【極限の入れ替わり!?】ステラ様(偽)は逃げ切りたい!~突然貴族令嬢の代わりになったオレ。バレたら死ぬらしいので秘密裏に生き抜きます~

夕姫

文字の大きさ
上 下
16 / 38

16. 同じ道を歩む存在

しおりを挟む
16. 同じ道を歩む存在



 オレとカトレアはそのまま歩いて、カトレアの家に向かうことにする。この辺りは王都の中でも外れのほうなので、のどかな風景が広がっていた。

 だんだん緊張してきたのだが。良く考えたら女の子の家に行くのも初めてだ。

「あそこが私の家です。ステラ様には小さくて居心地悪いかもしれないですけど、どうしても両親に紹介したくて」

「居心地悪いなんてないわよ?それよりいきなりお邪魔してご迷惑ではないのかしら?」

「大丈夫ですよ!両親は優しいからきっと歓迎してくれます!」

 そう言って笑顔で手を引くカトレアはとても可愛いかった。

 そして到着した家は本当に小さくて、質素な感じだった。でもとても手入れされていて清潔感がある。

 玄関を開けてくれたのは母親だろうか。少しふくよかだが優しそうな女性だ。そして奥には強面で大柄な男性が見える。あれがカトレアの父親か……。

「ただいま!」

「お帰り。あらいらっしゃい。すみませんね狭い家で。それにしても、まさかあのシルフィード家の令嬢様がうちに来てくれるとはねえ……」

「初めまして。突然伺って申し訳ありません。私はシルフィード公爵家令嬢ステラ=シルフィードと申します」

「まあまあご丁寧にどうも。どうぞごゆっくり。カトレア、夕飯の手伝いをして」

 それからしばらく二人で料理をする姿を眺めていた。何やら楽しげな雰囲気でいい家庭だと感じる。

 それはいいのだが……めちゃくちゃ気まずい。カトレアの父親がずっと黙ってるんだが!?いや寡黙なだけでこういう人なのか!?汗が……止まらんのだが……。その時カトレアの父親がその口を開いた。

「……騒がしい娘だろ。カトレアは」

「え?」

「入学式からずっとだ。『あの四大の『風神』ステラ様と同じクラスになった』『私はステラ様の弟子になって一緒に頑張るんだ』って。口を開けばステラ様ステラ様、本当にあなたを尊敬してる」

 ……なんか複雑だが、カトレアは本当にステラ=シルフィードを尊敬してるんだな。

「正直。あなたみたいな公爵令嬢が娘みたいな平民と友達になるなんて嘘だと思っていた。それが平民と貴族という地位の差だからな。だから、今日あなたを招いたのはオレと妻を安心させたいというカトレアなりの優しさだろう。気を悪くしたら申し訳ない」

「そんなことはありませんわ」

 そうカトレアの父親はオレに話す。めちゃくちゃ娘想いの良い父親じゃないか。オレには両親がいないから少しだけ羨ましくもある。でも、1つだけ言っておきたい。

「あのカトレアのお父様?私は貴族令嬢である前に、1人の学生です。そして、カトレアは私にとっても大切な親友ですから。そこには平民や貴族なんかの地位などない。同じ道を歩む存在です。安心してください。」

「あなたのような貴族令嬢もいるのだな。これからもカトレアと仲良くしてあげてくれ」

「もちろんですわ」

「お父さん!ステラ様ー!ご飯できたよー!」

 カトレアの家ではとても美味しい家庭的な料理をいただいた。最近は貴族の料理ばかり食べていたからこういうのもたまには良いものだ。

 そして食休みをしていると、入り口がノックされ、そこにはリリスがいた。迎えに来たのか……確かに長居しすぎたかもな。

「こんばんは。私はステラ様にお仕えしておりますメイドのリリスです。ステラ様をお迎えにあがりました」

「わざわざありがとう。それじゃ帰りますわ。今日は楽しかったわカトレア。また明日王立図書館で」

「はい!こちらこそ楽しい時間をありがとうございました!」

 こうして、オレはカトレアの家を出て馬車に乗り込んだ。するとリリスが微笑みながら口を開く。

「ふふっあんな感じなのですねエリック様のステラ様って。少し違いますが、ステラ様のようです」

「それ褒めてんのか?」

「もちろんです。久しぶりにステラ様を見たような気がしました。楽しかったですか初デートは?いきなりご自宅にまで伺うなんてエリック様もやりますね?」

「そんなんじゃねぇ!それとデートじゃねぇし!」

 リリスはいつものようにニコニコしながらオレを見てくる。……なんかムカつく。

「エリック様。顔が赤いですよ?」

「うるせぇ」

 そのまま馬車は屋敷に戻るために王都の町並みを走る。こうしてオレの初デート(?)は終わりをむかえる。そしてこれからもカトレアと共に頑張ろうと心に誓うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

処理中です...