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33. 七日目昼➀

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 ゼンは、床に正座していた。
 ちっちゃくなって正座していた。
 家に入ってすぐの、すみっこ。
 外は明るく日差しは強いが、それが届かない日陰の薄暗いところに正座している。
 
 ゼンの前に置かれた椅子には、むっと頬を膨らませたシウ。ゼンがちいちゃくなって正座している高さと、シウが椅子にすわっている高さはだいたい同じなので、目線が合う。
 しかし、ゼンは目も合わせず俯いたまま、だらだらと冷や汗をかいていた。

「魔獣の森で、あんなにするなんて!」

 昨夜、魔獣の森で、嫌がるシウをゼンは強引に抱いた。魔獣狩りでの昂り、魔獣の森に満ちる魔力の影響、そして散々おあずけをくらうなどした挙句、見事にゼンの理性が吹き飛んだ。
 そして現在、絶賛、シウに説教されている。

「しかも、魔族の前で!」

 行為の最中、他人に見えるように、思いっきり足を広げて無理矢理するとか、シウからしたら言語道断である。一応、良家の淑女だったのだ。ゼンはかなり夢中で記憶が朧気だが、それでも文句つけないと気がすまない。
 反省しきったゼンが、なおさら身体をすくめる。

「ダメって言ったのにやめてくれないし! 悲しかったです!」

 ゼンは手で顔を覆った。二度目のやらかしに、悔恨の極みである。

「すまなかった、もうしない」

 絞り出すように、小さな声が指の隙間からもれる。
 ずいぶん反省している様子に、シウの心も少し落ち着いてきた。

 思い返してみれば。
 魔獣の森に勝手に入ったシウが発端だった。
 ゼンだけを責めるのは違うような気もしてきた。
 ゼンが魔獣の森に来てくれたのは、シウを助けるためなのだ。
 
 しゅんと俯くゼンの頭を、シウは優しく撫でる。項垂れる頭を引き寄せて、愛おしげに抱きしめた。

「助けにきてくれたのは、嬉しかったです。私の方こそ、勝手なことしてごめんなさい」

 ぎゅうっと太い腕で抱きしめ返してくるゼンを、さらに撫でる。まるで、甘えてくる大きな犬を撫でている気がした。

(あ、すごく、かわいい。どうしよう。すごくかわいい)

 そういえば、魔獣の森での再会のときも、こんな感じだった。シウはドキドキする気持ちのままに、強くゼンを抱きしめる。すぐそばにある、傷跡だらけの耳にキスをして、そっと耳元で囁く。

「じゃあ、今日は、私がゼンさんを好きにしていいですか?」
「なんでもする」
 
 コクコクと何度も小さく頷くゼンを、シウはまた強く抱きしめた。
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