24 / 28
24
しおりを挟む
風紀室を訪れるとそこには悠先輩しかいなかった。敦先輩は先生に呼ばれたらしい。悠先輩に生徒会の反応を説明すると、悠先輩は苦笑を浮かべた。
「やっぱり反対されちゃったか……。出来れば生徒会からの了承を得たかったな。晴君も生徒会の方気にするでしょ?」
「いえ、俺はもう気にしません。今回は俺の判断なので。なんとなくこうなるような気がしてましたし……」
俺は悠先輩が淹れたお茶を一口飲んだ。
うん、やっぱり美味しい。
正面に座る悠先輩は浮かない顔をしている。そこまで悠先輩が気にする事ではないと俺は思うんだけどな。やっぱり悠先輩は優しすぎるんだ。
「……僕は晴君に、生徒会とも風紀委員とも仲良くしてほしいんだ」
俯いてそう言う悠先輩の声はどこか切なく悲しそうだった。なんだか、俺の計り知れない程大きな何かに悩んでいるよう。
「まぁでも、新歓当日は見回りお願いするね」
無理矢理作った笑顔を向けられ、俺はなんで悠先輩がそこまで思い詰めているのか聞けず、ただ、頷いた。
きっと俺では解決出来ない。話を聞ける程の器も持っていない。だったら、少しでも、癒してあげたい。支えになりたい。
「悠先輩、俺に出来ることがあったら言ってくださいね。解決出来るっていう自信は正直ないですけど、話くらい聞けますから」
にこ、と微笑んで見せると、悠先輩は一瞬呆気にとられたように固まり、すぐにさっきとは違う、いつもの優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとう、晴君。晴君の笑顔、やっぱり落ち着くよ」
「え、そうですか?」
悠先輩の言葉に俺は驚く。そんな風に言われたことは無かったからだ。でも、少しでも悠先輩を癒せたのなら良かったかな。
「ねぇ、少し甘えてもいい?」
「も、もちろんです!」
おいで、と手招きされ、俺はとりあえず、悠先輩のそばに行った。すると今度は、座ってと言うように悠先輩が座る横の空いたスペースをポンポンと叩く。そこに腰を下ろすと、すぐに体を温かいものに包まれた。それが悠先輩の体温であると気付くのに少し時間がかかった。ギュッと背中に回っている悠先輩の腕に痛くない程度の力が入る、
悠先輩の吐息が、俺の耳をくすぐる。耳が弱い俺はぞくぞくと体が震えた。しかし離れてなんて言えるはずもなく、俺はただ、されるがまま受け入れた。
「……好き。
好きだよ、晴君」
「えっ、悠先輩……!?」
耳元でそうささやかれ、俺の顔にはあっという間に熱が集中した。
す、好きって、後輩としてって意味だよね!?それなら俺も好きですって返すべき?で、でも、万が一にもああいう意味の好きだったら、どうしよう。
心の中で考えあぐねている間、その場は無音だった。でも居心地が悪いとは感じない。そして俺の答えも出ない。
「よし!」
突然悠先輩が大きな声を出したと思ったら、背中に回っていた手が離れる。
「ありがとう、晴君。僕、頑張るね」
「あ、は、はい……」
顔の熱は冷めない。
いつも通りの笑顔の悠先輩の真意はよく分からないけれど、スッキリしたみたいだから良かった。
「やっぱり反対されちゃったか……。出来れば生徒会からの了承を得たかったな。晴君も生徒会の方気にするでしょ?」
「いえ、俺はもう気にしません。今回は俺の判断なので。なんとなくこうなるような気がしてましたし……」
俺は悠先輩が淹れたお茶を一口飲んだ。
うん、やっぱり美味しい。
正面に座る悠先輩は浮かない顔をしている。そこまで悠先輩が気にする事ではないと俺は思うんだけどな。やっぱり悠先輩は優しすぎるんだ。
「……僕は晴君に、生徒会とも風紀委員とも仲良くしてほしいんだ」
俯いてそう言う悠先輩の声はどこか切なく悲しそうだった。なんだか、俺の計り知れない程大きな何かに悩んでいるよう。
「まぁでも、新歓当日は見回りお願いするね」
無理矢理作った笑顔を向けられ、俺はなんで悠先輩がそこまで思い詰めているのか聞けず、ただ、頷いた。
きっと俺では解決出来ない。話を聞ける程の器も持っていない。だったら、少しでも、癒してあげたい。支えになりたい。
「悠先輩、俺に出来ることがあったら言ってくださいね。解決出来るっていう自信は正直ないですけど、話くらい聞けますから」
にこ、と微笑んで見せると、悠先輩は一瞬呆気にとられたように固まり、すぐにさっきとは違う、いつもの優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとう、晴君。晴君の笑顔、やっぱり落ち着くよ」
「え、そうですか?」
悠先輩の言葉に俺は驚く。そんな風に言われたことは無かったからだ。でも、少しでも悠先輩を癒せたのなら良かったかな。
「ねぇ、少し甘えてもいい?」
「も、もちろんです!」
おいで、と手招きされ、俺はとりあえず、悠先輩のそばに行った。すると今度は、座ってと言うように悠先輩が座る横の空いたスペースをポンポンと叩く。そこに腰を下ろすと、すぐに体を温かいものに包まれた。それが悠先輩の体温であると気付くのに少し時間がかかった。ギュッと背中に回っている悠先輩の腕に痛くない程度の力が入る、
悠先輩の吐息が、俺の耳をくすぐる。耳が弱い俺はぞくぞくと体が震えた。しかし離れてなんて言えるはずもなく、俺はただ、されるがまま受け入れた。
「……好き。
好きだよ、晴君」
「えっ、悠先輩……!?」
耳元でそうささやかれ、俺の顔にはあっという間に熱が集中した。
す、好きって、後輩としてって意味だよね!?それなら俺も好きですって返すべき?で、でも、万が一にもああいう意味の好きだったら、どうしよう。
心の中で考えあぐねている間、その場は無音だった。でも居心地が悪いとは感じない。そして俺の答えも出ない。
「よし!」
突然悠先輩が大きな声を出したと思ったら、背中に回っていた手が離れる。
「ありがとう、晴君。僕、頑張るね」
「あ、は、はい……」
顔の熱は冷めない。
いつも通りの笑顔の悠先輩の真意はよく分からないけれど、スッキリしたみたいだから良かった。
20
お気に入りに追加
521
あなたにおすすめの小説
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
BLゲーに転生!!やったーーー!しかし......
∞輪廻∞
BL
BLゲーの悪役に転生した!!!よっしゃーーーー!!!やったーーー!! けど、、なんで、、、
ヒロイン含めてなんで攻略対象達から俺、好かれてるんだ?!?
ヒロイン!!
通常ルートに戻れ!!!
ちゃんとヒロインもヒロイン(?)しろーー!!!
攻略対象も!
ヒロインに行っとけ!!!
俺は、観セ(ゴホッ!!ゴホッ!ゴホゴホッ!!
俺はエロのスチルを見てグフグフ言うのが好きなんだよぉーー!!!( ̄^ ̄゜)
誰かーーー!!へるぷみぃー!!!
この、悪役令息
無自覚・天然!!
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
元生徒会長さんの日常
あ×100
BL
俺ではダメだったみたいだ。気づけなくてごめんね。みんな大好きだったよ。
転校生が現れたことによってリコールされてしまった会長の二階堂雪乃。俺は仕事をサボり、遊び呆けたりセフレを部屋に連れ込んだりしたり、転校生をいじめたりしていたらしい。
そんな悪評高い元会長さまのお話。
長らくお待たせしました!近日中に更新再開できたらと思っております(公開済みのものも加筆修正するつもり)
なお、あまり文才を期待しないでください…痛い目みますよ…
誹謗中傷はおやめくださいね(泣)
2021.3.3
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
チャラ男は愛されたい
梅茶
BL
幼い頃優等生としてもてはやされていた主人公。しかし、母が浮気をしたことで親は離婚となり、父について行き入った中学校は世紀末かと思うほどの不良校だった。浮かないためにチャラ男として過ごす日々にストレスが溜まった主人公は、高校はこの学校にいる奴らが絶対に入れないような所にしようと決意し、山奥にひっそりとたつ超一流学校への入学を決める…。
きまぐれ更新ですし頭のおかしいキャラ率高めです…寛容な心で見て頂けたら…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる