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第四話 月蝕〜マスカレード・ナイト
#4 生贄の身支度
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『どなたか彼女に花をくださる方は?』
司会は手にしたはさみを示して、フロアに問うた。
あのはさみは一体。
考えたくない。
「私が」
名乗り出た紳士は、花束をステージに置いてはさみを受け取ると、ゆっくりと花に近づいてきた。
後ずさろうにも、両手を後ろでDに固定されている。
男が手を伸ばしかけたとき、司会席から声がとんだ。
『布だけですよ。体には触れてはいけません』
ぴたぴたに密着して身体を強調する、ノースリーブのニットワンピースだ。
たっぷりの乳房を包むニットの網目は大きく広がり、尖った乳首の先端がツンと盛り上がって男を誘う。
「おお、完全に発情してるじゃないか。ん? いじってくれと言わんばかりだ。ピンピン弾いてカリカリしてやりたいところだが、ルールだ、仕方ない」
紳士は、その左胸部分を、器用にニット生地だけつまみあげた。
ジャキン!
穴は一瞬で大きく広がり、ぷるんと乳房が飛び出す。
「あっ」
いきなり晒された胸の先で、乳首が一気に固く尖った。
全員の視線がその桜色の一点に集中する。
ちりちりと肌が粟立ち、羞恥に全身が灼かれた。
「やっ、いやぁっ……」
だが、後ろから体を固定されている。
たまらずもがいた結果は、皮肉にも、剥き出しの胸をゆさゆさと揺らして見せつけることにしかならなかった。
会場の熱気が高まるのが、花にもわかる。
いま、全員の頭の中できっと、この剥き出しの乳首が一斉に嬲られている。弄られ舐められ捏ねくられ、もう片方も服の上からきっと。
その刺激は、もはや物理的に肌を刺してきた。
「あああぁ……」
『さあ、お次は?』
ジャキン!
次は右胸が露出させられた。穴はさっきより大きい。
「いやあぁ」
涙がこぼれた。
どうしてこんな。
後ろからDが囁く。
「花、かわいいよ。とても素敵だ」
甘く優しく、残酷に。
耳にそそがれる声に、足元が崩される。
胸の先がぞくぞくと震えて止まらない。
「あっ……」
身体の奥にじゅわりと広がる熱。
そしてとろとろと溢れ出る熱いもの。
(嘘、嘘よ。違う違う。こんなの、違う)
「んっ」
こんな状況で感じたりするわけがない、と自分に言い聞かせるものの。
膝が震える。
『次はいかがです?』
ジャキン!
後ろを向かされ、臀部を大きく切り取られた。
『まだまだいきましょう』
今度は前から腰の周りを。
ジャキン!
「お?」
切った男性が開いた穴を凝視する。
「なんだ、履いてるのか。そうか、Tバックか。それでさっきはわからなかったんだな。これはいい。楽しみが増えた。追加でこれも僕にやらせてくれ。──いかがです、みなさん?」
最後の部分はフロアを振り返って、他のゲストに投げかけた。
応じる声や拍手があって、壇上の男が花束を追加した。さっきより大きな花束を、二つもだ。
「どうぞ」
Dの声がしたと思ったら、ワンピースの裾が腰までめくりあげられた。
小さなレースの下着に覆われた秘部がスポットライトに晒される。
「やあぁっ……!」
「おお、良い眺めだ。これは想像以上だな。それに……」
男は素直に感心した声で嬉しそうに言い、にやりと口角を上げた。
「い~い匂いがしている。よく濡れてるじゃないか。うん?」
鼻を近づけ、これ見よがしにくんくんと嗅ぐ。
「いや、いやぁ……」
そしてはさみが差し込まれた。
ジャキン!
かろうじて守ってくれていた下着の切られる音が、必死に耐えていた花の心をくじく。
「いや……。お願い、許して……」
「そうだよね、花。かわいそうに」
甘く優しいDの声。
「でもこれからだよ。がんばって」
どうしてそんな残酷なことが言えるのだろう。
ふるえて崩れ落ちる身体を、Dが後ろから抱きとめる。
床に落ちた下着を追うように、ひとすじの光るものがしたたり落ちた。
「身支度はできたようだ。じゃあ、そろそろ始めよう」
次ページへ続く
読んでくださりありがとうございます!
司会は手にしたはさみを示して、フロアに問うた。
あのはさみは一体。
考えたくない。
「私が」
名乗り出た紳士は、花束をステージに置いてはさみを受け取ると、ゆっくりと花に近づいてきた。
後ずさろうにも、両手を後ろでDに固定されている。
男が手を伸ばしかけたとき、司会席から声がとんだ。
『布だけですよ。体には触れてはいけません』
ぴたぴたに密着して身体を強調する、ノースリーブのニットワンピースだ。
たっぷりの乳房を包むニットの網目は大きく広がり、尖った乳首の先端がツンと盛り上がって男を誘う。
「おお、完全に発情してるじゃないか。ん? いじってくれと言わんばかりだ。ピンピン弾いてカリカリしてやりたいところだが、ルールだ、仕方ない」
紳士は、その左胸部分を、器用にニット生地だけつまみあげた。
ジャキン!
穴は一瞬で大きく広がり、ぷるんと乳房が飛び出す。
「あっ」
いきなり晒された胸の先で、乳首が一気に固く尖った。
全員の視線がその桜色の一点に集中する。
ちりちりと肌が粟立ち、羞恥に全身が灼かれた。
「やっ、いやぁっ……」
だが、後ろから体を固定されている。
たまらずもがいた結果は、皮肉にも、剥き出しの胸をゆさゆさと揺らして見せつけることにしかならなかった。
会場の熱気が高まるのが、花にもわかる。
いま、全員の頭の中できっと、この剥き出しの乳首が一斉に嬲られている。弄られ舐められ捏ねくられ、もう片方も服の上からきっと。
その刺激は、もはや物理的に肌を刺してきた。
「あああぁ……」
『さあ、お次は?』
ジャキン!
次は右胸が露出させられた。穴はさっきより大きい。
「いやあぁ」
涙がこぼれた。
どうしてこんな。
後ろからDが囁く。
「花、かわいいよ。とても素敵だ」
甘く優しく、残酷に。
耳にそそがれる声に、足元が崩される。
胸の先がぞくぞくと震えて止まらない。
「あっ……」
身体の奥にじゅわりと広がる熱。
そしてとろとろと溢れ出る熱いもの。
(嘘、嘘よ。違う違う。こんなの、違う)
「んっ」
こんな状況で感じたりするわけがない、と自分に言い聞かせるものの。
膝が震える。
『次はいかがです?』
ジャキン!
後ろを向かされ、臀部を大きく切り取られた。
『まだまだいきましょう』
今度は前から腰の周りを。
ジャキン!
「お?」
切った男性が開いた穴を凝視する。
「なんだ、履いてるのか。そうか、Tバックか。それでさっきはわからなかったんだな。これはいい。楽しみが増えた。追加でこれも僕にやらせてくれ。──いかがです、みなさん?」
最後の部分はフロアを振り返って、他のゲストに投げかけた。
応じる声や拍手があって、壇上の男が花束を追加した。さっきより大きな花束を、二つもだ。
「どうぞ」
Dの声がしたと思ったら、ワンピースの裾が腰までめくりあげられた。
小さなレースの下着に覆われた秘部がスポットライトに晒される。
「やあぁっ……!」
「おお、良い眺めだ。これは想像以上だな。それに……」
男は素直に感心した声で嬉しそうに言い、にやりと口角を上げた。
「い~い匂いがしている。よく濡れてるじゃないか。うん?」
鼻を近づけ、これ見よがしにくんくんと嗅ぐ。
「いや、いやぁ……」
そしてはさみが差し込まれた。
ジャキン!
かろうじて守ってくれていた下着の切られる音が、必死に耐えていた花の心をくじく。
「いや……。お願い、許して……」
「そうだよね、花。かわいそうに」
甘く優しいDの声。
「でもこれからだよ。がんばって」
どうしてそんな残酷なことが言えるのだろう。
ふるえて崩れ落ちる身体を、Dが後ろから抱きとめる。
床に落ちた下着を追うように、ひとすじの光るものがしたたり落ちた。
「身支度はできたようだ。じゃあ、そろそろ始めよう」
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