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第ニ章 運命との戦い
第三十話 二度目の死 変えた未来
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「キャキャキャ・・・ 腕が無くなった気持ちはどうだい? 体が軽くなっただろう?」
ダリラは意地悪な笑みを浮かべながらロイクを覗き込む。
「・・・君は本当におしゃべりが好きみたいだね」
ロイクも強がってみせるが、焦りの顔が隠しきれてきれていない。傷口はまだ止血できていないようだった。
「劣等種族が絶望する顔はあたいの大好物なんだ。さあ、もっと顔を歪ませておくれよ・・・」
「ギャルゥ!!」
先ほどまでロイクと戦っていた黒龍もダリラの元へ帰ってきた。
「ああ、あたいの可愛いグリム。よく頑張ったねえ。ご褒美にそいつらを食べて良いよ」
そうダリラが言うと、グリムと呼ばれた龍は嬉しそうに尻尾を振った。
(くそ! 体が、動かない・・・)
レイドは何とかして動こうとするが、闇の魔術に阻まれてしまった・・・
ロイクも後ろに飛び去り、片腕ながら抵抗しようとする。
「Ω ιερή βροντή! Μπροστά στις μεγάλες απειλές, ας επισπεύσουμε τη δύναμη που τις συντρίβει!」
彼が唱えた魔法は電撃の大型魔法。魔法陣は空へと広がり、やがてグリムに雷を直撃させた。
「ギャ・・・」
しかし、ロイクは険しい顔のままだ。
「やはり、効果がなかったか・・・」
グリムの鱗には焦げた跡ができたが、致命傷には至らなかった。
「キャキャキャ・・・ 惜しいねえ。あの魔法を体内に流すことができていたら、殺せていたと思うよ」
「く・・・」
ロイクもだんだん動きが鈍ってきた。出血多量による影響だろう・・・
彼は、未だに動かないレイドに目を向けた。
「レイド君、すまない・・・ 君をこんなことに巻き込んでしまって・・・」
後悔の言葉が滲み出る。
「あ・・・ ぅ・・・」
レイドは思うように声が出ない。
「本来ならば僕が足止めをして、君とエレーヌを逃す手筈だったが、そんな状態じゃできるはずもないか・・・」
「詰みだね、あんたたち・・・ 興ざめだ。グリム、もう食べても良いよ」
「グリュウ!」
グリムはロイクを食べまいと、近づいて大きく口を開けた。
「すまない・・・ 不甲斐ないお兄ちゃんで・・・」
「キャキャキャ・・・ 二人仲良くペロリだ!」
レイドは何か違和感に気づく。
(二人・・・? て、ことは・・・)
グリムは完全に油断していた。今は餌であるロイクにしか興味がない。そのため、飛来してくる矢に気づくことはなかった。
「グギャア!」
グリムは突然苦しみ始める。眼球に矢が命中したのだ。
「どうしたんだい! グリム!」
いきなりのことで皆の理解が追いつかない。
「へへへ・・・ ここで、カイン様の登場だぜ!」
遠くの方から現れたのは、弓を構えたカインの姿だった。
「おのれ・・・ まだ仲間が居たのか! 今殺してやる!」
ダリラはカインに近づこうとする。
「残念! 俺は囮だ。本命はあの龍だよ!」
カインは何やら細いものを持っていた。
「この銅の糸を矢に巻き付けてあるんだ。確か、鱗からじゃ電撃が通じないんだろ? じゃあ、ここを介せば、な?」
それを聞いていたロイクは即座に意図を理解した。
残る力を振り絞り、再び詠唱をはじめる。
「Ω ιερή βροντή! Μπροστά στις μεγάλες απειλές, ας επισπεύσουμε τη δύναμη που τις συντρίβει!」
「や、止めるんだ!」
「食らえ! 雷よ!」
「グリャアアアア!!! ァ・・・」
グリムは感電してしまい、致命傷を負ってしまう。さらに、雷の熱によって体に引火した。
「ガ・・・ ァ・・・」
火だるまになるグリム。
「ああ、グリム! グリムゥ!」
その間、ダリラは何もできずにただ見ることしかできなかった。
そのままグリムは激しく燃え続け、ついには動かなくなった・・・
「ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
ダリラは狂い始めた。
「貴様ぁ! 殺す! 殺してやるぅ!!」
半狂乱でカインに突撃する。ただし、カインは余裕の笑みを浮かべていた。
「残念だったな。もう、一対四だぜ」
「Ο Θεός της προστασίας! Προστατέψτε!」
突如としてカインの前に防護壁が現れる。
「何!」
ダリラの攻撃がカインに届くことは無かった。
「・・・みなさん大丈夫ですか?」
「また、厄介そうなのが増えやがった!」
カインの後ろからエレーヌがやってきた。
「あんなに屋敷の外で騒がれては、寝たくても寝ることができません。ある程度呪いを弱めることができたので、来てあげましたよ」
エレーヌはそう淡々と告げ、ダリラに杖を構える。
「クソぉ! はっ、そうだ! あいつらは!」
ダリラはロイクとレイドを人質に取ろうとしたが、すでに彼らは立ち上がっていた。
「ああ、隙だらけでしたので彼らには回復魔術をかけておきましたよ。流石に腕までは治せませんでしたが」
「・・・くぅ」
ダリラはついに追い込まれてしまった。
「さあ、反撃開始です」
ダリラは意地悪な笑みを浮かべながらロイクを覗き込む。
「・・・君は本当におしゃべりが好きみたいだね」
ロイクも強がってみせるが、焦りの顔が隠しきれてきれていない。傷口はまだ止血できていないようだった。
「劣等種族が絶望する顔はあたいの大好物なんだ。さあ、もっと顔を歪ませておくれよ・・・」
「ギャルゥ!!」
先ほどまでロイクと戦っていた黒龍もダリラの元へ帰ってきた。
「ああ、あたいの可愛いグリム。よく頑張ったねえ。ご褒美にそいつらを食べて良いよ」
そうダリラが言うと、グリムと呼ばれた龍は嬉しそうに尻尾を振った。
(くそ! 体が、動かない・・・)
レイドは何とかして動こうとするが、闇の魔術に阻まれてしまった・・・
ロイクも後ろに飛び去り、片腕ながら抵抗しようとする。
「Ω ιερή βροντή! Μπροστά στις μεγάλες απειλές, ας επισπεύσουμε τη δύναμη που τις συντρίβει!」
彼が唱えた魔法は電撃の大型魔法。魔法陣は空へと広がり、やがてグリムに雷を直撃させた。
「ギャ・・・」
しかし、ロイクは険しい顔のままだ。
「やはり、効果がなかったか・・・」
グリムの鱗には焦げた跡ができたが、致命傷には至らなかった。
「キャキャキャ・・・ 惜しいねえ。あの魔法を体内に流すことができていたら、殺せていたと思うよ」
「く・・・」
ロイクもだんだん動きが鈍ってきた。出血多量による影響だろう・・・
彼は、未だに動かないレイドに目を向けた。
「レイド君、すまない・・・ 君をこんなことに巻き込んでしまって・・・」
後悔の言葉が滲み出る。
「あ・・・ ぅ・・・」
レイドは思うように声が出ない。
「本来ならば僕が足止めをして、君とエレーヌを逃す手筈だったが、そんな状態じゃできるはずもないか・・・」
「詰みだね、あんたたち・・・ 興ざめだ。グリム、もう食べても良いよ」
「グリュウ!」
グリムはロイクを食べまいと、近づいて大きく口を開けた。
「すまない・・・ 不甲斐ないお兄ちゃんで・・・」
「キャキャキャ・・・ 二人仲良くペロリだ!」
レイドは何か違和感に気づく。
(二人・・・? て、ことは・・・)
グリムは完全に油断していた。今は餌であるロイクにしか興味がない。そのため、飛来してくる矢に気づくことはなかった。
「グギャア!」
グリムは突然苦しみ始める。眼球に矢が命中したのだ。
「どうしたんだい! グリム!」
いきなりのことで皆の理解が追いつかない。
「へへへ・・・ ここで、カイン様の登場だぜ!」
遠くの方から現れたのは、弓を構えたカインの姿だった。
「おのれ・・・ まだ仲間が居たのか! 今殺してやる!」
ダリラはカインに近づこうとする。
「残念! 俺は囮だ。本命はあの龍だよ!」
カインは何やら細いものを持っていた。
「この銅の糸を矢に巻き付けてあるんだ。確か、鱗からじゃ電撃が通じないんだろ? じゃあ、ここを介せば、な?」
それを聞いていたロイクは即座に意図を理解した。
残る力を振り絞り、再び詠唱をはじめる。
「Ω ιερή βροντή! Μπροστά στις μεγάλες απειλές, ας επισπεύσουμε τη δύναμη που τις συντρίβει!」
「や、止めるんだ!」
「食らえ! 雷よ!」
「グリャアアアア!!! ァ・・・」
グリムは感電してしまい、致命傷を負ってしまう。さらに、雷の熱によって体に引火した。
「ガ・・・ ァ・・・」
火だるまになるグリム。
「ああ、グリム! グリムゥ!」
その間、ダリラは何もできずにただ見ることしかできなかった。
そのままグリムは激しく燃え続け、ついには動かなくなった・・・
「ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
ダリラは狂い始めた。
「貴様ぁ! 殺す! 殺してやるぅ!!」
半狂乱でカインに突撃する。ただし、カインは余裕の笑みを浮かべていた。
「残念だったな。もう、一対四だぜ」
「Ο Θεός της προστασίας! Προστατέψτε!」
突如としてカインの前に防護壁が現れる。
「何!」
ダリラの攻撃がカインに届くことは無かった。
「・・・みなさん大丈夫ですか?」
「また、厄介そうなのが増えやがった!」
カインの後ろからエレーヌがやってきた。
「あんなに屋敷の外で騒がれては、寝たくても寝ることができません。ある程度呪いを弱めることができたので、来てあげましたよ」
エレーヌはそう淡々と告げ、ダリラに杖を構える。
「クソぉ! はっ、そうだ! あいつらは!」
ダリラはロイクとレイドを人質に取ろうとしたが、すでに彼らは立ち上がっていた。
「ああ、隙だらけでしたので彼らには回復魔術をかけておきましたよ。流石に腕までは治せませんでしたが」
「・・・くぅ」
ダリラはついに追い込まれてしまった。
「さあ、反撃開始です」
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