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第76話 ニョッキたっぷりミネストローネ

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 ミネストローネといえばトマトベースの野菜スープを連想する人が多いかもしれないが、今回作るミネストローネはちょっと違う。
 アクセントとしてニョッキを入れようと思っている。ニョッキはこの世界にない料理だから、皆に珍しいスープに思ってもらえるだろう。
 まずはニョッキ作りからだ。
 ジャガイモを鍋に入れてふかし、熱いうちによく潰す。
 小麦粉と塩を加え、粉っぽさがなくなるまでよく捏ねる。
 生地がまとまったら小さくちぎって丸め、フォークで軽く潰すように押さえる。
 湯を沸かし、沸騰したらニョッキを入れて茹でる。浮き上がってきたら茹で上がりだ。
 できたものはざるに上げて寄せておく。
 次に、ベースとなるスープ作り。
 ジャガイモ、人参、玉葱、キャベツ、ベーコンを切っていく。キャベツは大きめのざく切りに、他の材料は一センチ角に切る。
 鍋に油をひいてみじん切りにしたにんにくを入れて、香りが立つまで炒める。香りが立ったらベーコンを加える。
 ベーコンに熱が通ったらジャガイモ、玉葱、人参を加える。玉葱が少し透き通るまで炒めていく。
 野菜を炒めたら水とコンソメを加えて煮る。キャベツはこの時加えるぞ。
 十五分くらい煮たら、トマトの水煮を加えて更に煮込む。灰汁が出たら丁寧に取り除き、塩と胡椒を加える。
 最後にニョッキを加えて軽く混ぜたら器によそい、チーズを掛けて細かくしたパセリを散らし、出来上がりだ。
 今回は省略したが、レッドペッパーを入れるとピリ辛になる。その辺は食べる人のことを考えて入れるかどうかを決めてほしい。
 辛いのはフランシスカが苦手なんじゃないかって思ったんだよな。俺は辛い方が好みだが。
「リベロ、これにも保温魔法を頼む」
「いいよー」
 保温魔法を掛けてもらって、ワゴンに載せたら会場に運ぶ準備は完了だ。
 今回は特別な席に料理を出すということもあって、会場に料理を運ぶ役割は料理長であるシーグレットが担っている。
 出した料理の説明をしたりと、単に料理を運ぶだけではなく特別な役割があるからだ。
 が……
「なあ、シーグレット。料理運びの役目、俺にやらせてもらえないか」
「は?」
 シーグレットの片眉が跳ねた。
「国政と言っても過言じゃねぇ会だぞ。そんなの許されるわけがねぇだろが」
「頼む」
 俺はシーグレットの顔をまっすぐ見据え、言った。
 ここで目を逸らしたら駄目だ。
「俺はこの晩餐会が成功するかどうか見届けなくちゃならないんだ」
「…………」
 シーグレットの鋭い視線が俺に浴びせられる。
 沈黙が怖い。
 でも、俺は何が何でも晩餐会の行く末を見届けなければならないのだ。
 人間と、魔族が手を取り合う瞬間を──
 この目で見る必要があるのだ。勇者として。
 しばしの沈黙の後、シーグレットが開口した。
「……単なるお祭り根性で言ってるわけじゃねぇんだよな?」
「ああ」
「……分かった。この料理を作ったのはお前だ、来賓に粗相がないように、しっかりと務めてみせろ」
 ただし、と彼は付け加えた。
「オレも料理長として同行する。元々決まってたことだからな、それだけは変えるわけにはいかねぇ」
「それは構わない。ありがとう」
 俺は頭を下げた。
 いよいよだと思うと、自然と全身に力が入る。
 さあ、世界の命運を決めるパーティーの始まりだ。
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