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28. 噛み合う歯車は勝利に向かって③

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28. 噛み合う歯車は勝利に向かって③



 そして最後の歯車は違った形で動き始める。

 王立魔法学園の所有地である森の外れにある高台。そこにはステラとギルを見送った、カトレアとレオンが残っていた。

「ステラ様もギル君も大丈夫ですかね……」

「いや。正直厳しいと思う。お互いの相手が四元の法則でも劣性の立場だからな。ステラはともかくギルフォードがどこまで時間を稼げるかだ」

「……そうですね。私達は見守るしかないんですね」

「ああ。それしかボクたちにできることはない」

「はい……。信じましょう。お二人を」

 そんな会話をしていると、そこにステラから腹黒男と呼ばれているあの男が現れる。

「なるほど。そういう作戦でしたか」

「え?ラスター=アースランド……」

「……やはり来たか」

「来ることが分かっていたような口ぶりだね?さすがだね」

 残りの四大『重岩』ラスター=アースランドに感心されたレオンだったが、今はそれどころではなかった。

「ど……どうしてここにあなたがここに!?」

 動揺を隠しきれないカトレアだったが、ラスターは特に気にする様子もなく話を続ける。

「ステラ=シルフィードの通信を聞いたからね?確信したよ。間違いなくやつらは勝手に潰しあうとね?」

「それでステラのいなくなったボクたちの星を奪いに来たと言うことか?」

「そういうことだね。大人しく星を渡してくれないかな?力づくで奪うのはあまりしたくないんでね?そうすれば見逃してあげるよ?」

 カトレアは悔しそうな表情を浮かべる。しかし、ここでラスターの提案に乗るわけにはいかないのだ。

「残念ながらそれはできない相談です。あなたが星を奪うなら私たちも抵抗させてもらいます!」

「ふーん。そっかぁ~じゃあ仕方ないね!手加減はしないよ?」

 そう言うとラスターは魔法陣を描き始める。その速さは尋常ではなく、一瞬にして巨大な魔法陣が完成する。

「さて……ステラ=シルフィードのいない君たちなんて相手にならない。すぐに終わらせてあげるよ?」

「……待て」

 レオンはそう言いながらラスターに小袋を投げ渡す。

「それは……レオン君!?」

「ラスター=アースランド。君が欲しがっていた星だ。そこに18個ある。ボクとカトレアさんの分だ」

「ふーん。中途半端だね?」

「残りが0になると失格になる。せめて1つは持たせてくれ。最後までステラとギルフォードを見届けたいんだ」

「……まあいいか。ありがたくもらっておくよ。これで合計は53から71になった。グレンが勝とうが、ステラが勝とうが、もしくはエリスが勝とうがこれで間違いなく上位に入れるからいいだろう」

 そんな状況に2人は言葉を失っていた。まさかこんな展開になるとは思わなかったからだ。

「すまないカトレアさん。こうするしかなかったんだ」

「いえ……。レオン君は悪くありません。」

「まぁまぁ懸命な判断だよ?とりあえず魔法競技大会が終わるまではここにいさせてもらおうかな。安心してくれ何もしないよ。万が一ステラ=シルフィードが戻って来た時の保険だよ?はっはっは!」

 ラスターはそう言って高笑いをする。2人には絶望的な状況……だったはず。しかし内心はそうは思っていなかった。むしろ『成功した』そう思っていた。

 だってあの時ステラが提案した作戦通りにことが進んでいたからであった。

 ステラ、ギルフォード、カトレアとレオン。勝つための歯車は噛み合い勝利に向かって動き出していたのだった。
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