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番外:万聖節1※

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 さわさわと頬にあたる遠慮がちな柔らかさが心地よい。それは、熟す直前の桃みたいな香り。額に触れて、唇に触れる。

 まどろみは深く、目を開けることも覚束ない。それでも、その香りがもっと欲しくて、まるで生まれたての子犬のように探してしまう。

 鈴を転がすような小さな笑い声とともに、求めたものが唇に降ってくる。鼻孔をくすぐる大好きな香りと、唇に触れる湿った柔らかな感触。

 何度も角度を変えて押しつけてくる、柔らかな甘みに、意識が浮上する。

 薄く目をあければ目の前に楽しげな紅い瞳。

「ん……ルカ、すき」

 ぬるりと口の中に湿ったものが入ってくる感触。

 口内を刺激してくるそれに反応しながら、ここどこだっけ?とおもいだす。

 たしか、ハロウィンの夜にルカに会いに行って。
 そのまま一緒に街をまわってハロウィンを楽しんで。
 二人でおやつをはんぶっこなんかして、お話してたら、なぜかルカが膝枕してくれたんだった。

 その後の記憶がない。

「えっ、俺、寝ちゃった!?」
「わっ」

 いきなり起き上がった俺に、ルカがおっとっと、とバランスを崩す。慌てて手を出して支えた。

 周りを見渡すと、そこはホテルの一室だった。
 目の前には夜景が広がる大きな窓。
 俺は、キングサイズのベッドに足を伸ばして座ったルカの膝のうえに頭をのせて寝ていた。

「うとうとしてたから、膝枕したらすぐねちゃったよ?」

 ルカがくすくす笑ってる。

「昨日、あまり寝れなかったの?」

 図星だった。
 昨日はうきうきしすぎてあまりよく眠れなかった。

 ハロウィンの夜に会いに行こうと決めてから、入念に準備したのだ。

 基本、喜捨まみれの天界は、金はうなるほどある。誰が使ってもいいけど誰も使わないから余りまくってる。だから、街で一番眺めの良いホテルの一番良い部屋を予約した。
 人間のときに、ルカ以外の悪魔に襲われないように、ありったけの悪魔祓いの道具やめくらましの術札なんかを用意した。
 服装にもこだわって、ちょっとでもルカにかっこいいと思われる服を選びに選んだ。

 準備万端のはずだったんだけど、いざ明日はハロウィンと思うと、昨日はどうにも目が冴えて眠れなかったのだ。

 慌てて時計を見る。
 もう、明け方近い。
 なんてこと。

「ルカ、ごめん!せっかく会えたのに」
「セフィの寝顔堪能できたからいいよ」 

 いたずらするとかいいながら爆睡とか、我ながら間抜けすぎる。

 額に手を当てた俺の袖をルカがちょんちょんとひっぱった。

「いたずらしないの?」

 ◇◇◇

 ふわふわと俺の手の中で、やわらかなふくらみが形をかえる。

 服の上からその頂きを、そっと撫でればくぐもった声が俺の唇の下から漏れる。

 ベッドの柔らかさ感じながらより深く舌を絡めた。

 キングサイズのベッドは、ルカを貪る俺をやすやすと受け止めて軋みすらあげることはない。

 先程から仰向けでなすがままに身を任せているルカは、黒のワンピースを身に纏っている。首元まできっちりボタンがしまる露出度が低い服だ。

 ちなみに、この服も俺が選んでいる。いつもの悪魔コスチュームは露出度が高くて、俺としてはもっといろいろ隠したかった。

 二人っきりの今となっては脱がしちゃうんだけど。

 胸のボタンをぷちぷちはずすと魅力的な曲線が現れる。それとともにまた、みずみずしい桃のような香りが匂い立つ。

 色づいた頂きには触らないようにしながら、すべすべのふくらみを、やわやわと揉む。さらに服の中に手を入れて滑らかな肌を撫でまわしながら、服を脱がしていく。翼や尻尾がひっかからないように、細心の注意を払った。

「ん……セフィも……」

 袖を引っ張られて、俺も服を脱ぐ。ルカを脱がすときは丁寧にできたのに、自分が脱ぐとなると妙に気がはやってもどかしい。
 乱暴ともいえる手つきで服を全部脱ぎ、まるでうっかり陸にうちあげられた魚が、元の湖水に戻るような慌ただしさで、ルカと肌を重ねる。
 体重をかけないように、ぎゅっと抱きしめて、体全体、ルカに触れてないところがなるべく少なくなるようにぴったりとくっつけた。
 俺自身はすでに限界近くまで熱く硬くなっている。それをルカの下腹に押しつけながら、腰を動かしたいのを我慢した。

 一年ぶりのルカの肌。性急にガツガツしてしまわず、ゆっくり堪能したい。俺の背筋の方で、ちりちりと、はやくやることやってしまいたいと騒ぐ気持ちはあるものの。なんとか、それをおさえこんで、ルカの頬に口づける。

 頬から首筋へ、鎖骨へ、二の腕へ。ルカのすべてを味わいたくて、体中あますところなくキスして味わう。
 敏感に反応するところはあまり触りすぎないよう、軽くキスするだけにとどめた。

 それでも、俺の唇が触れるたびにルカが小さくぴくぴく震える。その震えは少しずつ大きくなっているようだった。

 肩につるつるした細いものがあたる感覚に、見ればルカの尻尾だった。細い尻尾が俺の肩をなでなでしてる。

「セフィ、もしかして焦らしてる?」
「焦らしてるというか、味わってる?こんなふうに」

 尻尾をつかまえて、先端にキスして舐める。さきっちょが平らになった三角形の側面に、執拗に何度も唇をおしつけた。

「ひゃっ」

 びっくりしたのか、逃げようとする尻尾をさらにつかまえて、音を立てていっぱいキスする。

 なんだか我慢できなくなって、尻尾の先をぱくっと咥えた。

「んん、セフィ、だめ」

 慌てて逃げようとする尻尾を掴んで、吸いたてる。口の中に甘いような苦いような何かが広がる錯覚。それとともに、頭がぼんやりしてくる。

「セフィ、ほんとに、だめ!夜が明けたあとならいいから!」

 怒られた。
 本当にだめだったらしい。尻尾はしなるように逃げていき、かわりに起き上がったルカがちょっと怖い顔で唇を重ねてくる。

「もう!ぜんぶだして!」

 さっきの甘苦い味を奪うように口内をおもいっきり吸われた。

「舌、出して」

 言われるがままに舌をだすと、揉むようにルカの口の中でねぶられる。ルカが少し角度を変えるたびに、黒い翼が軽くはためくのがみえた。

「セフィ、大丈夫?気分悪くない?変に胸がドキドキしない?」

 ひとしきり、俺の口内を吸ったあと、ルカが心配そうに俺の頬に両手をあててくる。真紅の瞳でのぞきこまれて、胸がドキドキした。

「もうだめかも。胸が破裂しそう」
「たいへん、どうしよう」
「ルカが、こうしてくれたら治るんじゃないかな」

 がばっとルカを仰向けに倒す。華奢な足をM字になるように大きくひらき、その中心、すでにうるみきったそこに触れる。

「ここ、指で開いて?」

 ルカの指を彼女の秘所に導いて、ルカ自身の指で大きく左右に開いてもらう。綺麗に色づく襞の奥を、ルカが俺に晒してくれている事実に昂ぶった。

「すごくいい感じ、奥まで見せて?指、離さないでね」
「これ、胸のドキドキと関係あるの?」
「特効薬だとおもう」
「ぜったいちが……んっ」

 べろりと舌で襞を舐めあげると、ルカがぴくりと跳ねて、熟れた桃に似た匂いが香る。

 逃げられないよう足をおさえ、唇を押し当てて優しく口の中でなめる。少しずつ刺激を強くしていくたびに、ルカが身をよじるのを腰を掴んでおさえた。

 あふれる蜜を舌ですくいつつ、ルカの反応をみながら愛撫していく。余裕がありそうなら刺激を与えて、達しそうなら少し触れるのをやめるといったぐあいに。

 舌先でちょんちょんと、僅かな刺激を与えていると、ルカが切なげに囁く。

「セフィ、焦らさないで」
「ルカはいきたいの?」

 顔を赤らめてちっちゃく、うなづくのがみえた。
 悪魔なのに、こういうときに恥ずかしそうにするとか、ずるいと思う。ぐらぐらきてしまう。

「いくなら、一緒にいきたい」

 肩を引き寄せてだきしめ、随分とほぐれたルカの潤みに、俺のものをあてがう。確認するように上下に先端を擦りつければ、溢れた蜜が絡まり、吸いついてくる。

「ねえ、ルカ、俺におねだりして?ルカのここ、俺のがほしいみたい」

 顔を真っ赤にして目を伏せてるルカの頬にキスしながら、無茶な要求をしてみる。
 ふるふると首を振るルカの目尻に何度も口づけては囁いた。

「ほらここ、さっきみたいに指で開いて。俺の目を見て、ルカの気持ちを聞きたいな」

 唇にも何度も浅くキスを落としながら、ルカの入り口付近を、円を描くようにゆっくりと刺激した。

 観念したように、ルカが俺を真紅のまなざしでとらえる。
 潤みきっていつもより深みを増したその色合いに見つめられただけで、俺のほうがどうにかなりそうなんだけど、なんとか堪えた。

「セフィ、大好き。なかにいっぱい、いれて?」

 ルカが自身の潤みを両の指でひらいて、まるで俺に差し出すように足を開く。

「俺も、ルカが大好き!」
「ああっ……そんな、待って……っ」

 気づいたら、ルカが好きって何度も言いながら、奥深くまで埋めていた。きつく締めてくる襞の感覚に腰が溶けそうなんだけど、ぐっとこらえる。

 軽く途中の記憶がないんだけどなぜかな。
 もっとゆっくりじっくり、挿れる予定だったのに。

「ルカが魅力的すぎて、俺がどっかいっちゃいそう」

 今さらながら、動きを止めてルカの中を味わう。俺の下で、ちょっとつらそうに眉を寄せるルカの身体が震えるたびに、奥の方まで締められて、ぞくぞくと快楽が背中をたどる。

「また……そんな、焦らしちゃ……だめ」
「ごめん、一年ぶりだから、ゆっくりしたくて」

 ぎゅっとだきしめて、上から潰すように腰に重みをかける。逃がさないように、ルカのやわらかなお尻を両手で握ってぎゅっと引き上げた。
 そのまま、ゆるゆると奥を刺激する。

「ルカ、好き、大好き」
「あ……はっ……む……あぁっ」

 何度も唇にキスしながら、かわいい声をたまに邪魔するように触れる。少しずつ、俺とルカの間の水音が存在感を増す。
 奥をえぐるたびに、ルカのなかがうねって、俺を少しずつ追い詰めた。

「ん……俺、そろそろ」

 ぞくぞくと背筋を登る気持ちよさのままに、身体を預けてひたすら、ルカの身体を揺さぶる。

 首の後ろに、細い手がまわされて抱きしめてもらえるのが嬉しくて、軽くのけぞるルカの首筋に甘く噛みついた。

 その瞬間、身体の奥に弾けるような熱さ。

 性的な熱さではない、膨大な力が流れ込む感覚。

「…………へっ!?」
「んっ、セフィ!?」

 まばゆい光が俺を包む。
 この感覚は、過去に一度、味わったことがあった。
 そう、あのサバトが行われていた地下駐車場で。

 身体の形がかわる。
 髪の色も瞳の色も変わる。
 黒髪から蜂蜜のような金の髪へ。
 黒眼から宝石を思わせるグリーンへ。

「くっ……ここで、夜明けとか……」

 ばさりと大きくはためく音とともに、背中に現れる慣れ親しんだ翼の感覚。

 ルカを抱きしめる腕も体も、一回り大きくなる。

「んっ……きつ……」

 ルカは反射的に身体を引こうとするも、俺にがっちりと抑え込まれていて逃げられない。もともと根元まで埋まりきっていた俺のものが、みちみちとルカの中を広げて、今まで届かなかった奥まで届く。

「セフィ、そこ、だめ……ああっ」
「ルカ、痛い?大丈夫?」

 ルカのつらそうな声が聞こえるものの、気持良すぎて離す気になれない。衝動のままに、奥を思いっきりえぐる。

「ああっ!はあっ……やっ……やあっ!」

 首を振りながらのけぞる肢体を、組み伏せてギリギリまで抜いてはまた最奥を求める。部屋の中に断続的に水を打つ音が激しく響いた。

「あっ……ああっ……セフィ、奥、だめ……っ」
「なんで、だめ?」
「おかしく、なっちゃう」
「ん……おかしくなっていいよ?」
「や……そんなの……ああっ」

 荒い呼吸の合間に聞こえる、ルカの喘ぎ混じりの掠れた声が俺をなおさら興奮させる。
 ふるふる首を振るルカの真紅の瞳が一瞬揺らめいて大粒の涙が浮かぶ。瞬きとともに、ぽろりとこぼれ、頬を伝う。

「わっ、大丈夫?いたい?つらい?」
「ちがう、きもちよすぎて……んっ……セフィ、好き」

 うわ言みたいなルカの声を聞きながら、頬を伝う雫を舐めた。
 ルカの身体を抱え直し、なめらかな尻の肉に指を立てる。手の中におさまるやわらかさを掴み、腰を何度もうちつける。そのたびに、やわらかな肉が形を変え、ルカが身を捩りながら涙をこぼす。

「ルカ、俺の全部、受け止めて」

 何度もきつく締め上げてくる中に、限界をこえてせりあがる欲望をぶちまける。弓なりに反る身体を抱きしめ、きつくからみつく中に何度も放った。

 荒い息を整えながら、ルカの身体を抱きしめる。ぐったりと弛緩した身体に何度も唇を押し当てた。頬にも、耳にも、首筋にも。頬に残る涙のあとも、舌でなぞる。

「ルカ、無理させちゃってごめん……ルカ?って、ルカ!」

 ルカは脱力して目をつぶって動かない。

「しまった、ごめん」

 まだルカの中に深く入っているものを引き抜いて、慌ててルカを抱えあげる。

 天使のままで、ルカが意識飛ばすまでやっちゃうなんて、明らかにやりすぎた。

「うう、しまった。どうしよう。ごめん、ルカ。俺のこと嫌いにならないで」

 ぎゅっと抱きしめて翼で包むように抱きしめる。汗でしっとりした肌は少し冷えていて、それを温めるようにぴったりとくっつく。
 しばらくそのまま抱きしめていると、掠れた声とともにルカが目覚めた。

「ん……セフィ」
「ルカ!よかった!やりすぎちゃってごめん!いたいとこない?」

 安堵とともに抱きしめる。目をぱちぱちさせてるルカの頬に自分の頬をあててすりすりした。

「大丈夫。気持良すぎて、こんなになったのはじめて」

 自身の腕を抱き、ふるふるっと身体を震わせるルカ。

 俺の頬に手を当てて真紅の瞳でまっすぐ見てくる。そうして、まるで夜霧に佇むバラの蕾みたいな笑顔を俺にむけてくれるのだった。

「つぎは、セフィも、いっぱい気持ちよくしてあげる」

 見惚れている俺に、ルカはキスして、ぎゅっと抱きしめてくれた。
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