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第1部 貴族学園編
1 プロローグ
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私の生みの母はね、王太子と政略結婚したの。王太子には恋人がいたんだけど、国王の命令だから仕方なくてね。
でもね、結婚式の次の日、なんと、国王が突然死んじゃった。それで王太子は、「やっぱり恋人を王妃にする!」って言い出したの。
で、やっちゃった初夜をなかったことにするために神官を買収して、即位式で「白い結婚だから婚姻は無効だ!」って宣言したんだって。
だから、王宮から追い出された母が、子供を生んでたとしても、それは王の子じゃない。絶対にね。
「つまり、私は王女じゃない。だから、契約者にはなれないのよ。わかった?」
私は目の前に浮かんでいる銀色の精霊に、ビシッと小さい指をつきつけた。
美貌の精霊は首をかしげて、困ったような顔をして私を見つめた。
「でも、君はリシアと同じで、僕の契約者だよ」
「だから、違うって言ってるのにー!」
私は、キラキラ光る銀色の精霊を見上げて、言い張った。
「私は、王家に誕生すると予言された、聖女リシアの生まれ変わりなんかじゃないんだってば! 私は、前世で日本人だった記憶があるだけの、ただの男爵令嬢なの!」
大声で叫んで、ぜーはーと息を吐いた。精霊は私の頭の上にポンと手を置いて、長い足を曲げてしゃがみこんだ。
「かわいい! すっごくかわいい。いっぱい鳴いてる!」
小動物に向けるような眼差しで微笑んで、精霊は私の頭をなでまわした。そのまま、私を抱っこしようと腕を伸ばしてくる。バタバタ暴れて逃げたけど、子供の短い手足では抵抗できない。背の高い精霊にすぐに捕まってしまった。
「もう、放してったら! 契約したいんなら、王宮に王女様がいるよ! 真実の愛の相手から生まれた本物の王女様だよ。私は平民になるの! 王族とは関わりたくないんだから!」
「うーん。いい匂い。リシアと同じ匂いだ。僕の契約者」
美貌の精霊は私の首筋に顔を近づけて匂いをかいだ。ひーん。幼児の匂いを嗅ぐ変質者! たとえ、それが、予言された光の精霊王だとしても!
「やだぁ。放して!」
半泣きになる私に救い主が現れた。
「姉さま! 姉さまを放して! 姉さま!」
弟のリョウ君だ。魔力酔いでぐったり倒れこんでいた双子の弟は、果敢にも起き上がり、私を抱き上げる精霊をぽかぽかとたたいた。
「リョウ君! 姉さまは大丈夫だからね。この精霊は間違って来ただけだから、すぐに追い返すから。もう、だからっ、放してってば!」
弟をなだめつつ、思いっきり精霊の足を蹴りつけると、ようやく、私は床におろされた。精霊は私に蹴られた足を全く気にせずに、リョウ君の方に近づくと、観察するように頭から足先までじろじろ見た。
「君が僕の契約者の、弟? でも……。その色合いはリシアと同じだけど、なぜ……?」
さすが、精霊。見ただけで血縁関係が分かるの?
リョウ君は私の双子の弟ということになっているけど、実際は従弟だ。私の実母の兄である元公爵家次男の息子。ゴールドウィン公爵家は王族とも血縁関係がある。
「ああ、なるほどそういうことなのかな? 闇の……。もう行くよ。予言の王女よ。僕の名前はルシル・ルーン・ルクス。君の契約者だよ。ちゃんと覚えてね」
銀色に光る精霊は、私の手を取って口づけすると、現れた時と同じように光りながら消えた。
私は、顔色の悪い弟をなだめながら、精霊に口づけられた手をワンピースの裾でごしごしこすった。
光の精霊王は絵本で見るよりも、はるかに美しい存在だったけど、私の前に現れた痕跡は消し去らないといけない。
異世界転生して、今度こそは普通に長生きするっていう私の夢を邪魔する存在なんていらない。
ただでさえ、ややこしい生まれなのに……。
私はただ、かわいい弟と一緒に、平凡なほのぼの転生ライフを送りたいだけなの!
それなのに、なんで、こんなことになったの?!
始まりは、5歳の春だった。
でもね、結婚式の次の日、なんと、国王が突然死んじゃった。それで王太子は、「やっぱり恋人を王妃にする!」って言い出したの。
で、やっちゃった初夜をなかったことにするために神官を買収して、即位式で「白い結婚だから婚姻は無効だ!」って宣言したんだって。
だから、王宮から追い出された母が、子供を生んでたとしても、それは王の子じゃない。絶対にね。
「つまり、私は王女じゃない。だから、契約者にはなれないのよ。わかった?」
私は目の前に浮かんでいる銀色の精霊に、ビシッと小さい指をつきつけた。
美貌の精霊は首をかしげて、困ったような顔をして私を見つめた。
「でも、君はリシアと同じで、僕の契約者だよ」
「だから、違うって言ってるのにー!」
私は、キラキラ光る銀色の精霊を見上げて、言い張った。
「私は、王家に誕生すると予言された、聖女リシアの生まれ変わりなんかじゃないんだってば! 私は、前世で日本人だった記憶があるだけの、ただの男爵令嬢なの!」
大声で叫んで、ぜーはーと息を吐いた。精霊は私の頭の上にポンと手を置いて、長い足を曲げてしゃがみこんだ。
「かわいい! すっごくかわいい。いっぱい鳴いてる!」
小動物に向けるような眼差しで微笑んで、精霊は私の頭をなでまわした。そのまま、私を抱っこしようと腕を伸ばしてくる。バタバタ暴れて逃げたけど、子供の短い手足では抵抗できない。背の高い精霊にすぐに捕まってしまった。
「もう、放してったら! 契約したいんなら、王宮に王女様がいるよ! 真実の愛の相手から生まれた本物の王女様だよ。私は平民になるの! 王族とは関わりたくないんだから!」
「うーん。いい匂い。リシアと同じ匂いだ。僕の契約者」
美貌の精霊は私の首筋に顔を近づけて匂いをかいだ。ひーん。幼児の匂いを嗅ぐ変質者! たとえ、それが、予言された光の精霊王だとしても!
「やだぁ。放して!」
半泣きになる私に救い主が現れた。
「姉さま! 姉さまを放して! 姉さま!」
弟のリョウ君だ。魔力酔いでぐったり倒れこんでいた双子の弟は、果敢にも起き上がり、私を抱き上げる精霊をぽかぽかとたたいた。
「リョウ君! 姉さまは大丈夫だからね。この精霊は間違って来ただけだから、すぐに追い返すから。もう、だからっ、放してってば!」
弟をなだめつつ、思いっきり精霊の足を蹴りつけると、ようやく、私は床におろされた。精霊は私に蹴られた足を全く気にせずに、リョウ君の方に近づくと、観察するように頭から足先までじろじろ見た。
「君が僕の契約者の、弟? でも……。その色合いはリシアと同じだけど、なぜ……?」
さすが、精霊。見ただけで血縁関係が分かるの?
リョウ君は私の双子の弟ということになっているけど、実際は従弟だ。私の実母の兄である元公爵家次男の息子。ゴールドウィン公爵家は王族とも血縁関係がある。
「ああ、なるほどそういうことなのかな? 闇の……。もう行くよ。予言の王女よ。僕の名前はルシル・ルーン・ルクス。君の契約者だよ。ちゃんと覚えてね」
銀色に光る精霊は、私の手を取って口づけすると、現れた時と同じように光りながら消えた。
私は、顔色の悪い弟をなだめながら、精霊に口づけられた手をワンピースの裾でごしごしこすった。
光の精霊王は絵本で見るよりも、はるかに美しい存在だったけど、私の前に現れた痕跡は消し去らないといけない。
異世界転生して、今度こそは普通に長生きするっていう私の夢を邪魔する存在なんていらない。
ただでさえ、ややこしい生まれなのに……。
私はただ、かわいい弟と一緒に、平凡なほのぼの転生ライフを送りたいだけなの!
それなのに、なんで、こんなことになったの?!
始まりは、5歳の春だった。
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