上 下
33 / 738

26. 姫はJKちゃんと『デート』する

しおりを挟む
26. 姫はJKちゃんと『デート』する



 そして無事に『ましのん』ユニット発表配信は終了する。終わった瞬間、鈴町さんはガクッと机に突っ伏してしまった。

「お疲れ様。鈴町さん」

 オレがそう言うと、鈴町さんはゆっくりと身体を起こしてこちらを見た。その表情はどこか吹っ切れたような清々しい笑顔をしていた。こうして『ましのん』にとって大きな一歩を踏み出した配信は幕を閉じた。

 ちなみに後日、SNSではこの配信のことで話題になっていたらしくトレンド入りした。そして他のFmすたーらいぶのライバーたちも自分の配信などで話題として上げてくれていた。中には面白がって拡散してくれる人もいて嬉しい限りだ。

 今まで以上に応援してくれているファンたちが増えた気がする。これも全て鈴町さんのおかげだろう。本当に感謝してもしきれない。だから、今度はオレが彼女に恩返しをする番である。それが何なのかはまだ分からない。でもいつかきっと……。

 事務所での配信が終わって数日が経った。オレは『双葉かのん』のマネージャーとして案件の仕事を確認し、スケジュールを調整したりと仕事に追われる日々を送っていた。そして明日の『姫宮ましろ』の配信のことを考えながら事務所から帰ろうとしていた時だった。

「颯太さん」

 オレが振り向くと、そこにはFmすたーらいぶ3期生の『葉桐ソフィア』ちゃんがいた。

 葉桐ソフィア。鈴町さんこと『双葉かのん』の同期でFmすたーらいぶの3期生。透き通るほどの白の長い髪の幼女ハーフエルフ。コンセプトは『Fmすたーらいぶに迷い込んだみんなの妹はぐれハーフエルフ』その可愛さと萌え萌えのロリ声と毒舌を使いこなす雑談やゲーム配信が人気で3期生では一番チャンネル登録者も多いライバーさんだ。

「えっと確かソフィアちゃんだっけ?どうしたの?」

「いや私のマネージャーがちょっと急用があって打ち合わせがなくなったんですよ。それで暇になったから帰ろうとしたら颯太さんが見えたので」

「なるほど。そういうことか」

「あの良かったらお茶に付き合ってもらえませんか?わざわざ事務所に来たのにこのまま帰るのもなんか勿体無いなって思って。」

「ああ。別に構わないよ。丁度オレも今日はもう終わりだし」

「やった。じゃあデートですね。行きましょう」

 ソフィアちゃんはそう言ってオレの袖を掴んで歩き始めた。ちょうど1人で帰るつもりだったので、断る理由もなく承諾したが……良く考えたら……ほぼ初対面のJKとお茶とかヤバすぎないか……!?オレ大丈夫かな……これ犯罪とかにならないよな?

「颯太さんっていつも忙しいんですか?」

「うーんどうだろうね。人によっては大変かもしれないけど、オレはマネージャーになってまだ日が浅いし、勉強することばかりだよ」

 本当は毎日が忙しいけどな。『姫宮ましろ』の配信は朝だけにしているからそこまでは忙しくないが、今度は『ましのん』の配信もあるし、『双葉かのん』のスケジュールの管理もあるからな。

「あ。そうだ、私の本名は佐伯玲奈っていうんです。せっかくなので名前で呼んでください。あと敬語もなしでお願いします」

「玲奈ちゃんか。でもなんでオレに本名を教えてくれるんだ?」

「だって会社のマネージャーさんだし、同期のマネージャーでもあるし、私の相談にも乗ってくれたらいいなって期待を込めてますから」

 若いのに抜け目がない子だ。オレたちは近くのカフェに入り、そこでコーヒーを飲みながら少し話をすることにした。一応玲奈ちゃんもオレからしたら同じFmすたーらいぶのVtuberで後輩なんだよな……

「やっぱりこういう落ち着いた雰囲気の店は落ち着きますね」

「え?ああそうだね」

「颯太さん。もしかして緊張してますか?」

「そりゃJKと2人きりだからな……周りから変に思われてないかな……」

「あはは。気にし過ぎですよ。仲の良い兄妹にしか見えませんよ」

「そっか……なら良いんだけどさ」

 そう言って玲奈ちゃんはコーヒーを一口飲んでから、少し間を置いてオレに聞いてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム

下城米雪
ライト文芸
 彼女は高校時代の失敗を機に十年も引きこもり続けた。  親にも見捨てられ、唯一の味方は、実の兄だけだった。  ある日、彼女は決意する。  兄を安心させるため、自分はもう大丈夫だよと伝えるため、Vtuberとして百万人のファンを集める。  強くなった後で新しい挑戦をすることが「強くてニューゲーム」なら、これは真逆の物語。これから始まるのは、逃げて逃げて逃げ続けた彼女の全く新しい挑戦──  マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...