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第ニ章 運命との戦い

第二十二話 ソニアの本性

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 レイドとエレーヌはバイセン家に帰還した。
 エレーヌはレイドに怒り心頭なようで、先ほどから口を利いてくれない・・・

「ああ、どうしよう・・・」
 レイドが頭を抱えて悩んでいると、ロイクがこちらに近づいてきた。

「いったいどうしたんだよ~ レイド君?」
 顔で分かる。今のロイクは満面の笑みを隠せずにいる。

「そうかそうか~ エレーヌと喧嘩しちゃったのか~ まあ仕方ないねえ」
(分かっているじゃないか!)
「・・・ほっといてくださいよ、どうすれば良いか分からないんです」
「僕が話を聞いてあげようか~?」

 いやだめだ。こいつは妹に関しては一番信用が出来ない。
 他の信頼できる人は・・・ おっと、あいつがいるじゃないか。

「いえ、結構です。それより、カインはどこにいますか?」
「つれないなあ。僕の方がエレーヌとの付き合いは長いのに・・・」
「結構です!」
(こいつめ・・・ ああ、もう!)

 ロイクの追及は終わらない。こいつに何を言っても同じことを繰り返されるだけだろう・・・
 レイドは早急にロイクのもとから離れることにした。
「ああ~ 待ってよ~ レイド君~」

(消えろ!)
 レイドは全力疾走で屋敷の中に入った。
 カインを探し始めるが、やはりいない・・・

 しばらく屋敷内を歩いていると、エレーヌの母、ソニアとすれ違った。

「あらあら~ レイド君じゃないの~」
 ソニアは相変わらずのニコニコ顔で話しかけてくる。
「あ、ソニアさん・・・ こんにちは」
「初めての実践経験お疲れ様ね~ ・・・エレーヌが何も言わずに部屋に閉じこもってしまったの。 何かあったのかしら~」

「はい、まあ・・・」
「・・・詳しく話してくれるかしら?」
 ソニアが真剣な眼差しでこちらを見てくる。どうやら逃がす気は無いらしい・・・

「・・・実は」
 レイドがことの顛末を話す。ジャイアントベアのことや、遺跡のことなど・・・
「ということがありまして・・・」

 ソニアは相変わらずニコニコしたままだ。
「あら~ そんなことがあったの~」
「はい・・・」

 急にソニアの雰囲気がどす黒いものになる。
「レイド君? 貴方は・・・ エレーヌが貴方のことを、心配してくれていたことを分かっているかしら?」
「え、ええ・・・ もちろん・・・」

「男の変なプライドかどうか分からないけど・・・ エレーヌは貴方よりはるかに強いのも分かっているわね? そして、貴方の護衛としてレイドに付いていたことも・・・」
「は、はい・・・」

「じゃあおとなしく従っておきなさいよ! エレーヌの信頼を傷つけるとかどういう神経してんだよ!」
「ぐはぁ!」
 ソニアから突然の膝蹴りを食らう。全く反応できなかった・・・
 内臓が潰れたかもしれない・・・

「いいわね? 今すぐどんな手段を使ってでも、許してもらうまで誠心誠意謝ることよ! それ以外の選択肢は認めないわ!」
「ぅ・・・ はぃ・・・」
 レイドは声を振り絞ってそう言った。

 ソニアはいつもの表情に戻る。
「そうそう。それじゃあレイド君、またね~」
 そうして彼女は行ってしまった・・・

 しばらく廊下にうずくまっていると、ラジがやってきた。
「レイド君? どうしたんだ?」
「ラジ・・・ さん。ソ、ソニアさんに・・・」

 ラジはある程度把握したようだ。
「そうか・・・ ソニアは、怒ると怖いんだ・・・ ものすごく気持ちは分かる」
「そ、そうですか・・・」
「ま、まあ・・・ 大変だとは思うが、強く生きるんだぞ?」

 そして、ラジは後味悪そうにその場を去ってしまった。
(どうすれば、エレーヌと会えるだろうか・・・)

 部屋に籠りきりでは、思うように会うことが出来ない。
(こういう時こそ、カインに聞いてみるか・・・)

 レイドは何とか立ち上がり、カインを再び探し始める。
 厨房に立ち寄ってみたところ、ちょうどカインが裏口から帰ってきたところだった。

「おっす、レイド様。どうしたんだ? そんなに顔を悪くして」
「ああ、カイン。実はな・・・」
 カインにもことの顛末を話す。

「ぎゃはははははは!!!! バッカじゃねえの! いくら婚約者の前だからと見栄を張ってさ!」
「くっ・・・ そして、どうやって謝ればよいか分からないんだ・・・」

 カインは笑うのを止めて、しばらく悩み始める。
「・・・じゃあさ、一旦覗いてみるか?」
「覗くって、何を?」
「もちろん、エレーヌの部屋だよ」

「はあ? 第一、どうやって?」
「俺はな、ロイクの兄貴から弓の扱い方を学んでいるんだよ。それの一環で偵察もできるのさ」
「何? こんな一瞬で?」

「まあ、俺には才能があるんじゃないか?」
 カインはまんざらでもない顔をしている。

(本当にできるのか・・・?)
 カインの言っていることについては半信半疑だが、今はそれにすがるしかない。
 レイドはカインの提案を呑むことにした。

「おっしゃ、じゃあ今すぐに行こうぜ」
「お、おう・・・」
 そして、レイドとカインは庭に出たのだった・・・
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