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第2部 魔法学校編

39 魔法学校の新入生

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 魔法学校の入学式が始まる。貴族も平民も、魔力を持つ者は14歳から16歳までの2年間、この場所で魔法を学び、杖を授けられる。

 豪華な馬車が玄関ホールに止まった。門の中まで馬車を乗り付けることができるのは、上級貴族でも限られた者だけだ。
 どこの大貴族が来たのかと、生徒たちは注目する。

 初めに降りて来たのは、この国の宰相、ハロルド・ゴールドウィン公爵。そして、彼が差し出した手につかまり、馬車から降り立ったのは、きらきらした金色の髪をハーフアップにした背の低い少女。鮮やかな紫色の瞳をした宰相の養女だった。

「見て、レティシア様よ。王太子様の婚約者候補の」

「まあ、綺麗だけど、なんだか地味なお顔の方ね。同じ婚約者候補でも、優美なベアトリス様や華やかなスカラ様と比べて、目立たないわ」

「でも、紫眼よ。とても綺麗な紫の瞳。それに、顔立ちは国王陛下に似てるわ」

「ゴールドウィン家は王族と血のつながりが深いもの。それで、王太后様が彼女を推してるんでしょう?」

「でも、王太子様からは、嫌われているらしいわよ」

 女子生徒たちは、こっそりと新入生を批評している。

 男子生徒たちも。

「そんなに悪くないんじゃないか? 紫眼だけが取り柄の、凡庸な婚約者候補だなんて言われてるけど、顔立ちは昔の聖女の肖像画にそっくりだよな」

「いや、描き直された新しい聖女の絵の方が、本当は正しいっていわれてるぞ。紫眼も本当は赤に近い色だったって。王女様の方が聖女に似ているそうだ」

「それなら、彼女を婚約者にする必要ないんじゃないか? 王女様がいれば紫眼にこだわらなくても」

「まあ、どっちにしろ、今年の学園は荒れるな。王太子様に婚約者候補が3人。勢力争いに巻き込まれないようにしないとな」

「王太后様はレティシア様を推してるけど、王妃様はベアトリス様派だろ。スカラ様の後ろ盾は?」

「それが陛下だよ。王家に勇者の血を取り入れたらどうかと言われて。今までこんなことはなかったのに……」

 男子生徒も好き勝手に評価している。



◇◇◇◇◇◇◇

 先輩方、全部聞こえてますよ。

 私、レティシアは伯父のエスコートをうけながら、周囲を取り巻く生徒たちのうわさ話を聞かなかったふりをして、学校に入った。

「だいじょうぶか?」

 緊張して顔が固まっている私に、伯父様は心配そうな顔をした。

「平気です。だって、あんなにも勉強したんだから」

 ああ、本当に、しんどかった。

 あれから、私は公爵家の養女になった。
 そして、王太子の婚約者候補にも。

 もちろん、嫌だったよ。だって、気持ち悪いもん。異母弟と婚約だなんて正気じゃない!

 でも、私が紫眼ってことと、上級の契約獣を得たことから、王太后が「絶対に婚約させる」って言い張って。

 それで、いろいろあって、仕方なく……。

 まあ、ただの候補だし、私以外にあと2人も候補がいるし、王太子は私のことを嫌ってるし、私も大っ嫌いだけどね。万が一、結婚なんて最悪なことになった時は、ルシルがどうにかしてくれるって。

 だから、仕方なく婚約者候補になった。恐れていた王太子妃教育も、公爵家の方で手配してもらって、王宮には行かないようにした。
 それから、婚約者候補の特権で、父様が全てのダンジョンに入れる許可を得た。
 これが重要。

 勇者の遺産を探すのはあきらめてないよ。リョウ君の復讐と並行して、勇者の遺産も探す。16歳で成人するまでに、この二つを終わらせて、そして、財宝を手にこの国を出て行くの。
 それが、今の私の目標。

 今までの進捗情報?

 それがね、この8年間は本当に大変で……。
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