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第ニ章 運命との戦い
第二十五話 襲撃
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「どうしたんだ! エレーヌ!」
ロイクが今まで見た中で一番険しい顔で駆け寄る。
「兄・・・ さん・・・」
エレーヌは虚ろな目でロイクを見つめる。
「すみません・・・ 私としたことが・・・ 呪術の類を受けたようです・・・」
「何! 呪術だと!」
エレーヌは左腕を見せる。そこには、何やら見たことのある魔法陣が刻み込まれていた・・・
(・・・! あれは、リヨンでの・・・)
レイドは気づいてしまった。あれは、リヨン見た男に刻まれていた魔法陣と全く同じであることを・・・
「レイド様よ・・・! これは、リヨンの・・・」
カインも気づいたようだ。
「リヨン・・・? まさか、エレーヌは"黒き人”になってしまうとでもいうのか!?」
「いいえ、まだ分かりません。実際にリヨンで見た人も完全に侵食されていたわけではありませんから・・・」
「私も呪術に・・・ 抵抗してはいますが・・・ かなり強力な物のようです・・・」
エレーヌは途絶え途絶えに話す。非常に顔色が悪い。相当苦しんでいるようだ・・・
「・・・エレーヌ、状況は理解した。今は呪術の抵抗に専念しなさい。後で、専門家を呼んでこよう」
ラジはようやく口を開いた。顔には怒りの感情が浮かび上がっている。
そのまま、エレーヌは使用人たちに連れられ、部屋に戻ってしまった。
レイドたちがいる場には、重い空気が流れている・・・
「クソッ! どこで呪術の侵入を許したんだ・・・ 僕が、僕がもっとしっかりしていれば・・・!」
「・・・ロイク、後悔しても仕方がない。とうとう、"奴ら”がバイセン家に戦いを挑んできたか・・・!」
「父上・・・」
ラジとロイクは怒りを露わにし、ソニアはただ泣いている。
そこに、さらなる悪い知らせが入ってくる。
「ラジ様! 緊急の知らせです!」
使用人が焦りながらこちらへ向かってきた。
「今度はどうしたんだ!」
「はっ! 空を哨戒している魔導士からの連絡です! アミアン北西部の森から、多数の"黒き獣”がこちらへ向かって来ているとのことです!」
「何! 多数とはいくらぐらいだ!」
「・・・およそ1000匹とのことです。奇妙なことに、非常に統率がとれた動きをしているとか・・・」
「こんなに早く来たか・・・」
ラジは明らかに動揺していた。
だが、さすがは歴戦の戦士。彼の下す決断は非常に早かった。
「よし! アミアン全地区で警鐘を鳴らせ! 非戦闘員の避難と、街中の戦士たちを招集するんだ!」
「はっ! 了解しました!」
そうして使用人は急ぎ足で屋敷から出て行った。
「ロイク! お前はレイド君とカインで一緒にこの家を守るんだ!」
「分かりました、父上。エレーヌに近づく敵どもを殲滅して見せましょう!」
ロイクは胸を張って答えた。
ラジはレイドの方を向いた。
「レイド君、カイン。いきなりですまないが、君たちも戦う必要がありそうだ・・・」
レイドとカインは無言でうなづいた。二人とも覚悟はできているようだ。
「・・・ありがとう。諸君の健闘を祈る。それでは、出陣だ!」
「「「おう!」」」
(今度こそ・・・ 生き残ってみせるんだ!)
レイドの運命は、これで、決まる・・・!
同刻、アミアン中心部にて
「敵襲、敵襲だあ!!」
アミアンの街に警鐘が響き渡る。
「なにごとだよ・・・」
「敵襲って、この街にか? ガハハ! とんだバカがいたもんだぜ」
街の人たちは何か抜けたような感じがする。
「"黒き獣”の大群がこちらへ接近中! 非戦闘員は直ちに避難せよ! くり返す! "黒き獣”の・・・」
"黒き獣”という単語を聞いた途端、街の人たちの反応ががらりと変わった。
「"黒き獣”だとっ! なんてことだ・・・! おい、どうするよ!」
「こうしちゃいられねえ、早く安全な所へ逃げるぞ!」
アミアンの民の反応は様々だ。立ち向かおうと戦う準備をする者、できるだけ早く逃げようとする者、神に懺悔する者・・・
そんな混乱する人たちに、話しかける者がいた。
「アミアンの戦士たちよ! 私の話を聞いてくれ!」
街の中心部に響き渡る図太い声、そう、ラジだ。
彼は建物の屋根に戦斧を持ちながら立っていた。
「私の名はラジ・バイセンだ! 諸君は今、この知らせを受けてどう思っただろうか・・・ 恐らく大半の者は戦いたくないと思っただろう・・・」
街の人たちは彼を見て途端に静かになった。
彼は続けて話す。
「だが! 良く考えてみよ! わざわざ魔獣がこちらに近づいてくる状況・・・ 今こそ稼ぎ時とは思わないかね?」
「"黒き獣”と戦う者には褒賞を与えよう! それに加えて、奴らは燃料として高額で売れる! アミアンの戦士ならば、これを逃す機会は無いだろう?」
「・・・いいぞ! 俺らにはあの化け物がついているんだ!」
「これで当分の酒代が稼げるやもしれんなあ・・・」
最初は逃げようとする声も多かったが、徐々に賛同の声が聞こえてきた。
さらに、ラジは畳みかけるようにこう話す。
「戦うんだ! 勇敢な戦士たちよ! 魔獣どもにこの街を奪われてたまるものか! 私が、先陣を切る! 付いてくるものはいるか!」
「「「おうっ!」」」
アミアンの戦士たちは一斉に返事をする。金のためであろうと、この街を愛する気持ちは変わらない。
「行くぞ! アミアンを、守るんだ!」
ラジはそう言って戦斧を高々と上げた。
ロイクが今まで見た中で一番険しい顔で駆け寄る。
「兄・・・ さん・・・」
エレーヌは虚ろな目でロイクを見つめる。
「すみません・・・ 私としたことが・・・ 呪術の類を受けたようです・・・」
「何! 呪術だと!」
エレーヌは左腕を見せる。そこには、何やら見たことのある魔法陣が刻み込まれていた・・・
(・・・! あれは、リヨンでの・・・)
レイドは気づいてしまった。あれは、リヨン見た男に刻まれていた魔法陣と全く同じであることを・・・
「レイド様よ・・・! これは、リヨンの・・・」
カインも気づいたようだ。
「リヨン・・・? まさか、エレーヌは"黒き人”になってしまうとでもいうのか!?」
「いいえ、まだ分かりません。実際にリヨンで見た人も完全に侵食されていたわけではありませんから・・・」
「私も呪術に・・・ 抵抗してはいますが・・・ かなり強力な物のようです・・・」
エレーヌは途絶え途絶えに話す。非常に顔色が悪い。相当苦しんでいるようだ・・・
「・・・エレーヌ、状況は理解した。今は呪術の抵抗に専念しなさい。後で、専門家を呼んでこよう」
ラジはようやく口を開いた。顔には怒りの感情が浮かび上がっている。
そのまま、エレーヌは使用人たちに連れられ、部屋に戻ってしまった。
レイドたちがいる場には、重い空気が流れている・・・
「クソッ! どこで呪術の侵入を許したんだ・・・ 僕が、僕がもっとしっかりしていれば・・・!」
「・・・ロイク、後悔しても仕方がない。とうとう、"奴ら”がバイセン家に戦いを挑んできたか・・・!」
「父上・・・」
ラジとロイクは怒りを露わにし、ソニアはただ泣いている。
そこに、さらなる悪い知らせが入ってくる。
「ラジ様! 緊急の知らせです!」
使用人が焦りながらこちらへ向かってきた。
「今度はどうしたんだ!」
「はっ! 空を哨戒している魔導士からの連絡です! アミアン北西部の森から、多数の"黒き獣”がこちらへ向かって来ているとのことです!」
「何! 多数とはいくらぐらいだ!」
「・・・およそ1000匹とのことです。奇妙なことに、非常に統率がとれた動きをしているとか・・・」
「こんなに早く来たか・・・」
ラジは明らかに動揺していた。
だが、さすがは歴戦の戦士。彼の下す決断は非常に早かった。
「よし! アミアン全地区で警鐘を鳴らせ! 非戦闘員の避難と、街中の戦士たちを招集するんだ!」
「はっ! 了解しました!」
そうして使用人は急ぎ足で屋敷から出て行った。
「ロイク! お前はレイド君とカインで一緒にこの家を守るんだ!」
「分かりました、父上。エレーヌに近づく敵どもを殲滅して見せましょう!」
ロイクは胸を張って答えた。
ラジはレイドの方を向いた。
「レイド君、カイン。いきなりですまないが、君たちも戦う必要がありそうだ・・・」
レイドとカインは無言でうなづいた。二人とも覚悟はできているようだ。
「・・・ありがとう。諸君の健闘を祈る。それでは、出陣だ!」
「「「おう!」」」
(今度こそ・・・ 生き残ってみせるんだ!)
レイドの運命は、これで、決まる・・・!
同刻、アミアン中心部にて
「敵襲、敵襲だあ!!」
アミアンの街に警鐘が響き渡る。
「なにごとだよ・・・」
「敵襲って、この街にか? ガハハ! とんだバカがいたもんだぜ」
街の人たちは何か抜けたような感じがする。
「"黒き獣”の大群がこちらへ接近中! 非戦闘員は直ちに避難せよ! くり返す! "黒き獣”の・・・」
"黒き獣”という単語を聞いた途端、街の人たちの反応ががらりと変わった。
「"黒き獣”だとっ! なんてことだ・・・! おい、どうするよ!」
「こうしちゃいられねえ、早く安全な所へ逃げるぞ!」
アミアンの民の反応は様々だ。立ち向かおうと戦う準備をする者、できるだけ早く逃げようとする者、神に懺悔する者・・・
そんな混乱する人たちに、話しかける者がいた。
「アミアンの戦士たちよ! 私の話を聞いてくれ!」
街の中心部に響き渡る図太い声、そう、ラジだ。
彼は建物の屋根に戦斧を持ちながら立っていた。
「私の名はラジ・バイセンだ! 諸君は今、この知らせを受けてどう思っただろうか・・・ 恐らく大半の者は戦いたくないと思っただろう・・・」
街の人たちは彼を見て途端に静かになった。
彼は続けて話す。
「だが! 良く考えてみよ! わざわざ魔獣がこちらに近づいてくる状況・・・ 今こそ稼ぎ時とは思わないかね?」
「"黒き獣”と戦う者には褒賞を与えよう! それに加えて、奴らは燃料として高額で売れる! アミアンの戦士ならば、これを逃す機会は無いだろう?」
「・・・いいぞ! 俺らにはあの化け物がついているんだ!」
「これで当分の酒代が稼げるやもしれんなあ・・・」
最初は逃げようとする声も多かったが、徐々に賛同の声が聞こえてきた。
さらに、ラジは畳みかけるようにこう話す。
「戦うんだ! 勇敢な戦士たちよ! 魔獣どもにこの街を奪われてたまるものか! 私が、先陣を切る! 付いてくるものはいるか!」
「「「おうっ!」」」
アミアンの戦士たちは一斉に返事をする。金のためであろうと、この街を愛する気持ちは変わらない。
「行くぞ! アミアンを、守るんだ!」
ラジはそう言って戦斧を高々と上げた。
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