102 / 687
87. 姫は『過ごしたい』ようです
しおりを挟む
87. 姫は『過ごしたい』ようです
不手際で鈴町さんと同じ部屋に泊まることになったオレ。
部屋を見渡す。大丈夫、部屋は広いし布団は離して寝れる。焦るな……普段だって一緒にいることは少ないが同じ家にいるし、配信を一緒にすれば至近距離にいる。同じ空間にいること自体慣れているじゃないか。そうだ……落ち着けオレ……
それにしても桃姉さんはやらかしすぎだぞ?ココアちゃんじゃないがポン桃だぞ。
と。文句を言っても仕方ない。オレも鈴町さんも大人だし、これは仕事だ。トラブルだってある。
オレはパソコンを取り出し、残りの荷物を部屋の隅に置く。そして鈴町さんの方を見た。鈴町さんは落ち着かない様子で、キョロキョロしながら座っている。
「素材の準備はオレがやるから、鈴町さんは配信内容と台本考えてくれるか?」
「あっはい……その……ツイートしてもいいですか?」
「ああ。いいんじゃない?」
すると鈴町さんは嬉しそうにスマホを取り出し、ツイートを始めた。
双葉かのん@futabakanon
「案件の仕事無事に終わりました(>_<)めちゃめちゃ緊張した……。今日はましろん先輩とお泊まりなの!てぇてぇ(^_^)vこのあと公式チャンネルで19時から配信します!みんな観に来てね!」
「あの……ましろん先輩?」
「どうした?」
「配信終わったら……あとは……自由なんですよね?」
「ああ。明日のチェックアウトは12時にしてもらったから、ゆっくり温泉にも入れるよ」
「えっと……ましろん先輩と一緒に夕食食べて、卓球して……遊べるんですか?」
「そうだな。せっかくだから温泉施設を楽しもうか」
すると鈴町さんは、まるで花が咲いたように笑みを浮かべる。
やばっ……可愛い……
こんな状況だから尚更可愛く見えるのかもしれない。いつもより化粧もバッチリしているし、服装もオシャレをしているし……
ん?あれ……待てよ。ということはこのあとは温泉に入って、ご飯を食べて、2人きりで……いやいやいやいや!!何を考えている!?相手は後輩だぞ?そんな邪な感情を持ってはいけない。
でも……鈴町さんも女の子だ。仕事とはいえ同じ部屋に泊まりなんて、それなりに意識してしまうだろ……しかもさっきの鈴町さんのTwitterも……
「ましろん先輩?」
「え?あっ配信内容考えようか!」
鈴町さんが不思議そうな顔で見てくる。危なかった……変なこと考えてたら鈴町さんに失礼だよな。その後、オレと鈴町さんは配信内容を考え、19時の配信まで待つことにする。
「あの……ましろん先輩……聞いてもいいですか?」
「何?」
「その……今まで……女性とお泊まりとかしたこと……あるんですか?」
「え?……いや……ないよ。オレ彼女いたことないからさ」
それを聞いた鈴町さんは何も言わなかったが、どことなく頬が緩んでいたような気がする。
そして19時の公式配信が始まる。普段は家や事務所のスタジオでの配信なので、こう違う場所での配信は新鮮だったし、少しだけドキドキしていた。鈴町さんと『ましのん』を結成して3ヶ月……だいぶお互いのことも分かってきたからな。
無事に公式配信を終え、時間は20時すぎ、ここからは自由時間だ。
「お疲れ様。鈴町さん。疲れただろ?温泉行ってきな、夕飯は21時30分くらいにお願いしてあるからさ。オレはまだ仕事があるから」
「あっ。その……手伝います……せっかくの……自由時間……ましろん先輩と一緒に過ごしたい……ので」
「……じゃあ、これ作って事務所に送ってもらえる?オレは明日の朝配信のサムネとか準備するからさ」
鈴町さんは向かい側でパソコンを開き、事務所に送る書類やらTwitterやらを確認している。こういう姿も初めて見るよな……鈴町さんだって、オレと同じライバーなんだからいつもやっているはず……
それに鈴町さんはガチで陰キャでコミュ障だけど、オレとは頑張って話そうとしている。むしろオレの方こそ何もしていない。そう思うとなぜか少しモヤモヤとする。そしてオレは無意識に声に出していた。
「あのさ鈴町さん。家でもこうやって時間ある時……一緒に仕事しないか?」
「え……?」
「あっいや。『ましのん』になって3ヶ月だけど、せっかく同じ家にいるのにほとんど別々だし……その……もっと一緒の時間を過ごしたいなぁと思って……」
「…………」
「ごめん!なんか気持ち悪いこと言っちゃったな!今の忘れてくれ!」
「そ、その……わ、私も……ましろん先輩と……もっと……一緒にいたいです……だから……」
「おっおう!それじゃ今度からそうしよう!」
そう言って再び仕事に戻る。そのあと仕事が終わるまで会話はなくキーボードを打つ音だけが響いていたが、その空間にいるだけで、それも心地良さを感じるのだった。
不手際で鈴町さんと同じ部屋に泊まることになったオレ。
部屋を見渡す。大丈夫、部屋は広いし布団は離して寝れる。焦るな……普段だって一緒にいることは少ないが同じ家にいるし、配信を一緒にすれば至近距離にいる。同じ空間にいること自体慣れているじゃないか。そうだ……落ち着けオレ……
それにしても桃姉さんはやらかしすぎだぞ?ココアちゃんじゃないがポン桃だぞ。
と。文句を言っても仕方ない。オレも鈴町さんも大人だし、これは仕事だ。トラブルだってある。
オレはパソコンを取り出し、残りの荷物を部屋の隅に置く。そして鈴町さんの方を見た。鈴町さんは落ち着かない様子で、キョロキョロしながら座っている。
「素材の準備はオレがやるから、鈴町さんは配信内容と台本考えてくれるか?」
「あっはい……その……ツイートしてもいいですか?」
「ああ。いいんじゃない?」
すると鈴町さんは嬉しそうにスマホを取り出し、ツイートを始めた。
双葉かのん@futabakanon
「案件の仕事無事に終わりました(>_<)めちゃめちゃ緊張した……。今日はましろん先輩とお泊まりなの!てぇてぇ(^_^)vこのあと公式チャンネルで19時から配信します!みんな観に来てね!」
「あの……ましろん先輩?」
「どうした?」
「配信終わったら……あとは……自由なんですよね?」
「ああ。明日のチェックアウトは12時にしてもらったから、ゆっくり温泉にも入れるよ」
「えっと……ましろん先輩と一緒に夕食食べて、卓球して……遊べるんですか?」
「そうだな。せっかくだから温泉施設を楽しもうか」
すると鈴町さんは、まるで花が咲いたように笑みを浮かべる。
やばっ……可愛い……
こんな状況だから尚更可愛く見えるのかもしれない。いつもより化粧もバッチリしているし、服装もオシャレをしているし……
ん?あれ……待てよ。ということはこのあとは温泉に入って、ご飯を食べて、2人きりで……いやいやいやいや!!何を考えている!?相手は後輩だぞ?そんな邪な感情を持ってはいけない。
でも……鈴町さんも女の子だ。仕事とはいえ同じ部屋に泊まりなんて、それなりに意識してしまうだろ……しかもさっきの鈴町さんのTwitterも……
「ましろん先輩?」
「え?あっ配信内容考えようか!」
鈴町さんが不思議そうな顔で見てくる。危なかった……変なこと考えてたら鈴町さんに失礼だよな。その後、オレと鈴町さんは配信内容を考え、19時の配信まで待つことにする。
「あの……ましろん先輩……聞いてもいいですか?」
「何?」
「その……今まで……女性とお泊まりとかしたこと……あるんですか?」
「え?……いや……ないよ。オレ彼女いたことないからさ」
それを聞いた鈴町さんは何も言わなかったが、どことなく頬が緩んでいたような気がする。
そして19時の公式配信が始まる。普段は家や事務所のスタジオでの配信なので、こう違う場所での配信は新鮮だったし、少しだけドキドキしていた。鈴町さんと『ましのん』を結成して3ヶ月……だいぶお互いのことも分かってきたからな。
無事に公式配信を終え、時間は20時すぎ、ここからは自由時間だ。
「お疲れ様。鈴町さん。疲れただろ?温泉行ってきな、夕飯は21時30分くらいにお願いしてあるからさ。オレはまだ仕事があるから」
「あっ。その……手伝います……せっかくの……自由時間……ましろん先輩と一緒に過ごしたい……ので」
「……じゃあ、これ作って事務所に送ってもらえる?オレは明日の朝配信のサムネとか準備するからさ」
鈴町さんは向かい側でパソコンを開き、事務所に送る書類やらTwitterやらを確認している。こういう姿も初めて見るよな……鈴町さんだって、オレと同じライバーなんだからいつもやっているはず……
それに鈴町さんはガチで陰キャでコミュ障だけど、オレとは頑張って話そうとしている。むしろオレの方こそ何もしていない。そう思うとなぜか少しモヤモヤとする。そしてオレは無意識に声に出していた。
「あのさ鈴町さん。家でもこうやって時間ある時……一緒に仕事しないか?」
「え……?」
「あっいや。『ましのん』になって3ヶ月だけど、せっかく同じ家にいるのにほとんど別々だし……その……もっと一緒の時間を過ごしたいなぁと思って……」
「…………」
「ごめん!なんか気持ち悪いこと言っちゃったな!今の忘れてくれ!」
「そ、その……わ、私も……ましろん先輩と……もっと……一緒にいたいです……だから……」
「おっおう!それじゃ今度からそうしよう!」
そう言って再び仕事に戻る。そのあと仕事が終わるまで会話はなくキーボードを打つ音だけが響いていたが、その空間にいるだけで、それも心地良さを感じるのだった。
10
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました
フーラー
ファンタジー
「催眠アプリで女性を寝取り、ハーレムを形成するクソ野郎」が
ざまぁ展開に陥る、異色の異世界ファンタジー。
舞台は異世界。
売れないイラストレーターをやっている獣人の男性「イグニス」はある日、
チートスキル「催眠アプリ」を持つ異世界転移者「リマ」に恋人を寝取られる。
もともとイグニスは収入が少なく、ほぼ恋人に養ってもらっていたヒモ状態だったのだが、
リマに「これからはボクらを養うための労働奴隷になれ」と催眠をかけられ、
彼らを養うために働くことになる。
しかし、今のイグニスの収入を差し出してもらっても、生活が出来ないと感じたリマは、
イグニスに「仕事が楽しくてたまらなくなる」ように催眠をかける。
これによってイグニスは仕事にまじめに取り組むようになる。
そして努力を重ねたことでイラストレーターとしての才能が開花、
大劇団のパンフレット作製など、大きな仕事が舞い込むようになっていく。
更にリマはほかの男からも催眠で妻や片思いの相手を寝取っていくが、
その「寝取られ男」達も皆、その時にかけられた催眠が良い方に作用する。
これによって彼ら「寝取られ男」達は、
・ゲーム会社を立ち上げる
・シナリオライターになる
・営業で大きな成績を上げる
など次々に大成功を収めていき、その中で精神的にも大きな成長を遂げていく。
リマは、そんな『労働奴隷』達の成長を目の当たりにする一方で、
自身は自堕落に生活し、なにも人間的に成長できていないことに焦りを感じるようになる。
そして、ついにリマは嫉妬と焦りによって、
「ボクをお前の会社の社長にしろ」
と『労働奴隷』に催眠をかけて社長に就任する。
そして「現代のゲームに関する知識」を活かしてゲーム業界での無双を試みるが、
その浅はかな考えが、本格的な破滅の引き金となっていく。
小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる