Bacato

noiz

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番外編

ぬいぐるみのへや

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「だァから爆破した方が早いっつったろ!」
「テメェ誰の頭脳で飯食ってンのか忘れてんのか」
「あァ~~面倒くせェ!」

銃声のなか怒鳴り声でそんな遣り取りをしながら、ディズとフィーゾは三階の扉を蹴破った。

一階はフィーゾがハッキングでセンサー解除をしていた為、奇襲で楽に片付いた。手下だけで充分だ。二階は精鋭を前に出し、そのまま任せてある。マシンガンをブッ放しながら三階まで駆け上がってきた二人は、廊下で待ち構えていた構成員を速やかに殺し、事前に非常階段を手下で塞いでおいた上で幹部の部屋に侵入した。

幹部クラスとなると貫禄も怒号も下の雑魚とはレベルが違う。しかし逆にいえば三下のように日々戦力として動いていない為、接近戦にはそう強くない場合も多い。それほど豪華でもないヘッドの部屋へ真っ直ぐ向かい、扉の鍵を撃ち壊してディズが思い切り蹴り飛ばす。右足の着地と同時に身を低くしたディズは銃弾を避け、右の男の顎を殴り上げ、左手ではもう一人に銃弾を喰らわせていた。最前の敵二人が倒れるのと、ディズの後ろで銃を構えていたフィーゾが、奥の幹部を順番に撃ち殺したのは同時だった。流れるような手際で脇を堅めていた重鎮を奪われたギャングのリーダーは、動揺ひとつせずにフィーゾに向けていた銃口を自分の頭に向け、口端を上げた。銃声が響き、頭が弾ける。脳漿が飛び散ると、嵐のような撃ち合いが終わり呆気ないほど静かになった。

「なかなか骨のある奴だったな」
「死んでみせるくらいの奴なら引き込んでも良かったんじゃねェの」
「死んでみせたから手遅れだな」
「報われねェなァー」

ディズが言いながら笑う。
下の喧騒はまだやんでいない。フィーゾは溜息を吐いた。

「まァだ終わってねェのか。お前次の襲撃までにあいつら叩き直せよ」
「俺の仕事はお前の護衛だけだろぉがよ」

二人は部屋を出ると、来た道を引き返しながら入らなかった部屋をひとつずつ調べていく。三つ目の部屋の扉を壊した時、広がった光景はぬいぐるみの山だった。

「ビィィンゴッ!」

ひゃははと笑いながらディズがカラフルなぬいぐるみの山にダイブする。

「確認する間でもねェな」

フィーゾがそう言ったが、ディズはぬいぐるみに埋もれながら、手元のひとつを持ち上げる。力任せに熊のぬいぐるみを破ると、腹から白い粉の入った袋が出てきた。それをひらひらと掲げ、笑う。

「こりゃ札束の山だなー」
「爆破しなくて正解だったろ」
「さァすが我等がフィーゾさま!」

欠片も敬っていない様子でディズが言う。ギャングの組織本部など潰したいなら爆破でもすればいいのだが、今回は大きな麻薬取引の前日を狙った。これを盗んで売り払えばかなりの額になる。

「おい、遊んでねェでさっさと下片付けてこい」
「あぁー?もう終わるだろ。人使い荒いんだよテメェは」

ディズが言い終わる前に、フィーゾの待つピストルの銃口が額に当てられる。カチャリと金属質な音がして、ディズが怠惰な笑みを浮かべる。

「口答えするな」
「んなことよりよォ、フィーゾ」

当てられた銃を握り、ディズは力任せに額から外すとそのまま引っ張り込んだ。自然前へ出た脚が、いつもなら体勢を支えたはずだった。しかしぬいぐるみの足場でバランスを失ったフィーゾが、ディズの上に倒れこむ。せまる色の嵐。体重に埋もれるぬいぐるみのせいで、手をついても距離が取れない。ディズがフィーゾの首筋を舌で舐め上げる。玩具箱の中で悪戯に笑う少年というには淀んだ瞳だが、ある意味子供のような短絡さで、ディズは笑いかける。

「やろうぜ?」
「…節操ねぇな万年発情期」
「お前もだろ」

ディズはそう言い返して、身を捩るように肘でフィーゾのベルトの辺りまで身を下げていった。そしてベルトのバックルを外すと、口でバイカージーンズのファスナーを下げる。

「おい、やめろ。テメェ精液塗れの商品売りさばく気か」
「中身が濡れなきゃ平気だろ」
「フザけんな…あッ…おい」

下着の上からディズがフィーゾの性器に舌を這わせた。布越しにねっとりと舐め上げられると、フィーゾが息を詰める。柔らかく歯を立てて、腿に手を這わせる。慣れた掌の動きに、熱を引き出される。脚の内側を撫で上げられると、フィーゾが微かに反応する。

「…ッ…」

快楽には然程抗う気もない二人だが、今回は場も時も悪すぎた。フィーゾは流されれば楽だと笑う身の内の熱を押さえ込むように、持ったままの銃を握り締めた。

子供騙しの派手な色をしたぬいぐるみにやけに馴染んでいるディズのピンクの頭めがけて、握った銃の弾倉底を振り下ろした。

「イッ…てェ!!」

鈍い音を立てて頭を直撃した衝撃に、ディズは殴られたそこに掌をあてて呻いた。さっさと身を起こして乱れた服を調えてたフィーゾは、涼しい顔でディズに声を掛ける。

「おい発情犬。俺は下へいく。見張っとけ」
「はァ!?ちょッ」

待てと叫ぶディズを置いて、フィーゾは部屋を去っていく。しかし、去り際に背を向けたまま言い捨てた。

「おとなしくしてれば、帰ったら餌だ」

廊下でフィーゾが弾を込めている金属音がした。仕事を済ませて倉庫に帰るのに何十分かかるだろうか。ディズは舌打ちする。

「待てるかクソ野郎」

お預けを食らったディズが、鮮やかすぎる赤や緑の熊を掴み、力任せに放り投げる。部屋の壁に当たってぼとりと落ちた熊は、意志のない目で天井を見上げていた。

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