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28. 後輩ちゃんは『不機嫌』らしいです
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28. 後輩ちゃんは『不機嫌』らしいです
家に帰るとリビングでは桃姉さんと鈴町さんが『ましのん』の配信の打ち合わせをしていた。
「お帰りなさい颯太。遅かったわね」
「少し用事があったからさ」
「そう。それより来週の『ましのん』配信の企画は考えてるの?」
「その事なんだけど、3期生の『葉桐ソフィア』ちゃんを呼びたいんだけどダメかな?」
オレがそう言うと2人は驚いた顔をしていた。でもオレはどうしても玲奈ちゃんとコラボしてみたかった。それは玲奈ちゃんのプロ意識を近くで感じたからだ。
あとは玲奈ちゃんが『姫宮ましろ』のことを疑っているかもしれないからだ。大きな問題になる前にコラボをしておいた方がいい。
それに鈴町さんは同じFmすたーらいぶの3期生で同期でもあるから、コラボすることは今後の活動にもプラスになるはずだ。
「そりゃ構わないけど、急にどうして?」
「ちょっと事情があってさ。でも大丈夫だよ。ちゃんと考えてあるし、もし何かあればオレが責任取るからさ。だから頼むよ」
「あんたがそこまで言うならいいけど……」
とりあえず企画書をまとめて明日桃姉さんに提出することになった。オレはそのまま部屋に戻り企画書を作り始める。『ましのん』での初めての企画だからな……インパクトのあるものにしたいところだが……。そんなことを考えていると突然扉がノックされる。そこには鈴町さんがいた。
「鈴町さん?どうかした?」
「あの……少し……私の部屋に……来てもらってもいいですか?」
「え?」
なぜ部屋に呼ばれたのか分からず、不思議に思いながらも、鈴町さんの後に付いていき部屋に入る。鈴町さんは椅子に腰掛けるとパソコンの画面を指さす。ちょうどディスコードが開かれているので見てみると『葉桐ソフィア』ちゃんからメッセージがきていた。
鈴町さんが指をさしている画面には『かのんちゃん。颯太さんから聞いたかな?コラボの件、かのんちゃんからもお願いね!』と書いてあった。
「……私……何も聞いてないです……けど」
「ごめん。さっき言いそびれたんだけど、帰りに事務所で『葉桐ソフィア』ちゃんと会って、少しお茶しながら話したんだ。そしてコラボの話になってだな……」
「颯太さんって……名前で呼ばれてて……仲良いんですね……」
「いやそんなことはないぞ?『マネージャーさん』じゃ誰のことか分からないから名前で呼ばれてるだけだよ」
「……ソフィアちゃんとお茶……だから帰りが遅かったんですか?」
「ああ。そうだな。それでその時に相談されて。『ましのん』枠でコラボしようかと思ってさ……」
鈴町さんはそれを聞くとうつむきながら、小さな声で呟いた。
「私も……ましろん先輩と……2人でお茶したこと……ないのに……」
「え?」
あれ?もしかしてコラボを勝手に決めたことじゃなくて、オレが玲奈ちゃんとお茶したことを怒っているのか?と言わんばかりの言葉が微かに聞こえたんだけど?
「……なんでもないです」
「いや、何でもなくはないよね?」
「……本当になんでもないので……気にしないで下さい」
鈴町さんは依然としてうつむいたままだが、なんとなく機嫌が悪そうな声のトーンだった。これはオレが悪いことをしてしまったようだ。
「ご、ごめん。鈴町さんも今度事務所で仕事した帰りに、一緒にお茶とかご飯食べに行こう!」
「……本当……ですか?」
「あ、あぁ」
「……約束ですよ?」
「分かった。約束な」
そう言った瞬間、鈴町さんは笑顔になり、とても嬉しそうな表情を浮かべていた……ような気がする。鈴町さんが不機嫌で少し怒っているのは初めてかもしれない。少し不謹慎だが、こんな鈴町さんも可愛いと思ってしまうオレがいた。
家に帰るとリビングでは桃姉さんと鈴町さんが『ましのん』の配信の打ち合わせをしていた。
「お帰りなさい颯太。遅かったわね」
「少し用事があったからさ」
「そう。それより来週の『ましのん』配信の企画は考えてるの?」
「その事なんだけど、3期生の『葉桐ソフィア』ちゃんを呼びたいんだけどダメかな?」
オレがそう言うと2人は驚いた顔をしていた。でもオレはどうしても玲奈ちゃんとコラボしてみたかった。それは玲奈ちゃんのプロ意識を近くで感じたからだ。
あとは玲奈ちゃんが『姫宮ましろ』のことを疑っているかもしれないからだ。大きな問題になる前にコラボをしておいた方がいい。
それに鈴町さんは同じFmすたーらいぶの3期生で同期でもあるから、コラボすることは今後の活動にもプラスになるはずだ。
「そりゃ構わないけど、急にどうして?」
「ちょっと事情があってさ。でも大丈夫だよ。ちゃんと考えてあるし、もし何かあればオレが責任取るからさ。だから頼むよ」
「あんたがそこまで言うならいいけど……」
とりあえず企画書をまとめて明日桃姉さんに提出することになった。オレはそのまま部屋に戻り企画書を作り始める。『ましのん』での初めての企画だからな……インパクトのあるものにしたいところだが……。そんなことを考えていると突然扉がノックされる。そこには鈴町さんがいた。
「鈴町さん?どうかした?」
「あの……少し……私の部屋に……来てもらってもいいですか?」
「え?」
なぜ部屋に呼ばれたのか分からず、不思議に思いながらも、鈴町さんの後に付いていき部屋に入る。鈴町さんは椅子に腰掛けるとパソコンの画面を指さす。ちょうどディスコードが開かれているので見てみると『葉桐ソフィア』ちゃんからメッセージがきていた。
鈴町さんが指をさしている画面には『かのんちゃん。颯太さんから聞いたかな?コラボの件、かのんちゃんからもお願いね!』と書いてあった。
「……私……何も聞いてないです……けど」
「ごめん。さっき言いそびれたんだけど、帰りに事務所で『葉桐ソフィア』ちゃんと会って、少しお茶しながら話したんだ。そしてコラボの話になってだな……」
「颯太さんって……名前で呼ばれてて……仲良いんですね……」
「いやそんなことはないぞ?『マネージャーさん』じゃ誰のことか分からないから名前で呼ばれてるだけだよ」
「……ソフィアちゃんとお茶……だから帰りが遅かったんですか?」
「ああ。そうだな。それでその時に相談されて。『ましのん』枠でコラボしようかと思ってさ……」
鈴町さんはそれを聞くとうつむきながら、小さな声で呟いた。
「私も……ましろん先輩と……2人でお茶したこと……ないのに……」
「え?」
あれ?もしかしてコラボを勝手に決めたことじゃなくて、オレが玲奈ちゃんとお茶したことを怒っているのか?と言わんばかりの言葉が微かに聞こえたんだけど?
「……なんでもないです」
「いや、何でもなくはないよね?」
「……本当になんでもないので……気にしないで下さい」
鈴町さんは依然としてうつむいたままだが、なんとなく機嫌が悪そうな声のトーンだった。これはオレが悪いことをしてしまったようだ。
「ご、ごめん。鈴町さんも今度事務所で仕事した帰りに、一緒にお茶とかご飯食べに行こう!」
「……本当……ですか?」
「あ、あぁ」
「……約束ですよ?」
「分かった。約束な」
そう言った瞬間、鈴町さんは笑顔になり、とても嬉しそうな表情を浮かべていた……ような気がする。鈴町さんが不機嫌で少し怒っているのは初めてかもしれない。少し不謹慎だが、こんな鈴町さんも可愛いと思ってしまうオレがいた。
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