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523. 姫は『震える』そうです

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523. 姫は『震える』そうです



 そして10月5日。秋の大型企画配信が始まる。彩芽ちゃんは事務所のスタジオ収録なので朝早く家を出ていった。

 オレは行楽地に車で向かうことになっているので配信開始は12時からの予定となっている。

 他の配信はもう始まっており、各々ミッションの秋を遂行中だ。

 車は一ノ瀬さんが事務所から乗って、七森さんと高坂さんを迎えに行ってからオレの家にきてくれることになっている。今は準備をして家で待っている。

「あんた緊張しすぎじゃない?」

「あのな……人の命を預かるんだぞ、緊張するに決まってんだろ?」

「車くらいで大袈裟ね……男なんだからシャキッとしなさい!」

「性別関係ないだろ!これだから古い考えのやつは……そんなんだから男が出来ない……」

「あ?なんか言った?」

「いや何でも……」

 桃姉さんに睨まれる。誰かこの姉を何とかしてくれ。そして11時30分。一ノ瀬さんたちが家に着く。

「お疲れ様です神崎先輩」

「うん。お疲れ様」

「神崎さん運転大丈夫ですか?」

「まぁ……大丈夫だと思うよ」

「それにしても旅行楽しみですね!本当にご褒美ですよ!」

 一ノ瀬さんは旅行でテンションが上がっているらしい。というか……みんなの私服見るの初めてだな。あまりこうやってプライベートで会うことがないから。

 急に緊張してきた……本当に大丈夫かな?出発する前に高坂さんが『行楽の秋』の配信の内容を説明してくれる。

「これから向かう場所は山梨県と長野県の境にある行楽地です。配信では特定の地名や距離などの発言は控えてください。あと、立ち絵に『運転中』とリスナーさんに分かるようにしますので、運転中は神崎先輩と一ノ瀬さんは無理に雑談に参加せず安全運転でお願いします。それと夜の配信は21時から予定してますのでよろしくお願いいたします。何か質問ありますか?」

「SNSは文章だけの投稿?写真はまずい?」

「そうしていただけると助かります七森さん」

「運転はどうしますか?神崎マネージャー?」

「行きはオレが運転するよ。帰りが一ノ瀬さんでいい?」

「分かりました」

 そんなやり取りをして出発する。車はレンタカーで少し大型の車種を借りたらしい。とりあえず運転席にオレ、助手席に高坂さん、後ろに七森さんと一ノ瀬さんが座る。

「それじゃ配信開始してください。一ノ瀬さん」

「はい」

 そして12時。高坂さんの合図と共に配信が始まる。ちなみにオレは無線のマイクをつけている。あまり会話しないとしてもオレの声が入るとまずいからな。これで『姫宮ましろ』の声になれるから問題ない。

 コメント
『秋の大型楽しみ!』
『行楽の秋始まった!』
『姫頑張って』

「あけました。皆さんこんにちはです。狙うは幸せ!一攫千金!ラビラビカジノへようこそ!Fmすたーらいぶ4期生、全力バニーガールこと園崎ラビ。『行楽の秋』のリーダーとして頑張るのでよろしくです!」

「おう!Fmすたーらいぶ2期生、最強の女刑事とはこの遠山さくらのことだい!今から地獄のドライブが始まるのでよろしくw」

「こんにちは。皆さまの一等星を明日の物語へ紡いでいきましょう。Fmすたーらいぶ5期生、星影つむぎです。よろしくお願いします。そして」

「皆さんこんにちは。Fmすたーらいぶ1期生、みんなの姫こと姫宮ましろです。手がめっちゃ震えてるけど頑張るのでよろしく!」

 コメント
『姫w』
『草』
『安全運転で頑張ろ!』

「おい!大丈夫かよましろ先輩w」

「ここだけの話、今までのFmすたーらいぶの活動の中で1番緊張してるw」

「もう喋んなくていいからw運転集中してくれいw」

「あの安全第一でお願いしますね姫様」

「行きの配信中はましろ先輩が運転しでますがら、ラビたちが盛り上げていますのでよろしくです!それじゃ出発しましょう!」

 ということで、『Fmすたーらいぶ秋の配信ウィーク!チームで達成しろ◯◯の秋!ミッション:インポッシブル』の1日目の配信が始まるのだった。
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