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「こちら、二階のA棟、問題ありません」
インカムに向かってそう言うと、分かった、と短い返事があった。敦先輩の声である。
今日は待ちに待った(?)新入生歓迎会。俺はもちろん見回りだ。捺たちにはだいぶ呆れられたが、仕事の手伝いはしなければならない。約束してたわけだし。俺の予想では、今年は問題は起こらない。だって、常にグループ行動で悪さする隙なんてないし、誰か一人が狙われていても、周りには必ず人がいて、近付けないはずだ。まあ、念には念を入れよって言うし、新歓とか興味を持てない性質でもある。
さて、開始から三十分は経過した。早いチームは俺がいる二階に来ているだろう。一階の課題はクイズ。選りすぐりの難しい問題を三問用意した。三問全て正解したチームは次の階に進むことが出来る。
……そういえば、俺、二階でどんな課題が出されるか知らない。なんか、秘密だって生徒会メンバーに、はぐらかされたんだよなあ。そんなことを思っていた時。
「会長様!見つけました!」
そんな大きな声が後ろからした。何事かと振り返ると、あまり見たくなかった人がそこにいた。
「見つけたぞ、晴」
「か、会長……」
ズンズンと会長はこちらに歩いて来る。
なんだろう、なんか、すごく、逃げなきゃいけない気がする……!
そう思った途端に俺は廊下を駆け出した。それはもう全速力で。会長や会長のチームのメンバーの声が後ろからしたが、完全に無視。しかし会長たちは俺を追ってくる。
すっごく怖いんだけど……!
泣きそうになりながらも、走っていると、今度は前方から、
「晴君発見!」
なんて陽気な声がした。
「い、わした、先輩……」
みんな行くよ、とチームを統率するような掛け声をかけてこちらもまた俺に向かって走ってくる。
本当になんで!?なんでみんな俺を追うの!?
走って今の状況に困惑しながらも、なんとか逃げきろうと考えをめぐらす。
曲がり角はない。このまま走っていても、岩下先輩のチームに捕まる。かといって反対方向に方向変換しても、会長のチームに捕まる。
……こうなったら……!
俺は開いていた窓に飛び付いた。その窓の下は校庭。二階なら、多分無傷で済む。グッと外に身を乗り出し、そして、飛び降りた。上から何か騒ぐ声が聞こえるけれど、関係ない。そして無事に地面に降り立つ。ふう、と一息つく。これでひとまず安心だ、と気が抜ける。
「捕まえた」
そんな声と共に何か温かいものに包まれる。
「な、捺……?」
声から人物を推測してその名前を呼ぶと、相手は当たり、と言った。
な、なんで捺が?というか、この態勢恥ずかしいんだけど……。
バックハグっていうやつだ。なんで捺がこんなことをするのか分からないけれど、ともかく逃げられない。
「本当にここにいたんだ。やっぱり親友パワーってすごいね」
「え、梓先輩?梓先輩と捺、チーム一緒だったの?」
俺の質問に梓先輩はそうだよ、優しく言った。
保健委員長である梓先輩と親衛隊が存在する捺が同じチームってなかなか豪華だなあ、なんて考える。
「もしかして梓先輩たちも俺を追ってたんですか?」
「当たり前だろ。第二の課題はお前を、晴を捕まえることなんだから」
……なんか頭の痛い話になってるんだけど……。
インカムに向かってそう言うと、分かった、と短い返事があった。敦先輩の声である。
今日は待ちに待った(?)新入生歓迎会。俺はもちろん見回りだ。捺たちにはだいぶ呆れられたが、仕事の手伝いはしなければならない。約束してたわけだし。俺の予想では、今年は問題は起こらない。だって、常にグループ行動で悪さする隙なんてないし、誰か一人が狙われていても、周りには必ず人がいて、近付けないはずだ。まあ、念には念を入れよって言うし、新歓とか興味を持てない性質でもある。
さて、開始から三十分は経過した。早いチームは俺がいる二階に来ているだろう。一階の課題はクイズ。選りすぐりの難しい問題を三問用意した。三問全て正解したチームは次の階に進むことが出来る。
……そういえば、俺、二階でどんな課題が出されるか知らない。なんか、秘密だって生徒会メンバーに、はぐらかされたんだよなあ。そんなことを思っていた時。
「会長様!見つけました!」
そんな大きな声が後ろからした。何事かと振り返ると、あまり見たくなかった人がそこにいた。
「見つけたぞ、晴」
「か、会長……」
ズンズンと会長はこちらに歩いて来る。
なんだろう、なんか、すごく、逃げなきゃいけない気がする……!
そう思った途端に俺は廊下を駆け出した。それはもう全速力で。会長や会長のチームのメンバーの声が後ろからしたが、完全に無視。しかし会長たちは俺を追ってくる。
すっごく怖いんだけど……!
泣きそうになりながらも、走っていると、今度は前方から、
「晴君発見!」
なんて陽気な声がした。
「い、わした、先輩……」
みんな行くよ、とチームを統率するような掛け声をかけてこちらもまた俺に向かって走ってくる。
本当になんで!?なんでみんな俺を追うの!?
走って今の状況に困惑しながらも、なんとか逃げきろうと考えをめぐらす。
曲がり角はない。このまま走っていても、岩下先輩のチームに捕まる。かといって反対方向に方向変換しても、会長のチームに捕まる。
……こうなったら……!
俺は開いていた窓に飛び付いた。その窓の下は校庭。二階なら、多分無傷で済む。グッと外に身を乗り出し、そして、飛び降りた。上から何か騒ぐ声が聞こえるけれど、関係ない。そして無事に地面に降り立つ。ふう、と一息つく。これでひとまず安心だ、と気が抜ける。
「捕まえた」
そんな声と共に何か温かいものに包まれる。
「な、捺……?」
声から人物を推測してその名前を呼ぶと、相手は当たり、と言った。
な、なんで捺が?というか、この態勢恥ずかしいんだけど……。
バックハグっていうやつだ。なんで捺がこんなことをするのか分からないけれど、ともかく逃げられない。
「本当にここにいたんだ。やっぱり親友パワーってすごいね」
「え、梓先輩?梓先輩と捺、チーム一緒だったの?」
俺の質問に梓先輩はそうだよ、優しく言った。
保健委員長である梓先輩と親衛隊が存在する捺が同じチームってなかなか豪華だなあ、なんて考える。
「もしかして梓先輩たちも俺を追ってたんですか?」
「当たり前だろ。第二の課題はお前を、晴を捕まえることなんだから」
……なんか頭の痛い話になってるんだけど……。
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