくて、きゅんとする。
 だけど、――。

「教室ですんの、よかったんだろ。こんなとこで股開いて、ほんと、淫乱だな」
「…………い、今のがヒューだっていうのは、なんかわかるよ!」
「全部、俺だからいいんだよ。ほら、もっとやらしい声あげて、聞かせて。誰かに聞こえちゃうかもな」
「ちょ、ちょっと!」

 誰かって誰だよって思うけど、ゆるゆると、焦らすように、腰を進められて、背筋が震えた。こんなはじめてがあってたまるか! と、エミル様にも、ユノさんにも思ったことを、隼斗にも思う。隼斗が、「チョコ」と、悪戯な顔で言われたと思ったら、れっと舌を前に出して、「ちょーらい」と隼斗が言った。その、やらしく差し出された舌が、何を求めてるのかがわかって、それでいて、僕のはしたない体は、きゅうっと隼斗のペニスを締め付けた。机の上に押し倒されたまま、口にチョコを一つ含み、そのまま、差し出された舌に口づける。

「んんんっっ」

 深く、深く、深くまで、入ってきた隼斗のペニスが、隙間なく、ぴったりと僕のお腹の中にはまり、そして、そのまま、奥の奥まで、侵される。
 じんと体の芯が震える。離したくないみたいに、ぎゅうっと内壁が縮む。こんなに深くまで、繋がってるのが、愛おしい人の体の一部だと思うだけで、じわっと涙が溢れた。
 口の中に広がるチョコレートが溶けるのと一緒に、僕の頭の中も、体の奥も、とろとろに、溶けてしまったみたい。お互いの熱で、とろとろに溶けたチョコレートを、隼斗が、こくんと、飲み込んだ。「甘い」って言われて、それだけで、胸がきゅうっとなった。

「んんっ」
「乃有、甘い。全部食べたい」

 そう言いながら、体の奥の、奥まで、隼斗の熱が内壁を押し広げた。もう、幾度も体を重ねて、ヒューの形に、なっちゃってる気がする。中を全部で擦られて、腰が淫らに揺れる。じゅぷっじゅぷっと濡れた音がして、肌が、羞恥に染まる。
 それでも、気持ちいのが止まらなくて、目の前がチカチカした。隼斗の与えてくれる糖度と蜜度の方が、チョコレートよりもずっと、ずっと、甘いと思った。

「あんっ だめ、そんなにしたら……見つかっちゃう ああっ」
「あははっ、お前もだんだん俺に汚染されてない? そんなに腰振ってるの、見られたらどうするの?」
「やだあっ はやとぉ、らめ、気持ちいいの、止まらないっ」
「机、こんなに穢して。悪い子だね」

 自分のペニスから、だらだらと液体が垂れてるのは、わかってた。
 でもそれを指摘されて、恥ずかしくて、なぜかきゅうっと隼斗のことを締め付けてしまった。にやにやしてる隼斗を見て、じわっと視界が滲む。もう、目の前にいるのが、隼斗じゃなくてヒューなんだってことくらい、僕にはわかっていた。
 負け惜しみに、文句を言う。

「ねえ、僕のかわいい隼斗はどこ行っちゃったのっ」
「なんかそれ、妬けるな。隼斗の方が好きなの? 浮気すんなよ」
「あっやっ あああんっ」

 ぐりぐりと、気持ちいいところをねぶられて、頭の中までとろっとろで、もう体が溶けちゃう、と思う。
 でも、でも、と、伝えたい気持ちが、溢れる。快楽に溺れてしまいそうで、必死で、隼斗の首に手を回し、潤んだ瞳で伝えた。

「ぜ、全部、好き……ヒューだから。ヒューなら、なんでも、いっ」

 隼斗の目が、ぱちっと見開かれて、そしてピタッと動きが止まった。もっと動いて欲しくて、僕の腰は、ぴくぴくと震えた。でもそれから、しばらくして、隼斗が、脱力したように、僕の肩口に頭ごと倒れ込んで来た。頭に疑問符を浮かべていると、そのまま、すごい勢いで貫かれた。

「ひあああっ」
「あーかわいい。かわいい。かわいい」
「やっ ひゅうっ だめ、らめぇっ」

 体全部を揺さぶられて、必死で隼斗に抱きついた。足の指まで、ぴりぴりと快感が走り、自然とつま先がぎゅうっと丸まる。身体の中に感じる、愛おしい存在を締めつければ、さらに擦られ、頭の芯まで痺れる。
 恍惚としてしまって、わかるのは、ただ、目の前にいる、この信じられない快楽を与えてくれる人が、自分の愛おしい人だってことだけ。好きで、好きで、仕方がなくて、大好きって思ってたら、降ってきた甘い言葉に、さらに、その身を溶かされた。

「好き。好きだよ、乃有」
「あっあっ……僕も、僕も好き、ひゅうっ 好きっ も、だめっ 出ちゃう」
「ん。……俺も、出すね」
「あっ あ、ああああっ」

 その声に、頷く間も無く、最奥まで貫かれる。浅いところから奥までを、数回、隼斗の腰が撫でられ、背中は弓のようにしなった。そして、僕のペニスから、悦びが溢れた。
 一緒に、じわあっと僕の中に広がる、ぬるっとした感触。それにすら感じてしまい、ひくっひくっと体が震えた。
 羞恥と嬉しさと、過ぎた快感と、色んな感情で、わけが、わからなくなって、僕は、なぜか泣き出してしまった。ぐずっと鼻を啜りながら、ぎゅっと隼斗に抱きついた。

「……かわいい。もう、離さないから」

 聞こえてきた、柔らかい隼斗の言葉に、僕は、こくっと小さく、頷いた。
 甘いチョコレートの匂いがする中で、僕は、ことりと、眠りについたのだった。
 
 ――そんな、二月の甘い日。






――――――――――――
読んで頂き、ありがとうございました!
バレンタインは隼斗かなと思って書きました。次回はミュエリー。
ちょっと毛色が違うのですが、吸血鬼の話を更新しました!
もしよかったら、作者ページから、ぜひぜひ。
すてきな1日をお過ごし下さい♡
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