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 もぞもぞと、薄い光の中、目を覚ます。
 消えかけのロウソクの火がみえた。

「んんー……ふああ」

 寝ぼけ眼をこすりながら、ローゼはランタンに灯りをともす。ランタンがあかあかと周りを照らし出した途端、ロウソクの儚げな火は、もうその役割を終えたとばかりに存在感を失った。

「よしよし、今日も異常なしね。よく寝たあ」

 シュラフから出たローゼは、あたりをぐるりと確認する。まわりに張っておいた魔物忌避剤もやぶられておらず、ローゼが寝つくまえと、周りの風景はなにひとつ変わっていないように見えた。

 もう一度、ふああとあくびをして、シュラフを片付ける。

「んー、顔洗お」

 気持ち良い目覚めだが、もう少しシャキッとしたくて少し離れた地底池までのんびり歩く。特に周りに異変もなく、ダンジョン内は、昨日と全く同じだ。むしろ、心なしかきれいに掃き清められているようだ。
 地底池の表面が、大理石の床のようにピンっと真っ直ぐ静寂を保つのも変わらない。ローゼが指をいれると、わずかに池の表面が揺れ、すぐにまた静けさをとりもどす。
 指先から伝わるしびれるような冷たさに、ローゼの意識がクリアになっていく。
 冷たい水でぱしゃぱしゃと顔を洗い、拠点に戻ってきたローゼは、ふと壁際に見慣れぬものがあることに気づいた。

「黒色のベルシュガー?」

 昨日採集したはずのベルシュガーが、洞窟蔦でぐるぐる巻にされて転がっている。昨日はまんまるだったその表皮は、かるくへこんでいたりして、どこかにぶつけたようだ。
 そしてその横にきれいに並べておかれている黒くて捻くれた物体。

「これって……ミノタウロスの角片!?」

 思わずあたりを見まわしてみるも、魔物の気配はおろか小動物すら見当たらない。

「えと……ラッキー、なのかな?」

 不思議なことがあるものだと首をかしげつつ、ベルシュガーとミノタウロスの角片をバックパックにしまう。

「とりあえず、朝ごはんにしましょ」

 昨日のカノップスープの残りを粥に仕立て、チーズでとろとろにするのだ。
  想像しただけで、胃袋が元気になる。

「はあ、やっぱり、ソロダンジョンたのしー!」

 すがすがしさとともに、ローゼは気持ちよくひと伸びした。
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