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第59壊 王の証②

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「――――仮に本物を【王の証】とでも呼ぼうか。これを七つ全て王から奪った時、俺達の目的は達成される一言で言うなら、なんでも願いが叶うって訳だ」

「んな話したってしょうがねぇだろ。問題はその魔王の証とやらをどうやって奪うかだろうが!」

「それについても考えがある......マース。君は確か神代の遺跡へ行っていたよな」

 アンバランスのルールはただ一つ。“互いに普段の活動に干渉しない”である。

 だが、最近のユグドはマースに超古代遺跡の調査を、サイリスとヴィフラムには捕まらない程度に活動を抑えるよう依頼をしておいた。

 そのユグドの言うことを聞かずにサイリスはトウヤに負け、警備局に投獄された挙句ヴィフラムへ迷惑をかけたのだが、それはまた別の話である。

「行った......捜し物......多分あった......でも......何に使う?」

「ほんの小手調べさ。もし上手く行けば、壊し屋の件もサイリスの件も片付くかもね」

「勿体ぶりますなユグド殿。そもそもマース嬢の見つけた物とはなんなのですか?」

 マースはアジューガの腕をひしりと掴み、誇らしげな顔で答える。

「山!」

「山......ですかな?」

「あはは! 山、山か......確かに今はそっちの方が近い見た目をしてるかもしれないね!」

「だからなんなんだって! 俺様だけはぶんじゃねーよコラ!」

「分からないのはアンタがバカだからよ」

「なんだと!?」

 嘘である。実はヴィフラムも余りよく分かってはいなかった。要はラクティスに舐められない為に強気に出たのである。

「いやぁ、の情報が本当で助かったよ。マースもありがとう。あとはアレが動くかだけど......これは俺が頑張ろうか」

 実はなんの事か分かっていないとラクティスにバレたくないので、ヴィフラムはアジューガに耳打ちをする。

(......で、さっきからユグドが嬉しそうに話してるアレってなんなの?)

(アレというのは、遥か昔...神代に始原始まりの七王が神と戦う為に作り出した兵器の事でございますな)

「......? ねぇユグド、それを使って魔王の証を得るってのはまぁ上手くやるんでしょ? でも、サイリスの件も同時に片付くってどういう訳?」

「サイリスは壊し屋のトウヤを殺す為に幽閉されてその時を待っている......そうだろ?」

「理屈的には無茶苦茶だけど、そうね」

「ただ、警備局に幽閉されている以上、警備局側はサイリスから俺達の情報を聞き出さない手はない。だろう?」

「確かに」

「そうなったらあいつは喋るだろうな。洗いざらい」

「喋るわね」

「喋るな」

「喋る......」

「返す言葉も無く......」

 実際の所取り調べ等はされていないのだが、サイリスには信用が無かった。

「つまり、トウヤを殺せばサイリスはあの場に留まる理由が無くなって、重大な秘密を喋る前に帰ってくるんじゃないかって事さ」

 実際はそんなに簡単な話では無かったのだが、サイリスは強さ以外は本当に信用が無かった。そして強さ以外は舐められていた。

「うぉぉぉぉ破壊! 久しぶりに祭りだなァ!」

 何も分かってないなりにどんな話なのかを理解したラクティスが、話を端的に纏めて騒ぎ出した。

 ユグドの言いたかった事はこうだ。

 マースの発見した神代の兵器でのファストレアの破壊。

 魔王、及び壊し屋トウヤの抹殺。王の証の奪取。

 ついでにサイリスの“契約”を無効にした上での奪還である。

 それらが全て失敗した場合、彼らの実力の確認。

 これだけの事を一度に遂行できるとユグドが踏んだのは、それだけ今回使う兵器が神智を超えた物だからだ。

 一度動かしてしまったら最後。コレは目的を果たすまで世界を破壊し続けるだろう。

 だがユグドはそれで良かった。目的はあくまで、世界を崩壊させるという結果のみなのだから。

「じゃあ、今日はこれでおしまい。次会う時は全てが終わった後だ」

 ユグドのその一言で、全員は消えるようにその場から立ち去って行った。

 終わりが始まる。これはまだ序曲に過ぎなかった。
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