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24. 『ましのん』の新たなスタート
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24. 『ましのん』の新たなスタート
週末。いよいよライブ配信当日になった。サムネのイラストも完成しているし、最終打ち合わせは終わっている。配信は21時から。今の時間は19時。
今日は事務所のスタジオで配信をする予定だ。そして、後は配信開始を待つだけとなっているのだが、一緒にいる鈴町さんはこの世の終わりかのように緊張した様子でソファーに俯きながら座っている。
「大丈夫か鈴町さん?」
「うぅ……緊張します……」
「リラックスしろって。いつも通りでいいんだよ」
「はいぃ……」
相変わらず緊張気味の鈴町さんだったが、もうなるようにしかならない。とりあえず落ち着かせるためにも温かいコーヒーでも入れるかな。マグカップを用意してインスタントの粉を入れる。
「はい。鈴町さん。コーヒー飲める?」
「ありがとう……ございます……ましろん先輩」
鈴町さんに渡すと、両手で大事そうに持ってフーフーしながら少しずつ口に含んでいく。
「美味しい……です」
「そうか。良かったよ」
鈴町さんは少しホッとしたように肩の力を抜いていた。そんなに緊張するもんかね。
「ましろん先輩は……緊張しないんですか……?」
「オレは……まぁ緊張はしてるよ。でもワクワクの方が強い」
「そうですか……すごいですね……」
別にオレだって緊張しないわけじゃないんだけど、あまり表に出さないだけだ。オレは鈴町さんの前に腰掛け、一緒にコーヒーを飲み始める。
今日が正式にユニットとしての『ましのん』が始まる。事務所の期待もあるけど、リスナーが楽しめる配信にしなければ。そんなことを考えながらしばらく沈黙の時間が続いたが、目の前に座っている、鈴町さんが口を開いた。
「あ……あの……」
「どうかしたか?」
「その……昨日の……社長に言ってたの……って……あの……その1人のファンって……もしかして……私のこと……ですか?」
「ああ。鈴町さんのことだぞ。オレは鈴町さんが『双葉かのん』として頑張ってるところを見てるからな。オレも負けられないと思ったし、オレも頑張ろうって思えるようになったんだ」
「う……嬉しい……です」
オレの言葉を聞いて鈴町さんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。鈴町さんがいなかったら今のオレはいない。
「だからオレも『双葉かのん』を応援したいと思うし、鈴町さんも『姫宮ましろ』のことを見ていてほしい」
オレがそういうと、鈴町さんはコクリと小さく首を縦に振った。
「はい……見ています。ずっと……これから先も……私は……ましろん先輩のことを見てます」
「ありがとう」
それからオレたちは、配信に向けて最終チェックを念入りに行った。そして時刻は20時55分となる。
「そろそろ時間だな。準備はいいか?」
「はい」
そしてマイクのスイッチを入れようとした瞬間、となりにいる鈴町さんに呼ばれる。
「ましろん先輩」
「ん?」
「その……終わったら……ましろん先輩の……好きな物……食べましょう……一緒に」
「……ああ。楽しみにしてる」
少し恥ずかしそうに言った鈴町さん。初めて彼女からそんなこと言われたので少し嬉しいような恥ずかしいような気もした。オレは鈴町さんに目で合図をして、今度こそスイッチを入れて配信開始のボタンを押した。
週末。いよいよライブ配信当日になった。サムネのイラストも完成しているし、最終打ち合わせは終わっている。配信は21時から。今の時間は19時。
今日は事務所のスタジオで配信をする予定だ。そして、後は配信開始を待つだけとなっているのだが、一緒にいる鈴町さんはこの世の終わりかのように緊張した様子でソファーに俯きながら座っている。
「大丈夫か鈴町さん?」
「うぅ……緊張します……」
「リラックスしろって。いつも通りでいいんだよ」
「はいぃ……」
相変わらず緊張気味の鈴町さんだったが、もうなるようにしかならない。とりあえず落ち着かせるためにも温かいコーヒーでも入れるかな。マグカップを用意してインスタントの粉を入れる。
「はい。鈴町さん。コーヒー飲める?」
「ありがとう……ございます……ましろん先輩」
鈴町さんに渡すと、両手で大事そうに持ってフーフーしながら少しずつ口に含んでいく。
「美味しい……です」
「そうか。良かったよ」
鈴町さんは少しホッとしたように肩の力を抜いていた。そんなに緊張するもんかね。
「ましろん先輩は……緊張しないんですか……?」
「オレは……まぁ緊張はしてるよ。でもワクワクの方が強い」
「そうですか……すごいですね……」
別にオレだって緊張しないわけじゃないんだけど、あまり表に出さないだけだ。オレは鈴町さんの前に腰掛け、一緒にコーヒーを飲み始める。
今日が正式にユニットとしての『ましのん』が始まる。事務所の期待もあるけど、リスナーが楽しめる配信にしなければ。そんなことを考えながらしばらく沈黙の時間が続いたが、目の前に座っている、鈴町さんが口を開いた。
「あ……あの……」
「どうかしたか?」
「その……昨日の……社長に言ってたの……って……あの……その1人のファンって……もしかして……私のこと……ですか?」
「ああ。鈴町さんのことだぞ。オレは鈴町さんが『双葉かのん』として頑張ってるところを見てるからな。オレも負けられないと思ったし、オレも頑張ろうって思えるようになったんだ」
「う……嬉しい……です」
オレの言葉を聞いて鈴町さんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。鈴町さんがいなかったら今のオレはいない。
「だからオレも『双葉かのん』を応援したいと思うし、鈴町さんも『姫宮ましろ』のことを見ていてほしい」
オレがそういうと、鈴町さんはコクリと小さく首を縦に振った。
「はい……見ています。ずっと……これから先も……私は……ましろん先輩のことを見てます」
「ありがとう」
それからオレたちは、配信に向けて最終チェックを念入りに行った。そして時刻は20時55分となる。
「そろそろ時間だな。準備はいいか?」
「はい」
そしてマイクのスイッチを入れようとした瞬間、となりにいる鈴町さんに呼ばれる。
「ましろん先輩」
「ん?」
「その……終わったら……ましろん先輩の……好きな物……食べましょう……一緒に」
「……ああ。楽しみにしてる」
少し恥ずかしそうに言った鈴町さん。初めて彼女からそんなこと言われたので少し嬉しいような恥ずかしいような気もした。オレは鈴町さんに目で合図をして、今度こそスイッチを入れて配信開始のボタンを押した。
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