7 / 17
試験開始
しおりを挟む
契約式から二週間。とうとう初めての試験がきた。
あれから星宮さんとは仲良くやっているし、丘崎なんてもうどうでもいい。
ただ、未だに星宮さんの使う魔法が何か分からない。授業では俺が先生に呼ばれたり、皆に囲まれているうちに終わっている。そんな彼女の口癖は「月森双夜がやってくれた」。俺の魔法に気付き、言葉にせずとも魔法を作る彼女は、どうみても「何も出来ない」わけじゃない。言ってしまえば、多分かなり強い魔力の持ち主だ。それでも一年間何も出来ない素振りをしてきたのには何か訳があるはずで、だから俺からは何も言わない。
「よ、双夜。調子はどう?紗那ちゃん、大変じゃない?」
それが全く大変じゃないよ。てか、お前が俺に変なこと吹き込んでくれたおかげで、彼女の魔法を何一つ見ずに自分勝手に彼女を責めちゃったよ。
……なんて言わないけどさ。
「…はは」
「雷羅、行くよ?」
分かってるって、そう芽衣に返事をする雷羅の指には氷のリングがはめられている。
「あれ、前までは水じゃなかった?」
「ああ、これ。芽衣と交換したんだ。俺は水系が得意だけど、芽衣は氷の魔法が得意だから。このリングって本人の得意魔法で変わるんだって。すごいよな」
じゃあな、と雷羅は芽衣のもとへ走っていく。
そっか。皆もうリング交換したんだ。
「あれ、月森君はまだリング交換してないんですかぁ?」
この嫌みたらしい言い方をするのは一人しかいない。
「…何だよ、丘崎」
「いいや、別に。まあそうだよな。お前は一人で出来ちゃうからな。星宮さんは邪魔だろ。リングを交換したら嫌でもパートナーの情報が入ってくる。お前にとってそれは足かせでしかない。それにリングは持ち主の強さを象徴するもの。リング交換なんて恥ずかしくてできないだろ。分かるよ、俺も出来ないからな。ま、せいぜい頑張れよ。何て言ったって勝負はもうついてるからな」
高笑いしながら去っていく丘崎の後ろをペコペコしながらパートナーの子がついていく。
あいつ、あんなこと言って俺に勝ったつもりなのかな?
それにしても確かに丘崎が言った通り、リングは持ち主に合わせて変化するから、魔力の強さを表しているも同然。
「どうかしたの?」
気づくと隣には星宮さんがいた。
話、聞かれてたか……?
「いや、何でもないよ」
彼女に笑いかけて前を見る。
リング交換、どうしようかな……。
「それではただ今より試験内容を発表する」
学院長の声が響く。
「内容は至って簡単。これからそれぞれのペアを異空間に送る。そこには我々が用意した一体のモンスターを既に送り込んでいる。モンスターの首にはペンダントがかけられているから、それを取ってくる。これが第一回の試験内容だ。では、健闘を祈る」
話が終わったとき、あちらこちらから光があふれた。
そしてまもなく俺たちもその光に包まれた。
あれから星宮さんとは仲良くやっているし、丘崎なんてもうどうでもいい。
ただ、未だに星宮さんの使う魔法が何か分からない。授業では俺が先生に呼ばれたり、皆に囲まれているうちに終わっている。そんな彼女の口癖は「月森双夜がやってくれた」。俺の魔法に気付き、言葉にせずとも魔法を作る彼女は、どうみても「何も出来ない」わけじゃない。言ってしまえば、多分かなり強い魔力の持ち主だ。それでも一年間何も出来ない素振りをしてきたのには何か訳があるはずで、だから俺からは何も言わない。
「よ、双夜。調子はどう?紗那ちゃん、大変じゃない?」
それが全く大変じゃないよ。てか、お前が俺に変なこと吹き込んでくれたおかげで、彼女の魔法を何一つ見ずに自分勝手に彼女を責めちゃったよ。
……なんて言わないけどさ。
「…はは」
「雷羅、行くよ?」
分かってるって、そう芽衣に返事をする雷羅の指には氷のリングがはめられている。
「あれ、前までは水じゃなかった?」
「ああ、これ。芽衣と交換したんだ。俺は水系が得意だけど、芽衣は氷の魔法が得意だから。このリングって本人の得意魔法で変わるんだって。すごいよな」
じゃあな、と雷羅は芽衣のもとへ走っていく。
そっか。皆もうリング交換したんだ。
「あれ、月森君はまだリング交換してないんですかぁ?」
この嫌みたらしい言い方をするのは一人しかいない。
「…何だよ、丘崎」
「いいや、別に。まあそうだよな。お前は一人で出来ちゃうからな。星宮さんは邪魔だろ。リングを交換したら嫌でもパートナーの情報が入ってくる。お前にとってそれは足かせでしかない。それにリングは持ち主の強さを象徴するもの。リング交換なんて恥ずかしくてできないだろ。分かるよ、俺も出来ないからな。ま、せいぜい頑張れよ。何て言ったって勝負はもうついてるからな」
高笑いしながら去っていく丘崎の後ろをペコペコしながらパートナーの子がついていく。
あいつ、あんなこと言って俺に勝ったつもりなのかな?
それにしても確かに丘崎が言った通り、リングは持ち主に合わせて変化するから、魔力の強さを表しているも同然。
「どうかしたの?」
気づくと隣には星宮さんがいた。
話、聞かれてたか……?
「いや、何でもないよ」
彼女に笑いかけて前を見る。
リング交換、どうしようかな……。
「それではただ今より試験内容を発表する」
学院長の声が響く。
「内容は至って簡単。これからそれぞれのペアを異空間に送る。そこには我々が用意した一体のモンスターを既に送り込んでいる。モンスターの首にはペンダントがかけられているから、それを取ってくる。これが第一回の試験内容だ。では、健闘を祈る」
話が終わったとき、あちらこちらから光があふれた。
そしてまもなく俺たちもその光に包まれた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる