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第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~
第五十二話 ミゲル教頭の専門分野
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時は少し進み、レイドとエレーヌは魔術理論の授業が行われる教室へと来ていた。
授業開始までまだ十五分程度あるので、あまり生徒の姿は見られない。
「あ! レイドじゃないの! ・・・それとエレーヌ」
「ゲッ・・・ レシティア・・・」
「ゲッって何よ! わたくしがここにいて悪いわけ?」
先客の中にレシティアがいた。
(何という不運だ・・・ 目立つだろ、止めてくれ!)
「声が大きい。静かに話してくれないか?」
「ん? 十分静かだと思うわよ?」
「うるさいですよ。貴方の耳はどうなっているんですか?」
「アナタの耳が過敏すぎるだけよ! 医者に診てもらった方がいいわ!」
エレーヌとレシティアの間に火花が散る。
(初対面のときからこの二人はずっといがみ合っているな・・・)
「ハァ・・・ もう座りましょう」
埒が明かないと悟ったのか、エレーヌはレシティアから遠く離れた席へと座った。
レイドもその隣に座る。
・・・それから少し経ち、生徒たちが集まってきた。
「なあ、エレーヌ。レシティアの周り、誰も座らないな・・・」
「おそらく、自業自得でしょうね」
「・・・何か変なわけ?」
(まずい、レシティアが気付いたか・・・)
「・・・何でもないよ」
「いや、絶対に何かある・・・」
「静粛に!」
すると、レイドにとって見たことのある教師が入ってきた。
(あ、俺にいろいろと聞いて来た教師だ)
「エレーヌ、誰か分かるか?」
「ミゲル教頭ですね。魔法研究のエキスパートです」
「レシティア君・・・ また君か。もうそろそろ静かにするということを学んだらどうかね?」
「いや、だって・・・」
「・・・また実験台にされたいか?」
その言葉を聞いたレシティアは即座に黙った。
「・・・それでは授業を始めよう」
(なんだこれ・・・ 意味が分からん・・・)
今、魔術理論の授業中だ。
魔法を使えないレイドにとっては、圧倒的に経験が足りないのでイメージが出来ない。
だから授業の内容もいまいちピンとこないのだ。
例えるなら、剣を扱えない人が剣術を理解できるのか? ということだ。
「では、この魔法陣を解いてみよ・・・ では、エレーヌ君」
「はい。これは初級の炎魔術が二つに重なったものです」
「・・・よし、君は魔法陣の二乗を理解しているようだ。では、次の魔法陣を。レシティア君」
「・・・これは炎魔術と風魔術を重ねたもの・・・です」
「ふむ・・・ 正解。座って良し」
(・・・フーン、やっぱり出来るんだよな)
そうして、何事も無く授業が終わった。
ミゲルの授業進行が速いので、終わってもなおメモを取っている生徒が多数いる。
「・・・レイド君、ちょっといいかね?」
「はい、何でしょうか?」
「君は魔力が無いと聞いているんだが、どうして、この授業を取ろうと思ったのかを聞きたい」
(・・・エレーヌと一緒だから、なんて絶対に言えない)
必死で考えるレイド。
何か良い考え・・・ 何か良い考え・・・ ・・・あっ
「それは・・・ とある研究のためです。魔力が無い私でも、魔術を使用する技術・・・など」
「ほう・・・ つまり、他人の魔力を・・・」
ミゲルは何か考え始めたようだ。
(とりあえず含みを加えた言い方ならごまかせるだろう。天才だな・・・)
「まじかよ・・・ レイドって言えば、入学試験で暴れてたやつだよな・・・」
「魔獣狩り大会でも、”黒き魔獣”を撃退したって噂だし・・・」
「これ以上強くなってどうするんだよ!」
・・・周りの生徒もこのような反応だ。
「よし、決めた。実は、私は魔術反射の研究をしていてな・・・ 君にも研究を手伝ってもらいたいんだ」
「・・・え?」
「君の研究内容と合致していると思うのだが・・・ 違うかね?」
「え? え?」
これはさすがに予想外だ。まさかミゲル教頭がそれの専門分野だったなんて・・・
「レイド、私も行きたいです。ミゲル教頭、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです。実は、バイセン領で遺跡を見つけてな。あそこに魔術反射に関わるものがあると踏んでいる」
(それって・・・ インテグリーのことじゃ・・・)
バイセン領、遺跡、魔術反射・・・ 何もかもが一致している。
「その遺跡攻略にレイド君が適任と思ったのでね」
「遺跡攻略ですか・・・ それなら戦闘のプロがもっと必要ですね。兄さん、ロイクなんてどうでしょうか?」
「良いな、彼もバイセン領の人間だ」
(エレーヌ! 俺と一緒に行ったよな!)
エレーヌは全く気が付いていないようだ。
「ちょっと、わたくしも混ぜて!」
レシティアも首を突っ込んできた。
「・・・レシティア、戦えないのは知っているぞ?」
「そうですよ、箱入り娘は外に出ないのが賢明です」
「何よ! わたくしも戦おうと思ったらできるわよ!」
「レシティア君・・・ 私が、嫌だ」
「な・・・ なっ・・・」
レシティアはまさかのミゲル教頭の反撃により絶句してしまう。
「よし、数日後に行こうかね。皆さん、それまでに準備しておいて」
「「はい!」」
「ま、まって・・・」
レシティアはまたもや、一人ぼっちになってしまうのであった・・・
授業開始までまだ十五分程度あるので、あまり生徒の姿は見られない。
「あ! レイドじゃないの! ・・・それとエレーヌ」
「ゲッ・・・ レシティア・・・」
「ゲッって何よ! わたくしがここにいて悪いわけ?」
先客の中にレシティアがいた。
(何という不運だ・・・ 目立つだろ、止めてくれ!)
「声が大きい。静かに話してくれないか?」
「ん? 十分静かだと思うわよ?」
「うるさいですよ。貴方の耳はどうなっているんですか?」
「アナタの耳が過敏すぎるだけよ! 医者に診てもらった方がいいわ!」
エレーヌとレシティアの間に火花が散る。
(初対面のときからこの二人はずっといがみ合っているな・・・)
「ハァ・・・ もう座りましょう」
埒が明かないと悟ったのか、エレーヌはレシティアから遠く離れた席へと座った。
レイドもその隣に座る。
・・・それから少し経ち、生徒たちが集まってきた。
「なあ、エレーヌ。レシティアの周り、誰も座らないな・・・」
「おそらく、自業自得でしょうね」
「・・・何か変なわけ?」
(まずい、レシティアが気付いたか・・・)
「・・・何でもないよ」
「いや、絶対に何かある・・・」
「静粛に!」
すると、レイドにとって見たことのある教師が入ってきた。
(あ、俺にいろいろと聞いて来た教師だ)
「エレーヌ、誰か分かるか?」
「ミゲル教頭ですね。魔法研究のエキスパートです」
「レシティア君・・・ また君か。もうそろそろ静かにするということを学んだらどうかね?」
「いや、だって・・・」
「・・・また実験台にされたいか?」
その言葉を聞いたレシティアは即座に黙った。
「・・・それでは授業を始めよう」
(なんだこれ・・・ 意味が分からん・・・)
今、魔術理論の授業中だ。
魔法を使えないレイドにとっては、圧倒的に経験が足りないのでイメージが出来ない。
だから授業の内容もいまいちピンとこないのだ。
例えるなら、剣を扱えない人が剣術を理解できるのか? ということだ。
「では、この魔法陣を解いてみよ・・・ では、エレーヌ君」
「はい。これは初級の炎魔術が二つに重なったものです」
「・・・よし、君は魔法陣の二乗を理解しているようだ。では、次の魔法陣を。レシティア君」
「・・・これは炎魔術と風魔術を重ねたもの・・・です」
「ふむ・・・ 正解。座って良し」
(・・・フーン、やっぱり出来るんだよな)
そうして、何事も無く授業が終わった。
ミゲルの授業進行が速いので、終わってもなおメモを取っている生徒が多数いる。
「・・・レイド君、ちょっといいかね?」
「はい、何でしょうか?」
「君は魔力が無いと聞いているんだが、どうして、この授業を取ろうと思ったのかを聞きたい」
(・・・エレーヌと一緒だから、なんて絶対に言えない)
必死で考えるレイド。
何か良い考え・・・ 何か良い考え・・・ ・・・あっ
「それは・・・ とある研究のためです。魔力が無い私でも、魔術を使用する技術・・・など」
「ほう・・・ つまり、他人の魔力を・・・」
ミゲルは何か考え始めたようだ。
(とりあえず含みを加えた言い方ならごまかせるだろう。天才だな・・・)
「まじかよ・・・ レイドって言えば、入学試験で暴れてたやつだよな・・・」
「魔獣狩り大会でも、”黒き魔獣”を撃退したって噂だし・・・」
「これ以上強くなってどうするんだよ!」
・・・周りの生徒もこのような反応だ。
「よし、決めた。実は、私は魔術反射の研究をしていてな・・・ 君にも研究を手伝ってもらいたいんだ」
「・・・え?」
「君の研究内容と合致していると思うのだが・・・ 違うかね?」
「え? え?」
これはさすがに予想外だ。まさかミゲル教頭がそれの専門分野だったなんて・・・
「レイド、私も行きたいです。ミゲル教頭、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです。実は、バイセン領で遺跡を見つけてな。あそこに魔術反射に関わるものがあると踏んでいる」
(それって・・・ インテグリーのことじゃ・・・)
バイセン領、遺跡、魔術反射・・・ 何もかもが一致している。
「その遺跡攻略にレイド君が適任と思ったのでね」
「遺跡攻略ですか・・・ それなら戦闘のプロがもっと必要ですね。兄さん、ロイクなんてどうでしょうか?」
「良いな、彼もバイセン領の人間だ」
(エレーヌ! 俺と一緒に行ったよな!)
エレーヌは全く気が付いていないようだ。
「ちょっと、わたくしも混ぜて!」
レシティアも首を突っ込んできた。
「・・・レシティア、戦えないのは知っているぞ?」
「そうですよ、箱入り娘は外に出ないのが賢明です」
「何よ! わたくしも戦おうと思ったらできるわよ!」
「レシティア君・・・ 私が、嫌だ」
「な・・・ なっ・・・」
レシティアはまさかのミゲル教頭の反撃により絶句してしまう。
「よし、数日後に行こうかね。皆さん、それまでに準備しておいて」
「「はい!」」
「ま、まって・・・」
レシティアはまたもや、一人ぼっちになってしまうのであった・・・
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