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第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~
第六十五話 死闘の幕開け
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「はぁ・・・ はぁ・・・」
――俺は死ぬ気で走り続けた。
あの爆発が何かは分からない。だが、嫌な予感がするのは確かだ。
(あそこの角を曲がって・・・ あそこだ!)
レイドはそのまま走り続け、勢いを残しながら医務室の扉を豪快に開けた。
「エレーヌッ! 無事・・・ いや、誰もいない・・・」
レイドは医務室を見渡す。
もぬけの殻ではあるが、先ほどまで人がいたような形跡があった。
(どこへ行ったんだ・・・?)
そこで、レイドはある考えが頭をよぎる。
――もしかして、危険を察知して先に逃げたのでは・・・?
そういうことなら、レイドはこの空間で一人ぼっちとなる。
(不味い、俺も逃げないと・・・)
だが、少し気付くのが遅かったようだ・・・
「ゴ・・・ァ・・・」
「・・・! 誰だ!」
急に、禍々しい雰囲気が辺りを支配し、レイドを押さえつける。
(全く気が付かなかったぞ? しかも、あれは・・・)
「黒き、人間・・・」
――全身、真っ黒の人が現れたのだ・・・!
「レイドォ・・・ ア゛、会イタカッタゾ・・・」
「!? しゃべった・・・? いや、お前は誰だ・・・!」
「分カラナイノカ・・・? ワ゛レノコトヲ・・・」
(まさか・・・ マルクだっていうのか・・・?)
一人称を我と使う人は、マルクしかいない。
しかし、今目の前にいる”奴”は、姿、形、雰囲気と何もかもが変わっていた。
「マルク・・・」
「ソウ! マルクサマダ! ”シンジンルイ”ニ、ナッタノデアル!」
「ハッ! 何が新人類だよ、化け物どもが・・・!」
「ヤハリ、キサマ、ハ、分カッテ、イナイ!」
すると、次の瞬間、黒化マルクは音も無く消えた!
(来たか! どこに行ったんだ・・・!)
レイドは辺りをまんべんなく警戒したが、マルクがどこから攻撃を仕掛けてくるか、全く見当がつかなかった。
「ヤハリ・・・ 遅イ・・・」
(!!! 後ろに・・・ 居ただとっ!)
レイドは本能に従うまま、剣を振り払う。
(当たっていない・・・! 食らう・・・!)
「マズハ、イッ発目・・・」
「うあぁぁっ!!」
――マルクの拳がレイドの左半身にヒットした。
「ヤッパリ、脆イ・・・」
「ア゛ァ・・・! ウ゛ゥァ、」
(痛い! 痛い! 腕がぁ・・・! 腹が・・・)
レイドの左腕はあり得ない方向に曲がり、左脇も筋肉がえぐれていた。
血は、止まることなく流れ続けている・・・
「大丈夫ダ・・・ モウ片方モ、同ジニ、シテヤル」
そして、マルクはレイドの体をつかんだ。
「放・・・ せ・・・」
マルクは止まることなく、右腕を・・・ 折った。
「ああああああああああっっ!!!」
「ドウシタ? モウ終ワリカ?」
レイドはもう剣を持つことは出来なくなり、その場で倒れ伏せる。
――ああ、俺は死んでしまうのか。
自分の実力を高く見すぎていた。いくら学園に敵が居なくても・・・
上は、常に誰かがいる。
「次ハ、足・・・」
「う、ぅ・・・」
レイドはなすすべも無く、引きずられる。
「Ω φλόγα ... δώσε μου δύναμη!」
「・・・ン? グ、ァ・・・?」
詠唱が聞こえた次の瞬間、魔術がマルクの肩を貫いたのである!
マルクは危険を察知したのか、後ろに下がる。
「レイド、お待たせ~ 死んでない? 大丈夫かい? お~い?」
ロイク・・・
「へへっ、だから一人で突っ込むなと言ったんだよな? レイドよ」
カイン・・・
「私も、影ながら参戦するぞ!」
「わ、わたくしもよ! こ、こう見えても魔術師なんだからね!」
マリー・・・ と、れ、レシティア?
「僕も助太刀するよ。まあ、呪いが効くか分からないけど?」
ロベルト・・・ そして、
「さあ、敵は奴一匹です! 皆で掃討しましょう!」
エレーヌ・・・!
「いやいや、死んでなくてよかったね~ エレーヌなんて顔が真っ青だったよ?」
(そうだ、エレーヌはなんで一緒にいるんだ?)
「ロ・・・ ヴ、ゲホッ、ゲホッ!!」
「あー、無理するんじゃないよ? 後でゆっくり話すから」
「エレーヌ、レイドの手当てをして。僕たちはあの化け物を何とかしよう~」
「「「オウっ!!!」」」
そして、ロイク率いる部隊は再び臨戦態勢に移った。
「・・・厄介ダナ。コレハ骨ガ折レソウダ」
「え~? 骨折で済むの? 大丈夫、ちゃんと殺してあげるからね」
「ロイク兄貴、それなんか、言葉の意味はき違えてないっすか?」
「・・・・・・」
そんな会話をしているうちに、後衛組も準備が完了し、エレーヌはレイドの治療を始めた。
「Θεραπευτική δύναμη ... για μένα.」
「エレーヌ・・・ すまない・・・」
「怪我人は黙っていてください。 ・・・バカ」
マルクとの、最期の戦いが、始まる・・・
――俺は死ぬ気で走り続けた。
あの爆発が何かは分からない。だが、嫌な予感がするのは確かだ。
(あそこの角を曲がって・・・ あそこだ!)
レイドはそのまま走り続け、勢いを残しながら医務室の扉を豪快に開けた。
「エレーヌッ! 無事・・・ いや、誰もいない・・・」
レイドは医務室を見渡す。
もぬけの殻ではあるが、先ほどまで人がいたような形跡があった。
(どこへ行ったんだ・・・?)
そこで、レイドはある考えが頭をよぎる。
――もしかして、危険を察知して先に逃げたのでは・・・?
そういうことなら、レイドはこの空間で一人ぼっちとなる。
(不味い、俺も逃げないと・・・)
だが、少し気付くのが遅かったようだ・・・
「ゴ・・・ァ・・・」
「・・・! 誰だ!」
急に、禍々しい雰囲気が辺りを支配し、レイドを押さえつける。
(全く気が付かなかったぞ? しかも、あれは・・・)
「黒き、人間・・・」
――全身、真っ黒の人が現れたのだ・・・!
「レイドォ・・・ ア゛、会イタカッタゾ・・・」
「!? しゃべった・・・? いや、お前は誰だ・・・!」
「分カラナイノカ・・・? ワ゛レノコトヲ・・・」
(まさか・・・ マルクだっていうのか・・・?)
一人称を我と使う人は、マルクしかいない。
しかし、今目の前にいる”奴”は、姿、形、雰囲気と何もかもが変わっていた。
「マルク・・・」
「ソウ! マルクサマダ! ”シンジンルイ”ニ、ナッタノデアル!」
「ハッ! 何が新人類だよ、化け物どもが・・・!」
「ヤハリ、キサマ、ハ、分カッテ、イナイ!」
すると、次の瞬間、黒化マルクは音も無く消えた!
(来たか! どこに行ったんだ・・・!)
レイドは辺りをまんべんなく警戒したが、マルクがどこから攻撃を仕掛けてくるか、全く見当がつかなかった。
「ヤハリ・・・ 遅イ・・・」
(!!! 後ろに・・・ 居ただとっ!)
レイドは本能に従うまま、剣を振り払う。
(当たっていない・・・! 食らう・・・!)
「マズハ、イッ発目・・・」
「うあぁぁっ!!」
――マルクの拳がレイドの左半身にヒットした。
「ヤッパリ、脆イ・・・」
「ア゛ァ・・・! ウ゛ゥァ、」
(痛い! 痛い! 腕がぁ・・・! 腹が・・・)
レイドの左腕はあり得ない方向に曲がり、左脇も筋肉がえぐれていた。
血は、止まることなく流れ続けている・・・
「大丈夫ダ・・・ モウ片方モ、同ジニ、シテヤル」
そして、マルクはレイドの体をつかんだ。
「放・・・ せ・・・」
マルクは止まることなく、右腕を・・・ 折った。
「ああああああああああっっ!!!」
「ドウシタ? モウ終ワリカ?」
レイドはもう剣を持つことは出来なくなり、その場で倒れ伏せる。
――ああ、俺は死んでしまうのか。
自分の実力を高く見すぎていた。いくら学園に敵が居なくても・・・
上は、常に誰かがいる。
「次ハ、足・・・」
「う、ぅ・・・」
レイドはなすすべも無く、引きずられる。
「Ω φλόγα ... δώσε μου δύναμη!」
「・・・ン? グ、ァ・・・?」
詠唱が聞こえた次の瞬間、魔術がマルクの肩を貫いたのである!
マルクは危険を察知したのか、後ろに下がる。
「レイド、お待たせ~ 死んでない? 大丈夫かい? お~い?」
ロイク・・・
「へへっ、だから一人で突っ込むなと言ったんだよな? レイドよ」
カイン・・・
「私も、影ながら参戦するぞ!」
「わ、わたくしもよ! こ、こう見えても魔術師なんだからね!」
マリー・・・ と、れ、レシティア?
「僕も助太刀するよ。まあ、呪いが効くか分からないけど?」
ロベルト・・・ そして、
「さあ、敵は奴一匹です! 皆で掃討しましょう!」
エレーヌ・・・!
「いやいや、死んでなくてよかったね~ エレーヌなんて顔が真っ青だったよ?」
(そうだ、エレーヌはなんで一緒にいるんだ?)
「ロ・・・ ヴ、ゲホッ、ゲホッ!!」
「あー、無理するんじゃないよ? 後でゆっくり話すから」
「エレーヌ、レイドの手当てをして。僕たちはあの化け物を何とかしよう~」
「「「オウっ!!!」」」
そして、ロイク率いる部隊は再び臨戦態勢に移った。
「・・・厄介ダナ。コレハ骨ガ折レソウダ」
「え~? 骨折で済むの? 大丈夫、ちゃんと殺してあげるからね」
「ロイク兄貴、それなんか、言葉の意味はき違えてないっすか?」
「・・・・・・」
そんな会話をしているうちに、後衛組も準備が完了し、エレーヌはレイドの治療を始めた。
「Θεραπευτική δύναμη ... για μένα.」
「エレーヌ・・・ すまない・・・」
「怪我人は黙っていてください。 ・・・バカ」
マルクとの、最期の戦いが、始まる・・・
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