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出会い
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しおりを挟むへぇ、なんか話だけ聞くとさらになんかとんでもない学校だったんだなぁ。なんてしみじみ。
「でもみな、ぎし? の場合作ろうと思えばすぐできるんじゃねーの。さっきの声かけ大会とかすごかったじゃん」
「そうなんだけどねぇ。あたしもそう言ってるんだけどぉ」
こいつがねぇ、と呆れの溜息を漏らす恵に水岸が居心地悪そうに身を揺らす。
「あ、そーよそうだわよ。あたしいー事思いついちゃった」
語尾にハートマークをつけながら手をポンッと合わせた恵に、俺と水岸の視線が集まる。
「いーことって?」
「あんたら二人がコンビ組んじゃいなさいよ。せっかく知り合ったんだし、ちょうどアイドル科とマネージャー科だし」
「え……」
「そうよそうしなさいよ。ね、絃」
こちらの言い分も聞かずどんどん話を進めて行こうとする恵。ちょっと待て、と静止をかけようとすれば「おだまり」とまたまた一喝されてしまう。てか、素。素出てるぞ。
「どーせこいつこっちから強引に行かなきゃ決められないんだから」
「そりゃ、そうかもしれないけど……」
でもそういうのって、やっぱお互いの気持ちも大事な気が……。
「まぁ、俺は別に。水岸さえよければ。今の所仲いい奴恵だけだし」
こう見えて結構人見知りなんだよな俺、と頬をぽりぽりかきながら了承の意を示す。が、対の水岸から出た言葉は
「ごめんなさい! あの、俺実はもうパートナー誰にするか決めてて。なかなか声かけられないだけなんです。だから、その……」
「パートナー決まってるぅ? なーによ、だったらさっさと組んじゃいなさいよ面倒くさいわね」
「はい……。だから、すみません!」
すごい勢いで頭を下げられたもんだから、なんかこっちの方が恐縮してしまう。
「や、別にそんな謝ることじゃ……それに俺まだマネージャーとして勉強始めたばっかだしさ。そんな素人に担当されるよりはちゃんと学んだ奴についてもらった方が水岸的にもいいだろうし」
気にすんなって! と肩をポンポンと叩いてやれば、水岸が安心した様に頬を綻ばした。
その隣にいた恵は納得いかない、とちょっとぶすくれ顔だ。
「まぁそーなら仕方ないわよねぇ。ま、さかえちゃんのパートナーならあたしが他にもめぼしい子紹介したげるわ」
「サンキュー」
「で、お前は人の執務室で何やってるんだ」
「へ?」
高そうな大理石のテーブルの上に何十枚と紙を広げうなっていると、頭上からそう言葉を落とされ空を仰いだ。すると、呆れ顔の阿蘇さんが上から俺を見下ろしていた。
「あれ、終わったんだ書類の片付け」
「当然。僕を誰だと思ってる」
腕を組んで鼻息あらくふんっと言い切った阿蘇さんに、今度は俺が呆れの笑いをもらした。
「しゅうたろう、コーヒー」
「かしこまりました」
俺の向かいのソファーへと深く腰掛け、で? と顎をしゃくる。
「それ、うちの学生のプロフィール表だろ。そんなもの広げて何やってる」
「何って、課題のパートナー探し。まだ決まってないんだよ」
「それはいい。それを何故ここでやってるんだって聞いてるんだ僕は」
「え、や、一人じゃなかなか決めれなくてさ。茶々さんに相談しようかと」
「こいつに相談、ねぇ」
足を組みながら茶々さんに渡されたコーヒーをすする阿蘇さんはどこか不機嫌そうに言葉を返してくる。
なんだ、また機嫌悪いのかこいつ?
「まぁパートナーの決め方にどうしろこうしろとはこちら側は関知しない。好きにやればいい。しゅうたろう手伝ってやれ」
「はい」
さも当たり前の様に命令口調でいう阿蘇さんに、茶々さんも当たり前の様に返事を返す。
最近やっとこの二人のやり取りにも慣れてきた気がする。
最初は一回り近く歳の上な茶々さんを顎で使うこの子供(といっても俺とはそんな歳変わらないけど)に驚いたもんだ。けど茶々さんがこの間言ってたパートナー云々の話を照らし合わせれば納得しちまうんだよなぁ。
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