上 下
305 / 738

273. 姫は『実現』させたいそうです

しおりを挟む
273. 姫は『実現』させたいそうです



 今日から3月。オレは『姫宮ましろ』の配信と『双葉かのん』のマネージャーの仕事を両立しながら多忙な日々を過ごしている。そして今は事務所で色々な雑務をしながらスケジュールを確認する。

「そう言えば彩芽ちゃん、この前の罰ゲームの『死神ホテル』の実況プレイは今週末だったな」

 自分の『双葉かのん』の雑談配信でも言っていたが、彩芽ちゃんから誰かをオフコラボを誘う日がくるなんてな……なんか泣けてきた。

 オレも今年は色々挑戦したいと思ってるし、彩芽ちゃんも自分なりに頑張ろうとしてるんだな……。そんなことを考えていると、スマホに電話が掛かってくる。相手は月城さんだ。ディスコードではなく、普通にこっちにかかってくるってことは『姫宮ましろ』じゃなく、オレに用があるのか?

「もしもし?」

 《あ。颯太君?今事務所だよね?電話大丈夫?》

「はい。どうしました?」

 《今最寄りの駅にいるんだけど……実はさ……チャージが足りなくて、しかも財布忘れちゃってさw助けてほしいかなってw》

「……酔ってます?」

 《ひどいなぁw1期生のスケジュール見たら、颯太君が事務所にいるから電話したんだよ。私のマネージャー休みでさ。お願い助けて!》

「分かりました。今行きますよ」

 《ありがと!》

 というわけで、オレは月城さんを迎えに最寄りの駅に行くことにする。あの月城さんが財布忘れるとか珍しいな。そして月城さんと合流してお金を払い解放してもらう。

「ごめんね颯太君。あとで返すから」

「別にいいですよ。ほら、『ましポん48』の時奢ってもらいましたし」

「あーそんなこともあったね。あれからデートしてないね颯太君と」

「え!デート!?」

「冗談だよ。颯太君は弟みたいで可愛いなぁ?」

 オレの横を歩く月城さんは微笑みながらからかうように言う。月城さんのこういうところずるいよなぁ……。

「からかわないでくださいよ……」

「あはは。こうやって颯太君と会うの久しぶりだよね?リアルで会うのは年末の『すたライ』の収録以来かな?今年初だね」

「そうですね。まぁ……今までの期間とか考えるとそこまでじゃないですけどね」

「確かにね。それでも、もう私と颯太君は出会ったからね……本当に去年は夏から濃くて楽しくて忘れられない1年だったよ。今年は私も頑張りたいって思ってるし。颯太君が配信で話してるみたいにデビュー当時くらいのモチベーションでね?」

「応援してますよ。もちろんオレも頑張るつもりなんで。お互い頑張りましょう」

「そうだね」

 事務所に向かって歩いてる途中、月城さんはふと思い出したかのように言う。

「あっそうだ。颯太君良かったらまた晩酌配信やらない?リスナーさんからも好評みたいなんだよね。結構雑談配信してると言われるし」

 晩酌配信……まぁ月城さんが暴走しないなら構わないが……言っても飲みそうだもんな

「そりゃ月城さんがあれだけはっちゃけてたらリスナーさんも望むでしょうね。別の……配信事故的なやつを期待してるんだと思いますよ?」

「そうならないように、今度はさ1期生で集まってやらない?ほら紫織ちゃんの部屋広いし、料理上手だし!おつまみ作ってくれそうじゃん!」

「立花さん、文句言いそうですけど……」

「文句言っても作ってくれるのが紫織ちゃんだよ。『なんで私の家なのよ。しかも料理まで。仕方ないからいいけど』って言ってさw」

 ……想像できてしまうのが、少し嬉しくもある。そこまでの関係性が出来ている。もちろん同じ1期生だからかもしれないけど。

 オフコラボか……正直実現したら楽しそうではある。というより実現させたいと思ってしまうオレがいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム

下城米雪
ライト文芸
 彼女は高校時代の失敗を機に十年も引きこもり続けた。  親にも見捨てられ、唯一の味方は、実の兄だけだった。  ある日、彼女は決意する。  兄を安心させるため、自分はもう大丈夫だよと伝えるため、Vtuberとして百万人のファンを集める。  強くなった後で新しい挑戦をすることが「強くてニューゲーム」なら、これは真逆の物語。これから始まるのは、逃げて逃げて逃げ続けた彼女の全く新しい挑戦──  マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...