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58. 時を刻みし魔導書

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 58. 時を刻みし魔導書



 オレはいつも通りリビングでくつろいでいると咲夜さんが嬉しそうにやってくる。

「あら?ちょうど良かったわ颯太君。ちょっとこっちにきて」

「ん?」

 手招きされて咲夜さんの元へいく。そして椅子に座る。なんだろうか?またなんかの作戦会議か?

「もうすぐ夏休みじゃない?あっ違った。魔王城から長期離脱するじゃない?」

 もう夏休みって言っちゃってるけど咲夜さん……。まぁ楽しみなのはオレも分かる。高校生初めての夏休みだもんな。

「それでね。私たちは色々なパーティー攻略をするべきだと思うのよ。つまり私と颯太君はお互いのスケジュールを把握し合うべきよね!」

「なるほど」

 まぁパーティー攻略するしないはおいといて、同居をしてる以上スケジュールが分かるなら助かる。それに咲夜さんの予定を把握できるわけだからいいことだらけじゃないか。

「じゃあこの、時を刻みし魔導書に書き記しましょうか」

「時を刻みし魔導書……」

 うん。たぶんカレンダーのことだろうな。とりあえず書いていくか……。オレが書き始めようとすると咲夜さんはまったく書く様子がない。

「咲夜さん……?」

「ん?どうかした?」

「いや、咲夜さん書かないの?」

「私は夏休みの予定ないから。」

 さらっと悲しいことを言わないで欲しい。

「実家とかに帰らないのか?」

「ええ。両親は海外にいるから。どうせこっちに戻ってこないしね」

 もしかして……咲夜さんってお嬢様!?でもその割には……。うーん謎だ……。

「颯太君の予定は?」

「オレも特にないかな。ずっと家にいるんじゃないかな?」

「ふふ。ならこの時を刻みし魔導書が空白の魔導書になるわね?」

 いや空白の魔導書はノートだよね咲夜さん……ノートだよねじゃねぇ!だんだん咲夜さんのがうつってきたんじゃないかこれ?

 オレはなんだか嬉しいんだか嬉しくないんだかそんな感情になるのだった。
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