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「カリン様。朝でございます」

「んぅ…。もうそんな時間…」

まだまだ眠たくて重い瞼をこする。そしてゆっくり体を起こした。

いつも通りの景色。白いシーツに布団は相変わらず清潔感がある。暖かな日差しが程よく差し込み心地いい。

すぐそばに俺の専属執事のルートが控えている。

「おはよう。ルートさん」

「おはようございます。カリン様」

ルートさんは俺の専属執事なだけあって毎朝起こしてくれる。こんな俺のために尽くしてくれる。素晴らしくて、綺麗な顔をしてて、冷静で、俺よりいくつも年上、というジェントルマン。

「今日も起こしてくれてありがとう。俺はもう平気だから、ルートさんも自由に過ごしていいよ」

「それではカリン様のお着替えを手伝わせていただきます」

「あ、いや、俺のことじゃなくて、ルートさんのしたいことを……」

「これはわたくしの意志でございます。これが私のしたいことなのです」

「そ、そう…。じゃあ、お願い…」

このように優しすぎる部分もある。俺のことなんて本当は世話したくないはずだ。だって原作ではチラッと出てきただけだが、カリンと執事のルートの仲は最悪だった。でも、専属執事だから、と強い使命感を持って俺のお世話をしてくれる。


「あ、あの、ボタンを外すくらい俺一人で出来るよ…?」

「遠慮なさらないでください」

遠慮しているわけではないんだけど…。

手際良く俺のボタンを外していくルートさん。俺はもう六歳だ。正直起きるのも着脱衣も一人で出来る。けれどそれを何度伝えてもルートさんはさっきと同じように「遠慮なさらないでください」と一瞥するだけだ。

俺ってそんなに何も出来なさそうに見えるのかな……。そう落ち込んでしまう。

「ひゃあっ」

突然、ルートさんの手が腰に触れた。俺の腰は少しだけくびれてきた程度だけど、そこがくすぐったくて仕方ない。

「申し訳ありません、触れてしまいました。わざとではないのです」

そう言うルートさんは悪戯っ子の顔を浮かべている。絶対わざとだ…!

ぷぅ、と頬を膨らませて怒っている風に振る舞うが、ルートさんは気にする様子がない。いつも通りの綺麗な澄ました顔をしている。

「そんな顔をしてはいけませんよ。どこで誰を惑わすか分かりませんからね」

「……?どういう意味?」

「いえ、お気になさらないでください」

ルートさんは俺の着せ替えを済ませ、膝をついていた状態から立ち上がる。

「では、朝食にしましょう」

「……う、うん」

俺はまだまだ追求したかったけれど、こうなった場合のルートさんは絶対に教えてくれないと分かっているので渋々従う。

これが俺のいつも通りの朝だ。
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