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どれだけこの状態がつづいているだろう。ロウソクの火はとうに燃えつきている。前後不覚の暗闇のなか、やわらかく熱い粘体に、ローゼはぐったりと犯されつづけていた。
みちみちと体の奥ふかくでスライムがふるえ、熱い胞子まじりの粘液が吐きだされる。胎内からずるりと抜けると、すぐさま次の刺激があたえられるのだった。
挿れられる刺激も抜かれる刺激も、妙にあまくて本当に勘弁してほしかった。スライムのくせに一回ひきぬく必要なんてあるのか。ないんじゃないか。そんなどうでもいい思考を、快楽がぬりつぶしていく。
何時間犯されつづけただろう。口に出される粘液のせいか、空腹や喉の渇きはない。ただ、睡眠も休憩もあたえられないせいで、ときどき耐えきれずに意識がとぶ。ローゼが気を失うたびにスライムの動きがはげしくなり、強制的な快楽とともに意識がひきもどされるのだった。
そんななか、ローゼはスライムの与える刺激がものたりないことに気づいた。
もっと、強い刺激がほしい。
もっと、かたくて太いのがほしい。
こんな、やわらかなものじゃなくて。
たとえば。
しびれた頭に浮かぶ考えを、必死でふりはらう。もともとローゼは、性欲が強い方ではない。淫らな欲望を自分が抱くことが、信じられなかった。
(だれでもいいから、本当にたすけて)
心の底からのねがいすらも、快楽にぬりつぶされていく。
それは、何度目かの意識をとばしたあとのことだった。
白濁する思考のなか、唇に今までとはちがう感触があった。スライムのつややかな弾力ではない、ざらりとしたぬめり。そして頭の芯にひびく強烈な苦さ。急速に、意識が浮上する。
耳元の声は、男性のものだった。
「……か、…………大丈夫ですか」
いつのまにか、灯りが戻っていた。
断続的に与えられる快楽はなく。
身体をおおっていたスライムの感触もない。
霞む視界のなか、誰かがのぞきこんでいる。口にのこる苦さに、思わずむせた。
「水を飲んでください。楽になりますから」
口元にあたるのは水筒だろうか。水を口に含むものの、うまく飲みこめない。口元まで麻痺しているのだろう。飲みたいのに、唇から水がこぼれるばかりだった。
「すみません、失礼します」
水筒の飲み口の代わりに、柔らかなものが唇に押しあてられる。ゆっくりと水を流し込まれて、やっと飲みこむことができた。
三回目で、ようやく口うつしで水を飲まされていることに気づく。
あらためて、ローゼは自分を抱きかかえている男を見た。灰青色の少しくせのある髪に、透明感のある青い瞳。ととのった顔立ちは、冒険者ギルドでしばしば見かけた気がする。たしか、アッシュと呼ばれていたはずだ。
みるたびに女性に囲まれたり、ねむそうだったりして、女遊びがさかんな男、というのが彼に対するローゼの印象だった。
とくにあの受付嬢と仲がよく、それがローゼは気にいらなかった。だから、彼を見かけてもなるべく視界に入れないようにしていたのだが。
見おろしてくるやさしげな青い瞳に、不覚にも一瞬見惚れた。真正面からみると、確かに女性に騒がれるのがよくわかる風貌だ。
「麻痺を治す薬も飲ませますね。なるべく全部飲んでください」
柔らかに低くひびく声も、耳にここちよい。
次のキスは、水ではなかった。甘く癖のある味が口の中に広がる。それとともに、ぬるりとしたざらつきが舌にからむ。
はからずも先ほどのスライムの感触を思い出し、身体の奥が熱くなる。いつのまにか、ローゼからも舌をからめていることに気づき、慌てて口をはなした。
「ん……ちゃんと、飲めましたね。もう一口飲みましょう」
濡れた唇をぬぐうアッシュのしぐさの色っぽさに、ローゼはめまいがした。男性なのに、ローゼよりも色気を感じるとかどういうことなのか。
(こんなきれいな子と、唇をかさねるなんて)
役得という言葉が一瞬浮かんだのを、ローゼはふりはらう。介抱してくれているのに、邪な気持ちを抱くなんて、彼にもうしわけない。
ふたたび、解毒薬の味が口内に広がる。首の後ろを大きな手でささえられながら、口の中に侵入してくる舌を受けいれる。さすがに今回は、ローゼから舌をからめることはしなかった。おとなしく解毒剤を飲みこむにとどめる。
解毒剤の味がすっかりなくなっても、アッシュはローゼを離してくれなかった。まるで誘うように舌を舐め、唇を食み、わずかに角度を変える。
薄く持ちあがるまぶたの向こうの青い瞳に浮かぶのは淫蕩か、恍惚か。恋人同士みたいなキスをされている錯覚に、ふいにローゼは我にかえった。
「もう、自分で、飲め、る」
「あ……すみません」
速攻性の薬だったようで、飲みおわるころには少しずつローゼの身体はうごくようになっていた。
みちみちと体の奥ふかくでスライムがふるえ、熱い胞子まじりの粘液が吐きだされる。胎内からずるりと抜けると、すぐさま次の刺激があたえられるのだった。
挿れられる刺激も抜かれる刺激も、妙にあまくて本当に勘弁してほしかった。スライムのくせに一回ひきぬく必要なんてあるのか。ないんじゃないか。そんなどうでもいい思考を、快楽がぬりつぶしていく。
何時間犯されつづけただろう。口に出される粘液のせいか、空腹や喉の渇きはない。ただ、睡眠も休憩もあたえられないせいで、ときどき耐えきれずに意識がとぶ。ローゼが気を失うたびにスライムの動きがはげしくなり、強制的な快楽とともに意識がひきもどされるのだった。
そんななか、ローゼはスライムの与える刺激がものたりないことに気づいた。
もっと、強い刺激がほしい。
もっと、かたくて太いのがほしい。
こんな、やわらかなものじゃなくて。
たとえば。
しびれた頭に浮かぶ考えを、必死でふりはらう。もともとローゼは、性欲が強い方ではない。淫らな欲望を自分が抱くことが、信じられなかった。
(だれでもいいから、本当にたすけて)
心の底からのねがいすらも、快楽にぬりつぶされていく。
それは、何度目かの意識をとばしたあとのことだった。
白濁する思考のなか、唇に今までとはちがう感触があった。スライムのつややかな弾力ではない、ざらりとしたぬめり。そして頭の芯にひびく強烈な苦さ。急速に、意識が浮上する。
耳元の声は、男性のものだった。
「……か、…………大丈夫ですか」
いつのまにか、灯りが戻っていた。
断続的に与えられる快楽はなく。
身体をおおっていたスライムの感触もない。
霞む視界のなか、誰かがのぞきこんでいる。口にのこる苦さに、思わずむせた。
「水を飲んでください。楽になりますから」
口元にあたるのは水筒だろうか。水を口に含むものの、うまく飲みこめない。口元まで麻痺しているのだろう。飲みたいのに、唇から水がこぼれるばかりだった。
「すみません、失礼します」
水筒の飲み口の代わりに、柔らかなものが唇に押しあてられる。ゆっくりと水を流し込まれて、やっと飲みこむことができた。
三回目で、ようやく口うつしで水を飲まされていることに気づく。
あらためて、ローゼは自分を抱きかかえている男を見た。灰青色の少しくせのある髪に、透明感のある青い瞳。ととのった顔立ちは、冒険者ギルドでしばしば見かけた気がする。たしか、アッシュと呼ばれていたはずだ。
みるたびに女性に囲まれたり、ねむそうだったりして、女遊びがさかんな男、というのが彼に対するローゼの印象だった。
とくにあの受付嬢と仲がよく、それがローゼは気にいらなかった。だから、彼を見かけてもなるべく視界に入れないようにしていたのだが。
見おろしてくるやさしげな青い瞳に、不覚にも一瞬見惚れた。真正面からみると、確かに女性に騒がれるのがよくわかる風貌だ。
「麻痺を治す薬も飲ませますね。なるべく全部飲んでください」
柔らかに低くひびく声も、耳にここちよい。
次のキスは、水ではなかった。甘く癖のある味が口の中に広がる。それとともに、ぬるりとしたざらつきが舌にからむ。
はからずも先ほどのスライムの感触を思い出し、身体の奥が熱くなる。いつのまにか、ローゼからも舌をからめていることに気づき、慌てて口をはなした。
「ん……ちゃんと、飲めましたね。もう一口飲みましょう」
濡れた唇をぬぐうアッシュのしぐさの色っぽさに、ローゼはめまいがした。男性なのに、ローゼよりも色気を感じるとかどういうことなのか。
(こんなきれいな子と、唇をかさねるなんて)
役得という言葉が一瞬浮かんだのを、ローゼはふりはらう。介抱してくれているのに、邪な気持ちを抱くなんて、彼にもうしわけない。
ふたたび、解毒薬の味が口内に広がる。首の後ろを大きな手でささえられながら、口の中に侵入してくる舌を受けいれる。さすがに今回は、ローゼから舌をからめることはしなかった。おとなしく解毒剤を飲みこむにとどめる。
解毒剤の味がすっかりなくなっても、アッシュはローゼを離してくれなかった。まるで誘うように舌を舐め、唇を食み、わずかに角度を変える。
薄く持ちあがるまぶたの向こうの青い瞳に浮かぶのは淫蕩か、恍惚か。恋人同士みたいなキスをされている錯覚に、ふいにローゼは我にかえった。
「もう、自分で、飲め、る」
「あ……すみません」
速攻性の薬だったようで、飲みおわるころには少しずつローゼの身体はうごくようになっていた。
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