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170. ましのんは『唯一無二』になりたい

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170. ましのんは『唯一無二』になりたい



 すたライのユニット発表後、オレは立花さんと歌う曲を決めたり、1期生とユニット曲の振り付けを練習したりと多忙な日々を過ごしていた。もちろん彩芽ちゃんのマネージャーとしての仕事も両立はしている。

 そして今日はクリスマス当日。企画配信当日。世間はイベントが満載だろうけど、Vtuberである以上、こういうイベントの時は仕方ない。というより、一応彼女と一緒にいると言う点ではオレも幸せなのかもしれない。

「彩芽ちゃん。年末の『すたライフ』のボイス録れてる?」

「はい。颯太さんの……パソコンに送っておきました」

「ありがとう。助かるよ」

 こうやって家のリビングで、彩芽ちゃんとの仕事のやり取りも増えてきた。目の前で仕事をしている彩芽ちゃんを見ると、なんだか成長したなと思う反面、少し寂しさもあった。

 でもこれからもっと成長して、きっと良いVtuberになる。それこそFmすたーらいぶを引っ張っていく存在に。だからこそ、オレも『姫宮ましろ』として、憧れの存在として、頑張らないとな。

「あの……颯太さん。事務所から元日の出欠来てないって……」

「あ。ごめん。彩芽ちゃんどうする?」

「もちろん……参加します」

『あけおめ!元日からFmすたーらいぶ』は朝9時から夜の19時までの公式配信。運営の方針で基本は自由参加なんだが、毎年全員参加している。

 あと、大晦日のすたライが始まる21時以降、そして年越し配信も禁止で元日の個人配信も禁止している。本来はやったほうがリスナーから反響が大きいのだが、社長の方針でプライベートを大事にするとのことで決まったらしい。

 そんなライバー想いの会社だから元日の公式配信にみんな出るのかもしれない。

 そのあとは色々な雑件をこなし、時間は14時に。クリスマス配信まであと1時間半か。オレは19:00、彩芽ちゃんは23:00時の枠だったよな。

「そろそろクリスマス配信だな。彩芽ちゃんトリだから頑張ろう」

「いっ……言わないで……ください。これ……誰が決めたんですかね……」

「運営さんじゃないか?ライバーの配信やら関係性なんか見てスケジュール組んだんじゃない?オレは3期生でも絡みの少ない、あるとちゃんとキサラさんだし」

「でも私は……さくら先輩と夢花かなえちゃんですよ?」

「さくらちゃんは企画主だからだろうけど、夢花かなえちゃんはルナちゃんのガチ勢なんだろ?なら双葉かのんとの相手にぴったりじゃない?」

「でも……夢花かなえちゃんは……明るいし……アイドルだし……」

 またコミュ障陰キャ女おつが出た。でも確かに陰と陽みたいなところはあるけど。まぁ今さらオレが言っても変わらないか。

 ピンポーン インターホンが鳴る。ちょうど来たか。オレが注文したケーキやらチキンやらが届いた。

「早いけどクリスマスパーティーしながら配信観ようかなって。どうかな?」

「はい。楽しみです」

 それから2人で手分けして、料理を机に並べる。

「よし。準備完了。シャンパンは……彩芽ちゃん大丈夫?」

「今日はジュースにします」

「そっか。一緒にクリスマスパーティーができて、本当に嬉しいよ」

 良く考えたら彩芽ちゃんと出会ってからまだ数ヶ月しか経ってないのか。色々あったな。初めて会ったときはこんな関係になるとは思わなかった。

「あの颯太さん……乾杯しませんか」

「うん。乾杯」

「私……幸せです。春から……本当に楽しかったです」

「オレもだよ。彩芽ちゃんに出会えて本当に良かったと思ってる。仕事も……『姫宮ましろ』にとってもさ。だからこれからも『ましのん』をよろしくな」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。私……まだまだ未熟だけど頑張ります。いつか……ましろん先輩の唯一無二のパートナーに……なりたいから……」

 唯一無二のパートナーか……『プライベートでもそうなりたいんだ』とは言えるわけもなく……

 こうしてオレと彩芽ちゃんはクリスマスパーティーをしながら配信をむかえるのだった。
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