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338. 姫は『かましてやる』そうです
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338. 姫は『かましてやる』そうです
そして4月中旬。オレは星乃社長から事務所に呼び出されていた。こうやって呼び出されると言うことはとても重要な案件なんだろうけど。一体なんなんだろうか。
社長室に入ると、星乃社長はいつも通り書類の束に目を通しながら待っていた。
「失礼します。おはようございます」
「お疲れ様弟君。呼び出して悪かったわね。そこに座って?」
さう促されソファに座る。さて一体どんな話が飛び出してくるのか……星乃社長はある書類をテーブルに置いて、オレを見る。そして口を開いた。
「あまり良い話ではないんだけど、それを見てもらえるかしら?」
「これは……市場調査アンケートですか?」
【Vtuber事務所と言えば?】
1位 Vパレスプロダクション
2位 Fmすたーらいぶ
3位 Make world!
「2位?すごいことじゃないですか。ここまで知名度が上がってるなんて嬉しいですね」
「問題はそこじゃないわ。もうひとつのアンケートよ」
「え?『個人勢に聞いた、もし企業勢になるなら?』……8位ですか」
「これが、どういうことか分かるかしら?つまりこの『Fmすたーらいぶ』は同業者からは支持されていないということ。理由は様々あるけど、多かったのは『お堅いイメージ』『厳しそうで自由がなさそう』『他の箱との絡みがない』そうよ」
それを聞いてオレは押し黙る。確かにそういうイメージはあるのかもしれない。ちなみに1位の『Vパレスプロダクション』は総勢30名を超える男女混合のVtuberを抱えている大手の事務所。初期の頃から人材確保に注力しており、個人勢のスカウト活動も積極的におこなって大きく急成長をした。
他の箱や個人勢とのコラボも積極的におこなっており、親しみやすい箱として人気があるんだろうな。
「今まではVtuberが集まるネット番組やイベントは大体リリィさん、ひなたさんが参加している。それも多いわけではないのも事実。それで、Vパレさんにお願いしてゴールデンウィークにコラボを計画しているわ。もちろん先方も乗り気ですぐにOKをもらえたわ」
「つまりコラボをしろと言うことですか?まさかオフコラボですか?」
「いえ。あなたには事前にあるライバーさんとコラボをして、ゴールデンウィークの『Vすたコラボ』を宣伝してもらいたいの」
「あるライバー?」
「ええ、Vパレスプロダクションの1期生の『白鷺ステラ』さんよ」
『白鷺ステラ』Vパレスプロダクションの1期生。見た目は金髪でスタイルが良く、異世界のギルド受付嬢の格好をしているお姉さん。雑談配信から歌配信、色々な企画も積極的に行っている。Vパレの始祖にしてエース。かなりの大物Vtuberだ。
「白鷺ステラさんはつい先日100万人登録者を達成したわ。そして週末にそれをお祝いした逆凸待ちをするの。そこで『姫宮ましろ』に逆凸してもらってコラボの告知をしてもらうわ。いいわね?こちらからお願いしている立場ではあるけど、これはお互いの事務所の垣根を越えて、Vtuber業界をより盛り上げるための戦略よ。この機会を無駄にはできない」
「分かりました」
「ありがとう弟君。いつもあなたに……『姫宮ましろ』に頼りきりで申し訳ないわね」
そして家に帰り、自分の部屋のベッドで横になり社長の言葉を思いだしていた。
「……お願いしている立場……か」
確かにVパレスプロダクションは大手だし、Fmすたーらいぶのほうが事務所としては下なのかもしれない。でも……知名度をここまであげられたのはライバー全員……いやFmすたーらいぶのスタッフさんも含めて全員の努力のおかげだ。そうだFmすたーらいぶだって負けてない。
「よし。……『白鷺ステラ』さんはVパレスプロダクションの始祖にしてエース……なら『姫宮ましろ』だってFmすたーらいぶのエースだ」
同じVtuberに優劣なんかないだろ。オレはオレらしく、いや姫宮ましろらしく、Fmすたーらいぶのライバー代表としてここは……一発かましてやるか。
そして4月中旬。オレは星乃社長から事務所に呼び出されていた。こうやって呼び出されると言うことはとても重要な案件なんだろうけど。一体なんなんだろうか。
社長室に入ると、星乃社長はいつも通り書類の束に目を通しながら待っていた。
「失礼します。おはようございます」
「お疲れ様弟君。呼び出して悪かったわね。そこに座って?」
さう促されソファに座る。さて一体どんな話が飛び出してくるのか……星乃社長はある書類をテーブルに置いて、オレを見る。そして口を開いた。
「あまり良い話ではないんだけど、それを見てもらえるかしら?」
「これは……市場調査アンケートですか?」
【Vtuber事務所と言えば?】
1位 Vパレスプロダクション
2位 Fmすたーらいぶ
3位 Make world!
「2位?すごいことじゃないですか。ここまで知名度が上がってるなんて嬉しいですね」
「問題はそこじゃないわ。もうひとつのアンケートよ」
「え?『個人勢に聞いた、もし企業勢になるなら?』……8位ですか」
「これが、どういうことか分かるかしら?つまりこの『Fmすたーらいぶ』は同業者からは支持されていないということ。理由は様々あるけど、多かったのは『お堅いイメージ』『厳しそうで自由がなさそう』『他の箱との絡みがない』そうよ」
それを聞いてオレは押し黙る。確かにそういうイメージはあるのかもしれない。ちなみに1位の『Vパレスプロダクション』は総勢30名を超える男女混合のVtuberを抱えている大手の事務所。初期の頃から人材確保に注力しており、個人勢のスカウト活動も積極的におこなって大きく急成長をした。
他の箱や個人勢とのコラボも積極的におこなっており、親しみやすい箱として人気があるんだろうな。
「今まではVtuberが集まるネット番組やイベントは大体リリィさん、ひなたさんが参加している。それも多いわけではないのも事実。それで、Vパレさんにお願いしてゴールデンウィークにコラボを計画しているわ。もちろん先方も乗り気ですぐにOKをもらえたわ」
「つまりコラボをしろと言うことですか?まさかオフコラボですか?」
「いえ。あなたには事前にあるライバーさんとコラボをして、ゴールデンウィークの『Vすたコラボ』を宣伝してもらいたいの」
「あるライバー?」
「ええ、Vパレスプロダクションの1期生の『白鷺ステラ』さんよ」
『白鷺ステラ』Vパレスプロダクションの1期生。見た目は金髪でスタイルが良く、異世界のギルド受付嬢の格好をしているお姉さん。雑談配信から歌配信、色々な企画も積極的に行っている。Vパレの始祖にしてエース。かなりの大物Vtuberだ。
「白鷺ステラさんはつい先日100万人登録者を達成したわ。そして週末にそれをお祝いした逆凸待ちをするの。そこで『姫宮ましろ』に逆凸してもらってコラボの告知をしてもらうわ。いいわね?こちらからお願いしている立場ではあるけど、これはお互いの事務所の垣根を越えて、Vtuber業界をより盛り上げるための戦略よ。この機会を無駄にはできない」
「分かりました」
「ありがとう弟君。いつもあなたに……『姫宮ましろ』に頼りきりで申し訳ないわね」
そして家に帰り、自分の部屋のベッドで横になり社長の言葉を思いだしていた。
「……お願いしている立場……か」
確かにVパレスプロダクションは大手だし、Fmすたーらいぶのほうが事務所としては下なのかもしれない。でも……知名度をここまであげられたのはライバー全員……いやFmすたーらいぶのスタッフさんも含めて全員の努力のおかげだ。そうだFmすたーらいぶだって負けてない。
「よし。……『白鷺ステラ』さんはVパレスプロダクションの始祖にしてエース……なら『姫宮ましろ』だってFmすたーらいぶのエースだ」
同じVtuberに優劣なんかないだろ。オレはオレらしく、いや姫宮ましろらしく、Fmすたーらいぶのライバー代表としてここは……一発かましてやるか。
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