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第138話 結ばれた円と六つの宝石
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台座に描かれている魔法陣みたいな模様と、そこに置かれていた六種類の宝石。
仕掛けを作動させるには、この魔法陣と宝石が何を表しているのかを理解する必要がある。
まずひとつの可能性として挙げられる謎解きに必要な行為は、魔法陣に描かれている小さな円の中に一個ずつ宝石を並べて置いていくことだ。
円の数は六つで、宝石の数も六個。数が同じだし、一緒に揃えられた状態で結界に封印されていたものだから、これに関してはほぼ確定事項だと思う。
だが、どのように宝石を置くか? それが問題だ。
適当に置けばいいってものじゃないことは流石に予想が付く。そんなことをしたら、先の杯の部屋みたいに謎解きを間違えた『おしおき』が来るかもしれない。それはなるべく避けたい。
宝石が意味しているものは何なのか。それを解明しない限り、並べる順番が分からない。
でも、六個の宝石で表せるもの……そんなものって、あるのか?
「……分かるか?」
フォルテに尋ねると、俺の隣で真剣に魔法陣と宝石を見比べていたフォルテは、首を捻った。
「……ううん、分からない。小さい丸の中に宝石を置けばいいのかなってことは、何となく分かるんだけど」
「それは俺も分かった。でもどういう置き方をするかだ。杯の部屋もパネルの部屋もそうだったし、適当に置いて済むような仕掛けなんて、今更此処で出してこないと思う」
強力な結界で封印された仕掛けの一部。ひょっとしたら結界を解除する手段を発見することこそが最大の謎解きだったのかもしれないが……仮にそうだったとしても、封印までしていた仕掛けの動かし方がそんな粗末すぎる内容のものだとは、思いたくなかった。
「何か、思い当たるものはないか? 六個の宝石で表現できる何か。例えば、生き物とか、星とか……このダンジョン自体が相当古いものだから、昔でも当たり前みたいに存在していた何かだと思う。何でもいいんだが」
「誰でも知ってる、昔からあるもの……神様、とか?」
「……ふむ」
この世界に存在している神々、か……
昔の人が神の存在を信じていた、という話はよく耳にすることだが、仮に宝石が示しているものが神だとして、六個の宝石で表現できるような特定の神なんて、いるのか?
俺が実在していると知っている神だけで既に四人。あいつらを管轄しているらしい更に偉い神を含めたら五人、エルフや精霊たちの守護神であるアルヴァンデュースを加えれば六人になる。アマテラスは日本の神なので数には含めないが、既にそれだけの人数の神が存在していると分かっているのだ。
神の寿命なんて平気で何千年以上もありそうだし、このダンジョンができた頃から地上の人々に存在を知られている神なんて、それこそ山のようにいそうな気がする。そこから特定の六人を割り出すというのは……
いや、此処で俺だけが考え込んでいても分からないものは分からない。こういうのは、素直に当人たちに訊いた方が早そうだ。
神に頼るというのは反則な気がしないでもないが、状況が状況である。利用できるものは何でも利用する、それが俺だ。
『おい、アルカディア。ちょっと訊きたいことがある。聞こえてたら返事してくれ』
俺は頭の中で神界にいるであろうアルカディアに呼びかけてみた。
以前こちらから呼びかけた時には反応したから、俺の声が神界に届いていないってことはありえない。俺を無下に扱ったらビールが手に入らなくなることをあいつは理解しているから、面倒だと思っても無視はしないはずだ。
だが、俺の予想に反してアルカディアからの反応はなかった。
『……アルカディア? いや、もうこの際誰でもいいんだが。ソルレオン? シュナウス? スーウール? 誰もいないのか? 気付いてたら返事してくれよ』
やはり反応はない。
『アルカディア、あんたいつも一方的に俺に話しかけてくるくせに俺からの話は無視するのかよ。次回からのビール献上なしにするぞ。聞いてるのか、おい』
俺の必殺ビール献上やめるぞ攻撃にも全く返事がない。
……どうやら、俺の声が届かない場所にいるか、それとも反応ができないくらいに何かに追われているのか……とりあえずあいつらの助言が期待できないということだけは理解した。
俺は溜め息をついて頭を掻いた。
それを怪訝そうに見つめながら、フォルテが俺の心配をしてくる。
「大丈夫? ハル。疲れたの?」
「……いや、大丈夫だ。まあ体はそこそこ疲れてるけどな。でも頭はまだまだ回るから、心配しなくていい」
「そう」
「神様、な……なかなかいい線いってる考えだとは思うんだが、どの宝石が何の神を表しているのかが予想付かない。神って下手したら何十人もいそうだろ。そこから特定の六人を割り出すってのは厳しいんじゃないか?」
「神様ってそんなにたくさんいるものなの? ……でも、そうよね。召喚獣だって何十種類っているくらいだもの。神様だってそのくらいいたって不思議じゃないわよね」
召喚獣ってそんなに種類があるのか。俺はヴァイス以外を召喚したことはないし、召喚獣は同時に二匹以上の存在を同じ場所に召喚することはできないって決まりがあるから、ヴァイスを送還できない俺にしてみれば召喚魔法なんて既に使えないものと同じような代物と化している。だから興味を抱くことも気にしたこともなかったな、今まで。
フォルテは同時に何個も日本からものを召喚しているが……あれは召喚獣じゃなくて『物体』だからな。多分召喚獣扱いじゃないから、その法則は適用されていないのだろう。便利といえば便利だから、今更それをおかしいと指摘する気はないが。
「神様じゃないとすると……何があるかしら。きっと六つの丸が円で繋がってるのにも意味はあるのよね。繋がった関係性のあるもの。優劣のない同じもの。……宝石の数が六個じゃなくて三個だったら、王家と領民と奴隷の関係性を表してるのかなって、思ったんだけど」
「……何だ? それ」
「賭け事なんかでよく遊ばれてるカードゲームに、そういうものがあるの。カードゲーム自体はそんなに大昔からあるものじゃないんだけど、ゲームのルールになってる三者の関係のルーツは古来の歴史とか文化を記した貴重な記録書の内容が元になってるって聞いたことがあるわ」
王家と、領民と、奴隷。それは一方に対して強く、もう一方に対しては弱い、いわゆる三竦みの関係にある存在らしい。
王家は領民を支配して身分と財を成し、領民は奴隷を支配して己の生活を成り立たせ、奴隷は人間としての権利を持たぬが故に王家の支配の影響を受けることもないため玉砕覚悟で王家を滅ぼすことが可能な唯一の存在。すなわち王家は領民に強く、領民は奴隷に強く、奴隷は王家に強い。そういう関係性を持っているのだという。
カードゲームでは、対戦者同士が同時に任意のカードを場に出してその図柄の種類で勝敗を決めているらしい。
つまり、日本で言うじゃんけんのようなもの……有名な例え話で言うと、蛇と蛙とナメクジの関係と同じようなものだ。
一方に強く一方に弱いから、これらの三者は対等な立場として図にすると正三角形もしくは円で繋がれた存在として描き表されることが多い。
その法則を当てはめて考えるのなら、此処にある六個の宝石は三竦みならぬ六竦みの関係性を持っているものということになる。六つの円がひとつの円で繋がれている図形の構図も、それに因んで描かれたものとして考えることができる。
可能性は、ある。特定の神などという分からないもののことを考えるよりも、そちらの方がよほど内容が明確で分かりやすい。
だが……六竦みの関係を持つもの。そんなものってあるのか?
そもそも、此処にある六種類の宝石。宝石なんて他にも種類は山ほどあるというのに、どうしてこの六種類なんだ?
ルビーやサファイアは宝石としては有名どころだし、他の宝石もまあ珍しいものではないが、どれも此処にはないエメラルドとかダイヤモンドと比較したらマイナーな種類だし、アンバーは要は琥珀のことなのだが琥珀なんて宝石じゃなくて単なる樹液の塊だって言う奴もいるように、そもそも宝石だと認識していない人間だっているような代物だ。昔の人間にも、そういう考え方をしていた奴は少なからずいたはずである。
きっと、どうしてこの種類の宝石が使われているのかにも意味があるのだ。宝石の種類そのものが何かを表現しているのである。
何だろう。色? パワーストーンとしての効果? でも宝石をパワーストーンとして見る文化は地球のものだから、同様の文化が千年以上も昔のこの世界に浸透していたのかと問われたら微妙な気はする。そもそも種類が違う石でも効果は同じってやつは結構あるらしいからな。
仮に、色にこそこの宝石が選ばれたという理由があると考えよう。
此処にある色は、赤、青、黄緑、水色、紫、黄……
赤青黄は三原色だから此処にあるのは不思議じゃないとして、残りの三色が選ばれた理由は何だ?
色に明確な差を付けたいのなら、もっと他に適している色があったと思う。例えば白とか黒とか。黄緑と水色は淡色系で曖昧な色だし、そもそも水色なんて青の同系色なんだから青と一緒に揃える必要性は殆どないように思える。紫は赤と青の中間色だし色的にもはっきりしているから選ばれたのは分かるが、それだったら何故青と黄の中間色である緑を用意しないで代わりに黄緑を選んだのかという疑問が出てくる。
そこにこそ、色の関係性を解くヒントが隠されていると思う。どうして緑でなく黄緑でなければならなかったのか。青が既にありながら更に水色を用意したのか。
本格的に長考に入ろうとした俺の足先が、ひやりとした感覚を感じ取った。
何かと思い足下に視線を落とすと──俺の足先が水に浸かっている光景が目に飛び込んできた。
この水は、さっきから水路から溢れ出てきている水だ。水の流出量が尋常ではない上に全く止まっていないから、遂に此処の床全体が水没してしまったのである。
今はまだ足の裏が浸っている程度で済んでいるが、このまま水が止まらなければ、此処は水没してしまう。
水かさが増えればそのまま泳ぐ要領で上まで運ばれて出口に行けるようになるかもしれないが、それを暢気に待っている時間なんてない。下手をすればこの部屋どころではなくダンジョン全体が水の底だ。
「……フォルテ、この宝石の種類や色から連想できる六つのものがないか考えてくれ。ぐずぐずしてると俺たち全員魚になっちまう」
「うん、分かった!」
──その時、海溝王の怒号とも呼べる激しい咆哮が空間全体に響き渡った。
仕掛けを作動させるには、この魔法陣と宝石が何を表しているのかを理解する必要がある。
まずひとつの可能性として挙げられる謎解きに必要な行為は、魔法陣に描かれている小さな円の中に一個ずつ宝石を並べて置いていくことだ。
円の数は六つで、宝石の数も六個。数が同じだし、一緒に揃えられた状態で結界に封印されていたものだから、これに関してはほぼ確定事項だと思う。
だが、どのように宝石を置くか? それが問題だ。
適当に置けばいいってものじゃないことは流石に予想が付く。そんなことをしたら、先の杯の部屋みたいに謎解きを間違えた『おしおき』が来るかもしれない。それはなるべく避けたい。
宝石が意味しているものは何なのか。それを解明しない限り、並べる順番が分からない。
でも、六個の宝石で表せるもの……そんなものって、あるのか?
「……分かるか?」
フォルテに尋ねると、俺の隣で真剣に魔法陣と宝石を見比べていたフォルテは、首を捻った。
「……ううん、分からない。小さい丸の中に宝石を置けばいいのかなってことは、何となく分かるんだけど」
「それは俺も分かった。でもどういう置き方をするかだ。杯の部屋もパネルの部屋もそうだったし、適当に置いて済むような仕掛けなんて、今更此処で出してこないと思う」
強力な結界で封印された仕掛けの一部。ひょっとしたら結界を解除する手段を発見することこそが最大の謎解きだったのかもしれないが……仮にそうだったとしても、封印までしていた仕掛けの動かし方がそんな粗末すぎる内容のものだとは、思いたくなかった。
「何か、思い当たるものはないか? 六個の宝石で表現できる何か。例えば、生き物とか、星とか……このダンジョン自体が相当古いものだから、昔でも当たり前みたいに存在していた何かだと思う。何でもいいんだが」
「誰でも知ってる、昔からあるもの……神様、とか?」
「……ふむ」
この世界に存在している神々、か……
昔の人が神の存在を信じていた、という話はよく耳にすることだが、仮に宝石が示しているものが神だとして、六個の宝石で表現できるような特定の神なんて、いるのか?
俺が実在していると知っている神だけで既に四人。あいつらを管轄しているらしい更に偉い神を含めたら五人、エルフや精霊たちの守護神であるアルヴァンデュースを加えれば六人になる。アマテラスは日本の神なので数には含めないが、既にそれだけの人数の神が存在していると分かっているのだ。
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『おい、アルカディア。ちょっと訊きたいことがある。聞こえてたら返事してくれ』
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だが、俺の予想に反してアルカディアからの反応はなかった。
『……アルカディア? いや、もうこの際誰でもいいんだが。ソルレオン? シュナウス? スーウール? 誰もいないのか? 気付いてたら返事してくれよ』
やはり反応はない。
『アルカディア、あんたいつも一方的に俺に話しかけてくるくせに俺からの話は無視するのかよ。次回からのビール献上なしにするぞ。聞いてるのか、おい』
俺の必殺ビール献上やめるぞ攻撃にも全く返事がない。
……どうやら、俺の声が届かない場所にいるか、それとも反応ができないくらいに何かに追われているのか……とりあえずあいつらの助言が期待できないということだけは理解した。
俺は溜め息をついて頭を掻いた。
それを怪訝そうに見つめながら、フォルテが俺の心配をしてくる。
「大丈夫? ハル。疲れたの?」
「……いや、大丈夫だ。まあ体はそこそこ疲れてるけどな。でも頭はまだまだ回るから、心配しなくていい」
「そう」
「神様、な……なかなかいい線いってる考えだとは思うんだが、どの宝石が何の神を表しているのかが予想付かない。神って下手したら何十人もいそうだろ。そこから特定の六人を割り出すってのは厳しいんじゃないか?」
「神様ってそんなにたくさんいるものなの? ……でも、そうよね。召喚獣だって何十種類っているくらいだもの。神様だってそのくらいいたって不思議じゃないわよね」
召喚獣ってそんなに種類があるのか。俺はヴァイス以外を召喚したことはないし、召喚獣は同時に二匹以上の存在を同じ場所に召喚することはできないって決まりがあるから、ヴァイスを送還できない俺にしてみれば召喚魔法なんて既に使えないものと同じような代物と化している。だから興味を抱くことも気にしたこともなかったな、今まで。
フォルテは同時に何個も日本からものを召喚しているが……あれは召喚獣じゃなくて『物体』だからな。多分召喚獣扱いじゃないから、その法則は適用されていないのだろう。便利といえば便利だから、今更それをおかしいと指摘する気はないが。
「神様じゃないとすると……何があるかしら。きっと六つの丸が円で繋がってるのにも意味はあるのよね。繋がった関係性のあるもの。優劣のない同じもの。……宝石の数が六個じゃなくて三個だったら、王家と領民と奴隷の関係性を表してるのかなって、思ったんだけど」
「……何だ? それ」
「賭け事なんかでよく遊ばれてるカードゲームに、そういうものがあるの。カードゲーム自体はそんなに大昔からあるものじゃないんだけど、ゲームのルールになってる三者の関係のルーツは古来の歴史とか文化を記した貴重な記録書の内容が元になってるって聞いたことがあるわ」
王家と、領民と、奴隷。それは一方に対して強く、もう一方に対しては弱い、いわゆる三竦みの関係にある存在らしい。
王家は領民を支配して身分と財を成し、領民は奴隷を支配して己の生活を成り立たせ、奴隷は人間としての権利を持たぬが故に王家の支配の影響を受けることもないため玉砕覚悟で王家を滅ぼすことが可能な唯一の存在。すなわち王家は領民に強く、領民は奴隷に強く、奴隷は王家に強い。そういう関係性を持っているのだという。
カードゲームでは、対戦者同士が同時に任意のカードを場に出してその図柄の種類で勝敗を決めているらしい。
つまり、日本で言うじゃんけんのようなもの……有名な例え話で言うと、蛇と蛙とナメクジの関係と同じようなものだ。
一方に強く一方に弱いから、これらの三者は対等な立場として図にすると正三角形もしくは円で繋がれた存在として描き表されることが多い。
その法則を当てはめて考えるのなら、此処にある六個の宝石は三竦みならぬ六竦みの関係性を持っているものということになる。六つの円がひとつの円で繋がれている図形の構図も、それに因んで描かれたものとして考えることができる。
可能性は、ある。特定の神などという分からないもののことを考えるよりも、そちらの方がよほど内容が明確で分かりやすい。
だが……六竦みの関係を持つもの。そんなものってあるのか?
そもそも、此処にある六種類の宝石。宝石なんて他にも種類は山ほどあるというのに、どうしてこの六種類なんだ?
ルビーやサファイアは宝石としては有名どころだし、他の宝石もまあ珍しいものではないが、どれも此処にはないエメラルドとかダイヤモンドと比較したらマイナーな種類だし、アンバーは要は琥珀のことなのだが琥珀なんて宝石じゃなくて単なる樹液の塊だって言う奴もいるように、そもそも宝石だと認識していない人間だっているような代物だ。昔の人間にも、そういう考え方をしていた奴は少なからずいたはずである。
きっと、どうしてこの種類の宝石が使われているのかにも意味があるのだ。宝石の種類そのものが何かを表現しているのである。
何だろう。色? パワーストーンとしての効果? でも宝石をパワーストーンとして見る文化は地球のものだから、同様の文化が千年以上も昔のこの世界に浸透していたのかと問われたら微妙な気はする。そもそも種類が違う石でも効果は同じってやつは結構あるらしいからな。
仮に、色にこそこの宝石が選ばれたという理由があると考えよう。
此処にある色は、赤、青、黄緑、水色、紫、黄……
赤青黄は三原色だから此処にあるのは不思議じゃないとして、残りの三色が選ばれた理由は何だ?
色に明確な差を付けたいのなら、もっと他に適している色があったと思う。例えば白とか黒とか。黄緑と水色は淡色系で曖昧な色だし、そもそも水色なんて青の同系色なんだから青と一緒に揃える必要性は殆どないように思える。紫は赤と青の中間色だし色的にもはっきりしているから選ばれたのは分かるが、それだったら何故青と黄の中間色である緑を用意しないで代わりに黄緑を選んだのかという疑問が出てくる。
そこにこそ、色の関係性を解くヒントが隠されていると思う。どうして緑でなく黄緑でなければならなかったのか。青が既にありながら更に水色を用意したのか。
本格的に長考に入ろうとした俺の足先が、ひやりとした感覚を感じ取った。
何かと思い足下に視線を落とすと──俺の足先が水に浸かっている光景が目に飛び込んできた。
この水は、さっきから水路から溢れ出てきている水だ。水の流出量が尋常ではない上に全く止まっていないから、遂に此処の床全体が水没してしまったのである。
今はまだ足の裏が浸っている程度で済んでいるが、このまま水が止まらなければ、此処は水没してしまう。
水かさが増えればそのまま泳ぐ要領で上まで運ばれて出口に行けるようになるかもしれないが、それを暢気に待っている時間なんてない。下手をすればこの部屋どころではなくダンジョン全体が水の底だ。
「……フォルテ、この宝石の種類や色から連想できる六つのものがないか考えてくれ。ぐずぐずしてると俺たち全員魚になっちまう」
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