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マネージャー
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鳳事務所
タレント達のスケジュールを入力し、退社まで後三十分。余った時間で俺は暇潰しをしていた。
「まだ終わんないのか 士郎?」俺の元マネージャー、現先輩の金弘さんが話し掛けてきた。
「スケジュールは終わりましたよ。ちょっと時間が余ったので小説を書いてるんです」会社の電力を使って悪いと思ったが正直に答えることにした。
「小説?へぇーどんな?」金弘さんは興味を持ったようだ。
「芸能事務所の話です。高飛車だけど仲間思いな令嬢女優や、これといった特徴のない若手俳優、全力だけが取り柄の女子高生なんかが所属しているごく普通の事務所の話です」タイプしながら答える。
「ほんと、普通だな。で?どいつが主役なの?高飛車?モブ?全力?」金弘さんはコーヒーメーカーにお湯を注いだ。
食いつくなぁ
「どいつが主役とかはないんですけど・・・」少し困った。
「やっぱり主役は必要だろう。あっマネージャーが主役ってのはどうだ?超天才のイケメン俳優をスカウトして社長まで伸し上がっちまう話とか?」金弘さんは人差し指を俺に向けた。
「・・・超天才のイケメン俳優」懐かしい言葉だった。
四年前
専門学校を出たばかりの俺はとある有名劇団の裏方をしていた。俳優を目指して劇団に入ったのにやることは毎日の荷物運びだけだった。下っ端だから力仕事は仕様がない。でも少しでいいから舞台に立ちたかった。
そんな時、後片付けが終わり一休みしていると
「ねぇ、君、超天才のイケメン俳優になれる?」金髪の胡散臭い男。それが彼の最初の印象だ。
「はい?」意味が解らなかった。
「これから合コンなんだけどさぁ、超天才のイケメン俳優呼んだって言っちゃったんだよ。君、役者だろ?超天才のイケメン俳優になってよ」彼は二千円札を見せた。
「あっ二千円札!超天才のイケメン俳優、やります!」俺は二千円札に吊られた。
イケメンは何とかなると思った。俺は超天才になる為、知っている知識を言いまくった。
鷲と鷹は大きさしか違わないとか、クジラとイルカは大きさしか違わないとかだ。
女性陣は最初こそ面白がっていたがシラけはじめ、一時間もしないうちに帰ってしまった。
大失敗だ。
「すいませんでした」俺は二千円札を差し出した。
「君をウチの事務所にスカウトしたい!」男は目を輝かせて言った。
「はぁ?」意味が解らなかった。
「だからスカウトだよ。君を役者にしたいの」
確かに俺は役者になりたかった。でも何もかもわからない。俺は眉を顰めた。
「君、知らない?彼女達、そこそこ有名な女優だよ。まぁ今日引退するはずだったんだけどね。最後の思い出に超天才のイケメン俳優との飲み会を企画してたんだけどその人が来られなくなって君に頼んだ。そこまではOK?」
「はい」まぁ理解できた。
「彼女達も馬鹿じゃない。その俳優が来れないことも解ってた。彼女達が欲しかったのは目の保養が出来て、最後の晩餐を楽しませてくれる存在だったと思う」
「でも、そこに現れたのは本物だった」彼はニヤリと笑った。
「イケメンは認めますけど。超天才って」少し照れる。
「君の顔なんて芸能界では普通だよ。頭もあまり良くないだろう。あの知識だもんね。問題はその話し方、強いて言うならリズム。惹き付けられてしまう そのリズムに どうでもいいくだらない話なのに。彼女達、嫉妬してたよ そしてまだやれるって引退取り消しちゃった。そんな君が役者をやったらって考えたら面白くなっちゃってスカウトした」
この人は褒めているのだろうか?でも今の劇団で裏方をしているよりはよっぽどマシだと思った。
「とりあえずイケメン俳優になりたいです なれますか?」それ位は望んでもいいだろう。
「簡単だよ。俺がマネージャーになるんだ」彼の目は自信に溢れていた。
「名刺ください!」いいだろう自分から貰っても。
「金弘 聖矢だ。本名は二つの土地に置いてきた。君は?」
「安治 竜です」俺は答える。
「へんな名前だな。よし今日からお前は、多田 士郎だ よろしく士郎!」
「よろしくです。金弘マネージャー!」
「社長のお土産です」受付の仕事を終えた万知 凛さんがお菓子を持ってきてくれた。
いつもは見えないナマアシが綺麗だった。
「ほらよ」金弘さんが何かの資料らしき物を俺に渡してきた。
「何ですかコレ?」
「台本。容疑者役だ」
役者の仕事だった。探してくれていたんだ。
「お前は俺が見つけた本物だ。俺が社長になるまで、まだまだ稼いで貰うぞ」金弘マネージャーは照れ臭そうに言った。
「ありがとうございます」嬉しかったが、調子に乗るのはやめておこう。
「あっ小説はいいのか?」
「大丈夫です。こっちは遊びでやってるので」
終わり
タレント達のスケジュールを入力し、退社まで後三十分。余った時間で俺は暇潰しをしていた。
「まだ終わんないのか 士郎?」俺の元マネージャー、現先輩の金弘さんが話し掛けてきた。
「スケジュールは終わりましたよ。ちょっと時間が余ったので小説を書いてるんです」会社の電力を使って悪いと思ったが正直に答えることにした。
「小説?へぇーどんな?」金弘さんは興味を持ったようだ。
「芸能事務所の話です。高飛車だけど仲間思いな令嬢女優や、これといった特徴のない若手俳優、全力だけが取り柄の女子高生なんかが所属しているごく普通の事務所の話です」タイプしながら答える。
「ほんと、普通だな。で?どいつが主役なの?高飛車?モブ?全力?」金弘さんはコーヒーメーカーにお湯を注いだ。
食いつくなぁ
「どいつが主役とかはないんですけど・・・」少し困った。
「やっぱり主役は必要だろう。あっマネージャーが主役ってのはどうだ?超天才のイケメン俳優をスカウトして社長まで伸し上がっちまう話とか?」金弘さんは人差し指を俺に向けた。
「・・・超天才のイケメン俳優」懐かしい言葉だった。
四年前
専門学校を出たばかりの俺はとある有名劇団の裏方をしていた。俳優を目指して劇団に入ったのにやることは毎日の荷物運びだけだった。下っ端だから力仕事は仕様がない。でも少しでいいから舞台に立ちたかった。
そんな時、後片付けが終わり一休みしていると
「ねぇ、君、超天才のイケメン俳優になれる?」金髪の胡散臭い男。それが彼の最初の印象だ。
「はい?」意味が解らなかった。
「これから合コンなんだけどさぁ、超天才のイケメン俳優呼んだって言っちゃったんだよ。君、役者だろ?超天才のイケメン俳優になってよ」彼は二千円札を見せた。
「あっ二千円札!超天才のイケメン俳優、やります!」俺は二千円札に吊られた。
イケメンは何とかなると思った。俺は超天才になる為、知っている知識を言いまくった。
鷲と鷹は大きさしか違わないとか、クジラとイルカは大きさしか違わないとかだ。
女性陣は最初こそ面白がっていたがシラけはじめ、一時間もしないうちに帰ってしまった。
大失敗だ。
「すいませんでした」俺は二千円札を差し出した。
「君をウチの事務所にスカウトしたい!」男は目を輝かせて言った。
「はぁ?」意味が解らなかった。
「だからスカウトだよ。君を役者にしたいの」
確かに俺は役者になりたかった。でも何もかもわからない。俺は眉を顰めた。
「君、知らない?彼女達、そこそこ有名な女優だよ。まぁ今日引退するはずだったんだけどね。最後の思い出に超天才のイケメン俳優との飲み会を企画してたんだけどその人が来られなくなって君に頼んだ。そこまではOK?」
「はい」まぁ理解できた。
「彼女達も馬鹿じゃない。その俳優が来れないことも解ってた。彼女達が欲しかったのは目の保養が出来て、最後の晩餐を楽しませてくれる存在だったと思う」
「でも、そこに現れたのは本物だった」彼はニヤリと笑った。
「イケメンは認めますけど。超天才って」少し照れる。
「君の顔なんて芸能界では普通だよ。頭もあまり良くないだろう。あの知識だもんね。問題はその話し方、強いて言うならリズム。惹き付けられてしまう そのリズムに どうでもいいくだらない話なのに。彼女達、嫉妬してたよ そしてまだやれるって引退取り消しちゃった。そんな君が役者をやったらって考えたら面白くなっちゃってスカウトした」
この人は褒めているのだろうか?でも今の劇団で裏方をしているよりはよっぽどマシだと思った。
「とりあえずイケメン俳優になりたいです なれますか?」それ位は望んでもいいだろう。
「簡単だよ。俺がマネージャーになるんだ」彼の目は自信に溢れていた。
「名刺ください!」いいだろう自分から貰っても。
「金弘 聖矢だ。本名は二つの土地に置いてきた。君は?」
「安治 竜です」俺は答える。
「へんな名前だな。よし今日からお前は、多田 士郎だ よろしく士郎!」
「よろしくです。金弘マネージャー!」
「社長のお土産です」受付の仕事を終えた万知 凛さんがお菓子を持ってきてくれた。
いつもは見えないナマアシが綺麗だった。
「ほらよ」金弘さんが何かの資料らしき物を俺に渡してきた。
「何ですかコレ?」
「台本。容疑者役だ」
役者の仕事だった。探してくれていたんだ。
「お前は俺が見つけた本物だ。俺が社長になるまで、まだまだ稼いで貰うぞ」金弘マネージャーは照れ臭そうに言った。
「ありがとうございます」嬉しかったが、調子に乗るのはやめておこう。
「あっ小説はいいのか?」
「大丈夫です。こっちは遊びでやってるので」
終わり
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