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番外:万聖節2※

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 絡む指をぎゅっと握る。両手を握った手で支えながら、ルカは仰向けになった俺の上にまたがり、ゆっくり腰を揺らしている。

 ルカの動きに合わせて、赤い前髪や、優美な曲線を描く胸の膨らみが扇情的に揺れる。

 根元まで深く埋まった俺のものが、ルカの中で刺激されて溶けそうなほどだった。ざらつく襞の感触や、入口付近できゅっと締められてしごかれる感覚は俺の脳を痺れさせるのに十分だ。

 さきほど、射精したおかげで、余裕はあるものの、下から突き上げたくなる衝動に抗うのが難しい。

 荒ぶる呼吸をなだめながら、ルカのくれる快楽に身を委ねていると、ちょいちょいと頬を撫でるものがあった。

 重い首をまわしてみれば、ルカの尻尾。
 さきっちょが三角形の尻尾が、甘えるように俺の頬にすりついてくる。
 頬をなでていたかと思えば、俺の唇を尻尾の先端でなぞる。

「ルカは尻尾もかわいい……んあ!?」

 少し開いた口に、やや強引に尻尾がすべりこんできた。三角形の尻尾は尖ってはいるものの、鋭くはない。とんがりの先はよく見ると丸まっていて、触れても痛くないのだ。
 舌で舐めると尻尾がひくひく震えて、口の中に甘くて苦いものがひろがる。尻尾の先から出る分泌物だ。
 甘く歯で噛めば、なおさら甘苦さが口内にひろがった。
 舌をからめて尻尾を吸って、甘苦い液体を飲みこむ。あとからあとから湧いてくる液体を、飲みこむたびに俺の身体の奥に甘い痺れが沸き上がった。

「ん……んく…………ちゅ……」

 尻尾が口の中を刺激するたびに、おもわず鼻にかかった声がもれる。まるでわざと水音を立てるように、尻尾が何度も俺の口の中を前後に往復する。喉の奥に尻尾が押しこまれ、あふれた唾液や分泌物が、唇のはしからこぼれおちた。

「う……んん………んっ」

 尻尾が俺の喉の奥を突くのに合わせて、ルカの腰を下から突き上げる。尻尾が激しく動けば激しく、緩慢に動けば緩慢に。
 上も下もルカを感じて、その刺激に俺は陶然となる。背筋をかけのぼる快楽に耐えかねて、ルカの手をぎゅっと握った。

「あっ……やっ……セフィっ」

 ルカの奥が強く締まるのに合わせて、口の中の尻尾を軽く噛み、きつく吸う。その先端から、温かな分泌液が今までになく大量にあふれた。俺もルカの中で放ちながら、口いっぱいにひろがる甘苦い液体を、こぼさないように必死で飲みこんだ。

「んあ……はあっ………はあっ」

 しなるように尻尾が俺の口から抜ける。荒く息をつく俺の唇を、尻尾の尖った先端がなでてくる。まるで、さきほど出した分泌物をすりこんでいるようだった。
 射精後の脱力感に、身体中が鉛のように重くて熱い。

「セフィ……それ、なにか、わかる?」

 くてっと俺の胸に身体をあずけたルカが、荒い呼吸の合間に問いかけてくる。
 それの指すものが、ルカの尻尾から出る甘苦い液体だと理解するのに数秒かかった。

「……に……人間に快楽をあたえて堕落させ廃人にさせる毒、みたいな、やつ」
「正解。さっき人間のときに、それわかってて飲んだの?」

 また怒られそうで、うんといえず、ごまかすように唇に触れる尻尾を舌で舐めた。

「人間には、すごく効いちゃうからだめなのに。ちなみに、天使には効かないと思うんだけど」
「天使でも、ちょっと敏感になって開放的な気分にはなるかも」
「ええっ、効果でちゃうの!?」

 ふいっと、尻尾がどこか行く素振りを見せるから、慌てて甘く噛む。手でつかめばいいんだろうけど、だるすぎて腕が上がらない。

「んむ、いかないで、もっとして。大丈夫だから」

 俺の必死の引き止めに、尻尾はゆるゆると戻ってきてくるた。安心してまた尻尾に舌を這わせる。

 ルカはもっと俺のことめちゃくちゃにしていいのに。

 そんな俺の雑念が、もしかしたらルカに見透かされたのかもしれない。

「セフィは、私にもっといろいろされたいと思う?」

 いきなりそんなことを聞いてくる。

「ルカにならなんでも」

 俺が尻尾なめなめしながら言うと、ルカはちょっと考えて、なにか決心したように俺の方をまっすぐ見た。そんな目で、尻尾咥えてるところを、ルカに見られるだけで、軽くいきそうな気になる。

「あのね、セフィ、実はこの一年でちょっと練習したことがあって」

 唐突にルカの重みと熱が、俺から離れた。

「ん!?ルカ!?」

 同時にずるりと、ルカの中から、まだ硬さが残る俺のものが引き抜かれる。
 尻尾までもするりと行かれてしまって、俺は困惑してルカを見つめた。雨の降るなか、捨てられた子犬みたいな気分だ。

「そんな顔しないで」

 ルカはちょっと恥ずかしそうに尻尾を揺らしたと思えば、俺の足をM字型にもちあげて大きく開く。その間から、いまだに存在感を示す俺のものが腹の上に見え、その向こうに、顔を赤らめたルカがみえた。格好としては、だいぶ情けない。

「え?え?……んんっ」

 ルカの指でそっと尻の割れ目を撫でられて、背筋が思わずのけぞる。

「ここ、自分の手でひらいて?よく見せて」
「へ??ここ?」

 ルカに促されて、自分の尻に手をあてる。

「こんなとこ?」
「そう。いっぱい左右にひらいて?」

 そんなに良いものでは……などと思いつつ、言われるままに両手でぐっと割れ目を開く。さきほどから開放感が増してることもあり、ルカが見たいならいいか、という気分になっていた。

 空気が肌にあたる冷たさとともに、ぬるりとした舌の感触。

「ん!?んあっ………うあ………くっ……」

 いきなり開いた部分を舐められて、盛大に仰け反った。閉じかける足を、ルカにおさえつけられ、執拗に吸われる。

「ああっ!だめ、ルカ、そんなとこ」
「ちゃんと、ひらいて」

 陰嚢の裏にもちゅっと唇を押し当てられめくられて会陰から、さらに奥まで舐められる。腰が引けそうになるのを必死で耐える。ひらけっていわれてるからひらいてるけど、指にほとんど力が入らない。

「ルカ、そこ……んっ、だめ」
「セフィ、力抜いててね?毒が効いてるから大丈夫。私も練習したし」

 なにを!?

 と、俺が聞く間もなく、するりとルカの尻尾が俺の腰をなで、俺の臀部のまるみを伝い、割れめに沿うようにひとなでする。

 ぬるりと温かな液体が尻を伝う。さきほど尻尾の先から出ていた体液だろうか。弾力のあるとがったものに、やさしく尻穴の周りを押されたあと、ゆっくりと穴自体に圧力がかかる。

「そう、淫魔の友達に教えてもらって、練習したの。尻尾で男の人をとても気持ちよくする方法。力ぬこう?」
「ちょっと、待って、心の準備が」
「心の準備は待たないのがコツみたい」
「んっ……あぁっ……うあああっ」

 硬く弾力のあるものが、粘液をまとって俺の中に入ってくる。そこまで太くは無いが、異物感がすごい。

「あ……ぐっ……ル、カ……」
「ちゃんと指で割れ目をひらいたままにできて偉いね。セフィの中に入ってくの、よく見えるよ」

 反射的に閉じようとする俺の足をおさえつけながら、ルカがなんか褒めてくれてるけど、それどころではなかった。

「はあっ……あっ………あぁっ」

 ぬるぬるとしたものが、ゆっくりと抜き差ししながら入ってくる違和感もさることながら、時々引っかかるような刺激が快楽に近いのが妙に恐ろしい。

「ルカ、ルカ……!これ、なんか怖い」

 たまらず、両手をルカに伸ばす。急いで握ってくれる手の温かさに少し安心する。
 もっとルカの体温を感じたくて、ねだるようにルカの手を引っ張る。

「セフィ、ほんとに嫌ならやめるよ」

 尻尾は入れたままだけど、ルカが俺の近くに来てくれて、頬にキスして肩を抱いてくれた。

「嫌じゃ、ない……けど、……んあっ」

 俺のなかの、あるポイントを押されて、たまらず仰け反った。今まで感じたことのない、陰茎の方に響く気持ちよさ。

「セフィは、ここが好き?また、大きくなってる」

 ルカが執拗に俺が反応するところを責めながら、ぐっと陰茎の根元を握ってくる。

「んくっ……はあっ、だめ、こんなの、おかしくなるっ」
「おかしくなっていいよ、セフィ。一緒におかしくなろっか」

 優しげにルカはそういうと、俺の上にまたがり、ルカの秘所に硬くなった俺を当てて、ゆっくりと腰を落とした。

「んん、セフィ、かたい」

 甘い吐息を漏らしながら、ルカが根元まで俺のものを飲み込む。ゆっくりと、上下前後に動かすと同時に、タイミングをあわせて尻尾も、俺の中を抉る。

「ああっ!なに、これ、なんか、くる……んんっ」

 射精とは違う、快楽の昂りに歯を食いしばって手近なシーツをぎゅっと握る。
 自分の意志に反して腰がわななくのが止まらない。

「セフィ、かわいい。もっと刺激してあげるね」

 俺の胸に舌を這わせたルカが、ちゅうっと乳首を吸う。そこはすでに敏感に勃っていて、ルカの与える刺激に軽く身体が跳ねた。

 握っていたシーツから手を離し、すがるように俺の上のルカを抱きしめる。白い背中に、柔らかな尻に俺の指を埋め込んだ。

「んんっ!これ、変。なんで……?」

 射精してないのに、達する感覚。
 馴染みのない感覚に、焦るように下からルカを突き上げる。ルカのうわずった声に触発されて、一層俺のものが硬くなる。

「セフィ、だすの、……手伝ってあげる」
「えっ、……ひっ……ぐっ……ああっ」

 ずるりとルカの尻尾がより奥まで入り込み、裏側から俺の内蔵をそっと押す。まるでそれに押し出されるように、射精感が高まった。

「ほら、でるよ」

 覗き込むルカの紅の瞳を見た瞬間、いつものほとばしるような快楽とは違う、ゆるゆるとあふれるような不思議な射精感が俺の身を包む。

「あぁ、ルカ、こんな、ほんとにおかしく、なるっ」

 声に、嗚咽に似たものが混じる。
 目の前のルカの顔がぼやける。
 頬を熱いものが伝う。

 それを、ルカがぺろりと舐めた。

「セフィ、気持ちよさそう。こんなにぐちゃぐちゃに泣いてても綺麗だなんて、さすが天使」
「な、泣いて、ない」

 ルカの言葉になんとか首を振る。
 事実はどうあれ、認めたくなかった。

「じゃあ、泣いてないことにしてあげる」

 ルカが俺の頬をたくさん舐めてくれる。あとからあとから、熱いものが溢れてくるのも、ルカが舌で受け止めてくれた。

「うぅ、ああっ………ルカ、ルカ」

 うわ言みたいに、ルカの名前を呼んで、俺はしゃくりあげながら、いまだルカに身体の奥をほじくられながら、ルカの身体の中に俺の欲望を吐き出した。
 
「うあっ……くっ……、熱っ」

 尻尾にぐりっと敏感なところを抉られ、熱い何かが俺の身体の中にあふれる。なすりつけるように尻尾を前後に動かすたびに、ねばつく音がきこえて、ルカの尻尾から大量に悪魔の毒を注がれたのだと知った。
 
くらりと、意識が揺らぐ。
いつもは抑えて堪えて我慢しているものが、理性の枷から外れた気がした。

「ん……セフィ、好きだよ……んっ」

 唇にささやかに触れる柔らかな感触。
 それをつかまえて、おさまらない熱のままに貪る。

 頭がぼんやりして、何も考えられない。とにかく、自分の欲望に身を任せたい。

 ルカの身体をぎゅっと抱きしめて、そのまま、ぐるりと体勢をいれかえた。

「ああ、ルカ、ごめん、とまらない」
「きゃ……、んっ、やっ……んむっ」

 与えられる快楽のままに、ルカを組み敷いて上から深く貫く。声を奪うように唇を重ね、両手でルカの乳房を揉みしだいた。ぬかるみを打つような水音が激しく部屋の中にこだまする。俺に組み敷かれながらも、ルカの尻尾は俺の中に深く埋まっており、断続的に快楽を与えてくる。身体のすべてにルカを感じてもっとルカがほしくなる。

「ルカ、ルカ、まだ、もっと……おしりにもいっぱいちょうだい」

 愛を囁やけないかわりに、柔らかなルカの首筋に噛みつき歯を立てる。跡がつくほど歯をあて、さらに唇の跡も執拗につけた。肩に、鎖骨に、胸に、触れるところすべてに俺の跡をつける。

「痛っ……!」
「もう離したくない。ルカに俺の印をつけて、今度こそ鎖をつけて逃げないようにして、それで」
「セフィ!?」

 煮え立つ頭でうわ言のように呟きながら、ルカの身体の奥を激しく突き上げる。頬に、耳に、キスしながら、もう自分が何を言っているのかもよくわからない。

 淫蕩な色にふける紅の瞳が、ひたすら欲しかった。

「また、天界にきて。おねがい、俺を一人にしないで」

 返事を聞きたくなくて、口を塞いで背中に粟立つ衝動のままに、ルカに腰をうちつける。
 また、たかまる欲望をルカのなかに放つも、まったく勢いがおさまらない。
 かたいまま、入口付近まで引き抜き、一気に奥まで抉る。何度も繰り返すうちに、泡立った白濁した液が、あふれる。

「もっとルカの中、いっぱいにしてあげる。今日は、このまま孕むまで犯すから。天界でも毎日しようね」
「や、そんなの……んんっ」

 きつく抱きしめ、唇をふさぎ、また激しくルカの身体を貪る。ルカの舌をつかまえて、何度も吸いたてる。

 きっと、唇を離したら、ルカは俺の言葉を拒否するだろう。それを聞きたくなくて、どこまでもルカを追い詰めるように攻めたてる。

「ルカ、かわいい。もっと、ずっといっしょにいたい」

 もし、だめって言われたら、このままルカを食べちゃいそうで、こわかった。
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