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第70壊 目覚めし女神②
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「――――まぁいいじゃない! 勝ちは勝ちよ! トウヤ! 私が壊しちゃってごめんね?」
砲身で限界まで集中した魔力が行き場を無くし、その場で膨張を始めた。
こうなってしまうと、後は爆破炎上するのを待つだけである。
「良いのかなぁ、こんな終わり方で......フィン、耳塞いでろ」
「うん!」
別に目は閉じなくて良かったんだけどね。
「BANG!」
やけに艶っぽいプリメーラの決めゼリフを引き金として、音かどうかも怪しい重低音の揺れが全てを震わせた。
砲身から発生した光の球が山のようにデカい自分自身を覆い尽くす。
プリメーラが結界を張ってくれたので、大半の光と熱はこちらに届かなかった。
光球が出現していた時間は10秒にも満たなかっただろう。
だが、その10秒程で巻き起こった天変地異は勝利を確信するのに十分な物だった。
酸素を燃やし尽くして消失した光球の中より無傷の破壊者が出現するまでは。
「なんであの爆発を喰らって無傷なんだよ......」
「一瞬視えました......あの野郎、爆発する瞬間に砲身を切り離したんでさぁ......後は内部に届く筈だったエネルギーは全て多重結界に阻まれて――――」
無傷って訳か。
砲身の切り離し......そんな事も出来たのかよ反則だろ......
「嘘......よね? 夢よね?」
「残念だが現実みたいだな......今ので俺のクギも燃え尽きた。また動き出すぞ」
再び動けるようになった喜びを表すように破壊者は一歩目を踏み出した。
地面が波打ち、プリメーラの張った結界は砕け散った。
「あ......あぁ! もう終わりだ......街も! 家族も! 俺達も! みんな死ぬんだ......」
ソザウは鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにし、行き場の無い悔しさをぶつけるように拳を地面へと打ち付ける。
「まだだ......まだ終わってねぇ......!!」
身体を少しでも動かす度に全身を痛みが襲う。
「グッ......!! アァァッ!!」
「トウヤ......そんな体で何が出来るって言うの!?」
「うるせぇプリメーラ! 対ジン式格闘術――――ガァァァッ!!!!」
闘気が......使えない......体力が無さすぎるのか!?
「トウヤ......」
「待ってろフィン! 俺が最強だって......見せてやる!!」
まだだ!! 感情を! 全てを燃やす!!
「旦那ぁ......」
「ライ......グフっ......ア゛ッ......」
どこも怪我していないのに、口から溢れる血が止まらない。俺の身体まで拒否してやがる! 少し......黙れよ!
「壊し屋......」
「――――――――」
一歩......一歩だけ踏み出せ......これが出来れば......後は繰り返すだけ......
――――――
――――
――
あれ? なんでこんなに一生懸命になってるんだ? 俺。
そんな考えが一瞬頭をよぎる。
踏ん張っていた足に、力が入らなくなった。
いや、またも脇腹から担がれたのだ。足と視界が少しだけ浮く。
「転びそうだぞ。こんなに短い間隔で一人の大人を二度も抱えるとは思わなかったな! なぁ? 壊し屋の! ガッハッハ!」
「離せガリア......俺は行く」
「立つことすらままならんその身体でか?」
「一発で終わらせるんだよ......! そうすれば俺の勝ちだ......!」
「もう一度聞くが、その身体で、か?」
「当たり前だ! 俺は......俺は――――」
何の為に頑張ってるんだ?
さっきは一瞬だった考えが、今度は頭にこびりつく。
「――――壊し屋の。本当に、本当に一撃で勝てるのか?」
「対ジン式格闘術さえ使えれば」
「なら、俺に考えがある。少し待ってろ」
「.......は?」
そう言うとガリアは、俺を置いて街の方へと走っていった。
砲身で限界まで集中した魔力が行き場を無くし、その場で膨張を始めた。
こうなってしまうと、後は爆破炎上するのを待つだけである。
「良いのかなぁ、こんな終わり方で......フィン、耳塞いでろ」
「うん!」
別に目は閉じなくて良かったんだけどね。
「BANG!」
やけに艶っぽいプリメーラの決めゼリフを引き金として、音かどうかも怪しい重低音の揺れが全てを震わせた。
砲身から発生した光の球が山のようにデカい自分自身を覆い尽くす。
プリメーラが結界を張ってくれたので、大半の光と熱はこちらに届かなかった。
光球が出現していた時間は10秒にも満たなかっただろう。
だが、その10秒程で巻き起こった天変地異は勝利を確信するのに十分な物だった。
酸素を燃やし尽くして消失した光球の中より無傷の破壊者が出現するまでは。
「なんであの爆発を喰らって無傷なんだよ......」
「一瞬視えました......あの野郎、爆発する瞬間に砲身を切り離したんでさぁ......後は内部に届く筈だったエネルギーは全て多重結界に阻まれて――――」
無傷って訳か。
砲身の切り離し......そんな事も出来たのかよ反則だろ......
「嘘......よね? 夢よね?」
「残念だが現実みたいだな......今ので俺のクギも燃え尽きた。また動き出すぞ」
再び動けるようになった喜びを表すように破壊者は一歩目を踏み出した。
地面が波打ち、プリメーラの張った結界は砕け散った。
「あ......あぁ! もう終わりだ......街も! 家族も! 俺達も! みんな死ぬんだ......」
ソザウは鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにし、行き場の無い悔しさをぶつけるように拳を地面へと打ち付ける。
「まだだ......まだ終わってねぇ......!!」
身体を少しでも動かす度に全身を痛みが襲う。
「グッ......!! アァァッ!!」
「トウヤ......そんな体で何が出来るって言うの!?」
「うるせぇプリメーラ! 対ジン式格闘術――――ガァァァッ!!!!」
闘気が......使えない......体力が無さすぎるのか!?
「トウヤ......」
「待ってろフィン! 俺が最強だって......見せてやる!!」
まだだ!! 感情を! 全てを燃やす!!
「旦那ぁ......」
「ライ......グフっ......ア゛ッ......」
どこも怪我していないのに、口から溢れる血が止まらない。俺の身体まで拒否してやがる! 少し......黙れよ!
「壊し屋......」
「――――――――」
一歩......一歩だけ踏み出せ......これが出来れば......後は繰り返すだけ......
――――――
――――
――
あれ? なんでこんなに一生懸命になってるんだ? 俺。
そんな考えが一瞬頭をよぎる。
踏ん張っていた足に、力が入らなくなった。
いや、またも脇腹から担がれたのだ。足と視界が少しだけ浮く。
「転びそうだぞ。こんなに短い間隔で一人の大人を二度も抱えるとは思わなかったな! なぁ? 壊し屋の! ガッハッハ!」
「離せガリア......俺は行く」
「立つことすらままならんその身体でか?」
「一発で終わらせるんだよ......! そうすれば俺の勝ちだ......!」
「もう一度聞くが、その身体で、か?」
「当たり前だ! 俺は......俺は――――」
何の為に頑張ってるんだ?
さっきは一瞬だった考えが、今度は頭にこびりつく。
「――――壊し屋の。本当に、本当に一撃で勝てるのか?」
「対ジン式格闘術さえ使えれば」
「なら、俺に考えがある。少し待ってろ」
「.......は?」
そう言うとガリアは、俺を置いて街の方へと走っていった。
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