12 / 28
12
しおりを挟む
俺はパソコンの前に座って考える。
提案書なんて書くのは初めてで、一向に進まない。
にしても俺に丸投げなんて酷過ぎる。
黙々と作業を進めている皆さんを見て、はぁ、と心の中でため息をつき、副会長が淹れた紅茶を一口飲む。
……相変わらず美味しい。
性格は悪いのに紅茶淹れるのは上手ってなに?
……副会長に当たっても仕方がない。
とりあえず、どんな課題があったか書き出してみよう。
えーと、クイズしたな。
ひらめき系のやつ。
それから、写真に写っている場所がどこなのか探したり、缶を十数個積み上げたりもしたな。
あとは__
なんとかゲームの内容は全て書き出す事が出来た。
でも、これだけじゃ一、二時間で終わってしまうからいくつか足さないと。
俺は気合いを入れ直そうと、紅茶を飲む。
紅茶は淹れたてのように温かかった。
どうやら気付かない内に副会長が淹れ直してくれたらしい。
……優しいな。
ちら、とパソコンの画面に向かう副会長の顔を見る。
真剣な眼差しで画面を見て、キーボードをものすごい勢いで打っている。
にしてもタッチタイピング出来るなんてさすがだよな。
俺はそんな事を思いながら、自分のパソコンに目線を戻した。
「晴!」
突然バタン!と目の前のパソコンが閉じられ、俺はハッとする。
顔を上げると、眉間に皺を寄せてこちらを睨む会長がいた。
「ど、どうしたんですか?」
俺には会長が何故怒っているのか理解出来なかった。
何か会長の感に障るような事をした覚えはないからだ。
「さっきから何度呼んだと思っている!!」
「え、そうだったんですか!?」
全く気が付かなかった。
それだけ提案書作りに没頭していたという事なんだろう。
あたりを見回すと、いつの間にか生徒会室には俺と会長しかいなかった。
窓からはオレンジ色が差し込んでいる。
「俺はもう帰る」
「そ、そうですか。お疲れ様でした」
まだ苛立った様子の会長に、俺は引きつった笑顔を浮かべた。
そりゃ無視したら怒られるよね……。
あはは、と心の中で乾いた笑いをする。
「……あの、会長?」
気まずい沈黙が流れ、俺は思わず会長の顔を窺う。
会長は帰ると言ったのに一向に動かないのだ。
ただムスッとした顔をして俺を見ている。
「……お前は帰らないのか」
「俺ですか?
俺はもうちょっと残っておきます。
きりのいいところまで仕上げたいので」
会長はもしかして俺を心配してくれていたのか?
……まさかね。
俺は自分にツッコミつつ、強制的に閉ざされたパソコンを開く。
本当にあと少しで終わる。
自分が思うように提案書を書いているが、なかなかいい感じだと思う。
「……分かった。
だが、寮の門限までには帰れ」
「はい」
俺は頷いて見せる。
さすがにそこまでは遅くはならない。
会長はまだ何か言いたそうにしていたが、チッと舌打ちをしたかと思うと、足早に生徒会室を出ていった。
バタン!と扉が勢いよく閉まる。
どうしたんだ会長は。
不思議に思いながらも、俺はキーボードを打ち始めた。
会長が出ていってから三十分程が経過。
ようやく俺はきりのいいところまで仕上げた。
グーと座ったまま伸びをしたり、腕を回したりして体をほぐす。
提案書をファイルに保存させつつ帰り支度を整える。
チラリと腕時計を見て、最終下校時刻を過ぎている事に気付いた。
まぁでも生徒会の特権で、残っていてもいいのだけどね。
パソコンのすぐ横に置いてある冷めてしまった副会長の紅茶を一気に口に流し込む。
冷めても美味しい……。
ちょっと感動しながら、生徒会の給湯室に行ってカップを洗った。
とその時、コンコンコンとノックが聞こえた。
こんな時間に誰だ?
それに答えるかのように、ドアを隔てた奥から声が聞こえた。
「風紀だ。誰か残っているのか」
……間違いなく、敦先輩の声だ……。
そういえば風紀は下校時刻が過ぎた頃に二人一組で校内を見回りをするんだ。
ヤバい、怒られるかも。
どうしようどうしようと一人で慌てていると、ガチャ、と扉が開いた。
「晴……」
「こ、こんばんは」
驚いた表情の敦先輩にとりあえず挨拶をする。
「その声もしかして晴?」
ひょっこりと顔を覗かせたのは悠先輩だ。
相変わらず可愛いらしい顔つきだ。
どうやらこの二人で見回りをしていたらしい。
「もしかして一人?
まさか仕事押し付けられたとか?」
悠先輩が俺を心配そうに見る。
「違いますよ。
俺が勝手に残ってるだけです」
肯定しても良かったが、これ以上生徒会と風紀の仲がこじれるのはごめんだ。
そう、とまだ心配そうな悠先輩。
「こんなに遅くまで何をしていたんだ?」
敦先輩は怪訝そうな顔をする。
「新歓の提案書を書いてました。
まだ完成はしてないですけど、あともう少しで終わると思います。
あ、そうだ。良かったら明日途中ですけどお二人に提案書見ていただけませんか?」
我ながら良い安心てだと思う。
会長という大きな大きな砦に向かう前に、一度誰かに見せておきたい。
ヒントをもらっておきたい。
「僕は全然いいよ。
晴に頼られるなんて嬉しいな」
無邪気に笑う悠先輩に俺の心が和む。
「俺も構わない」
敦先輩からも了承を得た。
「いつ頃なら都合がつきそうですか?」
「最近はあんまりする事ないんだよ。
だから早速明日でも構わないよ」
ね?と悠先輩は敦先輩に同調を求める。
それに敦先輩は頷く。
「では、明日の放課後、風紀室に伺います」
そう言うと、悠先輩は待ってるね、と微笑んだ。
提案書なんて書くのは初めてで、一向に進まない。
にしても俺に丸投げなんて酷過ぎる。
黙々と作業を進めている皆さんを見て、はぁ、と心の中でため息をつき、副会長が淹れた紅茶を一口飲む。
……相変わらず美味しい。
性格は悪いのに紅茶淹れるのは上手ってなに?
……副会長に当たっても仕方がない。
とりあえず、どんな課題があったか書き出してみよう。
えーと、クイズしたな。
ひらめき系のやつ。
それから、写真に写っている場所がどこなのか探したり、缶を十数個積み上げたりもしたな。
あとは__
なんとかゲームの内容は全て書き出す事が出来た。
でも、これだけじゃ一、二時間で終わってしまうからいくつか足さないと。
俺は気合いを入れ直そうと、紅茶を飲む。
紅茶は淹れたてのように温かかった。
どうやら気付かない内に副会長が淹れ直してくれたらしい。
……優しいな。
ちら、とパソコンの画面に向かう副会長の顔を見る。
真剣な眼差しで画面を見て、キーボードをものすごい勢いで打っている。
にしてもタッチタイピング出来るなんてさすがだよな。
俺はそんな事を思いながら、自分のパソコンに目線を戻した。
「晴!」
突然バタン!と目の前のパソコンが閉じられ、俺はハッとする。
顔を上げると、眉間に皺を寄せてこちらを睨む会長がいた。
「ど、どうしたんですか?」
俺には会長が何故怒っているのか理解出来なかった。
何か会長の感に障るような事をした覚えはないからだ。
「さっきから何度呼んだと思っている!!」
「え、そうだったんですか!?」
全く気が付かなかった。
それだけ提案書作りに没頭していたという事なんだろう。
あたりを見回すと、いつの間にか生徒会室には俺と会長しかいなかった。
窓からはオレンジ色が差し込んでいる。
「俺はもう帰る」
「そ、そうですか。お疲れ様でした」
まだ苛立った様子の会長に、俺は引きつった笑顔を浮かべた。
そりゃ無視したら怒られるよね……。
あはは、と心の中で乾いた笑いをする。
「……あの、会長?」
気まずい沈黙が流れ、俺は思わず会長の顔を窺う。
会長は帰ると言ったのに一向に動かないのだ。
ただムスッとした顔をして俺を見ている。
「……お前は帰らないのか」
「俺ですか?
俺はもうちょっと残っておきます。
きりのいいところまで仕上げたいので」
会長はもしかして俺を心配してくれていたのか?
……まさかね。
俺は自分にツッコミつつ、強制的に閉ざされたパソコンを開く。
本当にあと少しで終わる。
自分が思うように提案書を書いているが、なかなかいい感じだと思う。
「……分かった。
だが、寮の門限までには帰れ」
「はい」
俺は頷いて見せる。
さすがにそこまでは遅くはならない。
会長はまだ何か言いたそうにしていたが、チッと舌打ちをしたかと思うと、足早に生徒会室を出ていった。
バタン!と扉が勢いよく閉まる。
どうしたんだ会長は。
不思議に思いながらも、俺はキーボードを打ち始めた。
会長が出ていってから三十分程が経過。
ようやく俺はきりのいいところまで仕上げた。
グーと座ったまま伸びをしたり、腕を回したりして体をほぐす。
提案書をファイルに保存させつつ帰り支度を整える。
チラリと腕時計を見て、最終下校時刻を過ぎている事に気付いた。
まぁでも生徒会の特権で、残っていてもいいのだけどね。
パソコンのすぐ横に置いてある冷めてしまった副会長の紅茶を一気に口に流し込む。
冷めても美味しい……。
ちょっと感動しながら、生徒会の給湯室に行ってカップを洗った。
とその時、コンコンコンとノックが聞こえた。
こんな時間に誰だ?
それに答えるかのように、ドアを隔てた奥から声が聞こえた。
「風紀だ。誰か残っているのか」
……間違いなく、敦先輩の声だ……。
そういえば風紀は下校時刻が過ぎた頃に二人一組で校内を見回りをするんだ。
ヤバい、怒られるかも。
どうしようどうしようと一人で慌てていると、ガチャ、と扉が開いた。
「晴……」
「こ、こんばんは」
驚いた表情の敦先輩にとりあえず挨拶をする。
「その声もしかして晴?」
ひょっこりと顔を覗かせたのは悠先輩だ。
相変わらず可愛いらしい顔つきだ。
どうやらこの二人で見回りをしていたらしい。
「もしかして一人?
まさか仕事押し付けられたとか?」
悠先輩が俺を心配そうに見る。
「違いますよ。
俺が勝手に残ってるだけです」
肯定しても良かったが、これ以上生徒会と風紀の仲がこじれるのはごめんだ。
そう、とまだ心配そうな悠先輩。
「こんなに遅くまで何をしていたんだ?」
敦先輩は怪訝そうな顔をする。
「新歓の提案書を書いてました。
まだ完成はしてないですけど、あともう少しで終わると思います。
あ、そうだ。良かったら明日途中ですけどお二人に提案書見ていただけませんか?」
我ながら良い安心てだと思う。
会長という大きな大きな砦に向かう前に、一度誰かに見せておきたい。
ヒントをもらっておきたい。
「僕は全然いいよ。
晴に頼られるなんて嬉しいな」
無邪気に笑う悠先輩に俺の心が和む。
「俺も構わない」
敦先輩からも了承を得た。
「いつ頃なら都合がつきそうですか?」
「最近はあんまりする事ないんだよ。
だから早速明日でも構わないよ」
ね?と悠先輩は敦先輩に同調を求める。
それに敦先輩は頷く。
「では、明日の放課後、風紀室に伺います」
そう言うと、悠先輩は待ってるね、と微笑んだ。
49
お気に入りに追加
581
あなたにおすすめの小説
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
転生先がBLの世界とか…俺、聞いてないんですけどぉ〜?
彩ノ華
BL
何も知らないままBLの世界へと転生させられた主人公…。
彼の言動によって知らないうちに皆の好感度を爆上げしていってしまう…。
主人公総受けの話です!((ちなみに無自覚…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる