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第23話 風が吹いた日
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しゃく、しゃく。
首を伸ばして神果を食べるアースの甲羅を撫でながら、僕は指南書を読んでいた。
読んでいるのは、交配に関するページだ。
エルの交配……交配の意味は分かるが、エルたちを見ていてもいまいち交配する時のイメージが湧かないのである。
だって、交配って要は交尾のことでしょ?
同じエルであっても種類が違うもの同士が結婚して卵を産むって、できるのかなぁって思うのだ。
体の大きさだって違うし。
疑問に思ったのでこうして指南書を読んでいるのだが、指南書には違う種類同士のエルの交配に関することは書いていなかった。
交配は、大人のエル同士で行う。休息地に交配させたいエルを連れて行き、一緒にしてしばらく様子を見る。早ければ約一日ほどで、卵が産まれる。
これだけなのである。交配に関して書いてあることは。
エルは神様だから普通の生き物とは体の構造が違うから問題ないとか、そういうことなのだろうか。
まだまだ、エルに関しては分からないことが多いな。
「キラー」
僕が指南書を閉じると同時に、外に行っていたメネが戻ってきた。
「土の牧場、できたよー」
「あ、本当?」
僕は指南書をテーブルに置いて立ち上がった。
床に直に座ってたからちょっぴりお尻が痛い。
神果を食べ終えたアースを抱き上げて、顔を覗き込む。
「良かったね。お前の住む場所ができたって」
アースは僕の言葉が分かっているのかいないのか、微妙に首を引っ込めてこちらのことをじっと見つめている。
「早速その子を放しに行くでしょ?」
「うん」
外に出ていくメネに続く形で、僕はアースと共に家を出た。
土の牧場は、大きな岩がごろごろとした岩場のような作りをしていた。
地面は砂混じりの赤土で、草は一切生えていない。
外国の秘境とかにある崖とか、そんな場所を彷彿とさせる景色だ。
見た目は生き物が暮らすのに適さなさそうな場所だけど、土の魔力が満ちているからエルにとっては暮らしやすいんだろうね。
早速、僕はアースを土の牧場に放した。
アースはしばらく手足を引っ込めていたが、危険がないことが分かったのか、ゆっくりと赤土の上を歩き始めた。
乾いたそよ風が、アースを後押しするように吹いていく。
あ、とメネが声を上げた。
「今、風が吹いたよね」
「吹いたね」
「もう、何そんな暢気な顔してるの!」
メネは僕の顔の前まで飛んでくると、胸の前で拳を作りながら笑顔で言った。
「風が吹いたってことは、世界に風の力が戻ってきたってことなんだよ!」
「え、そうなの?」
「そうなの!」
メロンから生まれた風の精霊が、世界を少しずつ蘇らせ始めてるってことか。
風のエルはメロン一匹だけなのに、世界にとってはこれだけの影響力があるんだな。
エルが世界に与える影響力って凄いんだな。
「この調子でエルが増えれば、世界も元通りになるよ! 頑張ろうね!」
また風が吹いた。
からからに乾いたそよ風ではあるけれど、今の僕たちにとっては心地良い風に感じられた。
この調子で、世界を蘇らせていくぞ。頑張ろう。
首を伸ばして神果を食べるアースの甲羅を撫でながら、僕は指南書を読んでいた。
読んでいるのは、交配に関するページだ。
エルの交配……交配の意味は分かるが、エルたちを見ていてもいまいち交配する時のイメージが湧かないのである。
だって、交配って要は交尾のことでしょ?
同じエルであっても種類が違うもの同士が結婚して卵を産むって、できるのかなぁって思うのだ。
体の大きさだって違うし。
疑問に思ったのでこうして指南書を読んでいるのだが、指南書には違う種類同士のエルの交配に関することは書いていなかった。
交配は、大人のエル同士で行う。休息地に交配させたいエルを連れて行き、一緒にしてしばらく様子を見る。早ければ約一日ほどで、卵が産まれる。
これだけなのである。交配に関して書いてあることは。
エルは神様だから普通の生き物とは体の構造が違うから問題ないとか、そういうことなのだろうか。
まだまだ、エルに関しては分からないことが多いな。
「キラー」
僕が指南書を閉じると同時に、外に行っていたメネが戻ってきた。
「土の牧場、できたよー」
「あ、本当?」
僕は指南書をテーブルに置いて立ち上がった。
床に直に座ってたからちょっぴりお尻が痛い。
神果を食べ終えたアースを抱き上げて、顔を覗き込む。
「良かったね。お前の住む場所ができたって」
アースは僕の言葉が分かっているのかいないのか、微妙に首を引っ込めてこちらのことをじっと見つめている。
「早速その子を放しに行くでしょ?」
「うん」
外に出ていくメネに続く形で、僕はアースと共に家を出た。
土の牧場は、大きな岩がごろごろとした岩場のような作りをしていた。
地面は砂混じりの赤土で、草は一切生えていない。
外国の秘境とかにある崖とか、そんな場所を彷彿とさせる景色だ。
見た目は生き物が暮らすのに適さなさそうな場所だけど、土の魔力が満ちているからエルにとっては暮らしやすいんだろうね。
早速、僕はアースを土の牧場に放した。
アースはしばらく手足を引っ込めていたが、危険がないことが分かったのか、ゆっくりと赤土の上を歩き始めた。
乾いたそよ風が、アースを後押しするように吹いていく。
あ、とメネが声を上げた。
「今、風が吹いたよね」
「吹いたね」
「もう、何そんな暢気な顔してるの!」
メネは僕の顔の前まで飛んでくると、胸の前で拳を作りながら笑顔で言った。
「風が吹いたってことは、世界に風の力が戻ってきたってことなんだよ!」
「え、そうなの?」
「そうなの!」
メロンから生まれた風の精霊が、世界を少しずつ蘇らせ始めてるってことか。
風のエルはメロン一匹だけなのに、世界にとってはこれだけの影響力があるんだな。
エルが世界に与える影響力って凄いんだな。
「この調子でエルが増えれば、世界も元通りになるよ! 頑張ろうね!」
また風が吹いた。
からからに乾いたそよ風ではあるけれど、今の僕たちにとっては心地良い風に感じられた。
この調子で、世界を蘇らせていくぞ。頑張ろう。
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