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超えてはいけない門
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「──この門を超えてはいけない」
初めてその世界を目の前にした時、行く手を阻むように門の前に立つその者はそう警告するのだという。
「この先にあるのは、救いなど何処にも存在しない死と絶望で満ちた世界だ。この門を超えてしまったが最後、君は二度と此処には戻って来れなくなるだろう。……現に、かつて多くの者がこの門を超えて先の世界へと足を踏み入れたが、一人たりとして無事に生還した者はいなかった」
目深にフードを被り、顔が全く分からないその者は、こちらには視線ひとつくれずに淡々とそう語りかける。
人によっては、それは男だったと言い、あるいは女だったと証言していたという。背が高い、背が低い、多少ふくよかで、一方で痩せぎすで……羽織った外套の中身に関しては、一貫した情報が存在しなかった。
とにかく存在感が希薄で、目の前にいるはずなのにそこには存在していない、まるで幻のような人物だった……共通して語られるその人物に対する印象は、そういうものだった。
「……それでも、君は行くと言うのか? この門の先へ」
この門を超えた先に広がる世界の何処かに、己が倒すべき『蛮神』がいる。
それを探し出して討滅することが、選ばれし者たる己がこの世界に訪れた目的であった。
この世界を統治する神々より与えられた『異能』を駆使し、志を共にする仲間を見つけ、蛮神を討ち果たして世界を救う。
それこそが、己の使命──
ラインカネーション・フェスティバルの世界に遣わされた英雄、主人公たる自分が果たすべきたったひとつの使命なのだから。
「──目の前の現実から、決して目を背けてはいけない。それが自分にとってどんなに受け入れ難い事実であったとしても、だ。何故なら、それこそが……君の──」
謎の人物の忠告を背に、神々に選ばれし英雄は門を超えて先の世界へと足を踏み入れる。
蛮神が放った眷族たちの手により崩壊寸前へと追い込まれた、死と絶望で満たされた大地へと。
世界の風を感じた──その直後に。
視界が七色の光で満たされて、英雄は意識を失った。
初めてその世界を目の前にした時、行く手を阻むように門の前に立つその者はそう警告するのだという。
「この先にあるのは、救いなど何処にも存在しない死と絶望で満ちた世界だ。この門を超えてしまったが最後、君は二度と此処には戻って来れなくなるだろう。……現に、かつて多くの者がこの門を超えて先の世界へと足を踏み入れたが、一人たりとして無事に生還した者はいなかった」
目深にフードを被り、顔が全く分からないその者は、こちらには視線ひとつくれずに淡々とそう語りかける。
人によっては、それは男だったと言い、あるいは女だったと証言していたという。背が高い、背が低い、多少ふくよかで、一方で痩せぎすで……羽織った外套の中身に関しては、一貫した情報が存在しなかった。
とにかく存在感が希薄で、目の前にいるはずなのにそこには存在していない、まるで幻のような人物だった……共通して語られるその人物に対する印象は、そういうものだった。
「……それでも、君は行くと言うのか? この門の先へ」
この門を超えた先に広がる世界の何処かに、己が倒すべき『蛮神』がいる。
それを探し出して討滅することが、選ばれし者たる己がこの世界に訪れた目的であった。
この世界を統治する神々より与えられた『異能』を駆使し、志を共にする仲間を見つけ、蛮神を討ち果たして世界を救う。
それこそが、己の使命──
ラインカネーション・フェスティバルの世界に遣わされた英雄、主人公たる自分が果たすべきたったひとつの使命なのだから。
「──目の前の現実から、決して目を背けてはいけない。それが自分にとってどんなに受け入れ難い事実であったとしても、だ。何故なら、それこそが……君の──」
謎の人物の忠告を背に、神々に選ばれし英雄は門を超えて先の世界へと足を踏み入れる。
蛮神が放った眷族たちの手により崩壊寸前へと追い込まれた、死と絶望で満たされた大地へと。
世界の風を感じた──その直後に。
視界が七色の光で満たされて、英雄は意識を失った。
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