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4. 四大公爵家

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 4. 四大公爵家



 オレはオレンジ髪のカトレアと共に教室に向かう。

 正直、ステラ=シルフィードが今までどんな風に生きてきたかはわからない。だからこそ最初が肝心だ。オレはステラ=シルフィードになりきり、クラスメートたちに溶け込んでいかなければならない。

 そんなことを考えていると、やっと目的の教室が見えてきた。

「ステラ様。どうかしましたか?」

「……よし」

 気合を入れて、オレは自分の教室に足を踏み入れることにする。ガラララッ!勢い良く扉をあけると不思議な光景が目に飛び込んできた。

 教壇の前にいる先生らしき女性がこちらを振り向き、笑顔で声をかけてくる。

「あっ!こんにちは!私のクラスの子だよね?良かった……誰も来ないのかと思ったぁ」

 ……誰も教室にいないんだが?どうやらこの教師しかいないようだな。

「えっとぉ……今日から君たちの担任をするルーティですっ!新任だけど頑張るからね!」

 元気いっぱいに自己紹介をする女性教師。その明るい表情には不安の色は見えない。本当にやる気満々って感じだ。しかしいくらなんでもこれは……。そんな時カトレアがこっそり耳打ちしてくる。

「ステラ様。あの噂は本当みたいです。」

「噂?」

「実は……担任のルーティ先生は指導力が他の教員に劣っているとか……だからこぞって他のクラスに行っちゃうみたいなんです。私は平民出身なので贅沢できないし、他のクラスが受け入れてくれないと思うし」

 なるほどな。というかカトレアって平民出身なのか。それでこんなにも生徒がいないわけか。だがまぁ丁度いいかもしれない。下手に優秀な奴がいるとオレが偽物だとバレるからな。

「あの先生。私はステラ=シルフィードですわ。よろしくお願いいたします」

「あっカトレア=セルディックです!よ、よろしくお願いします」

 とりあえず挨拶だけして席に着くことにした。

「あの先生、生徒は私たちだけですか?他の皆さんはまだ来てないようですわね?」

「……知ってると思うけど、みんな他のクラスに行っちゃったわ。もしあなたたちも他のクラスに行くなら先生止めないわ、今ならまだ間に合うと思うし」

 そう言って悲しげな顔を浮かべるルーティ先生。指導力が劣っているか……そんなことはないと思うがなこの王立魔法学園で教師になっている以上は。それよりオレのことがバレないならなんでもいい。

「わかりましたわ。でも私はこのクラスでお世話になるつもりですのでご安心くださいませ」

「私もです!ステラ様と一緒に頑張りますから色々教えてください!」

「ありがとう!2人とも!これから一緒に頑張ろうね!!」

 オレたちがルーティ先生に向かって宣言すると嬉しそうな笑顔を見せる。そしてそのまま授業を始めてしまった。

「じゃあ早速だけど授業を始めるね!まずは教科書を開いて……」

 こうしてオレたちは初めての授業を受けることになった。さて、上手く溶け込めるといいんだが。


 ◇◇◇


 そして入学して1週間がたつ。オレはその日の午前の授業を終え、昼休みになりカトレアと共に食堂に行くことにする。食堂には大勢の生徒で賑わいをみせていた。

 この1週間、ルーティ先生の授業を受けているが特段変わったことはなかった。普通に魔法の基礎についての授業。やはりルーティ先生の指導力が劣っているようには思えない。まぁいいか。

「そういえばステラ様。今年の王立魔法学園の新入生は豊作って言われてるんですよ!」

「豊作?なぜかしら?」

「え?四大が揃ってるんですよ!?興味無さすぎですよステラ様!自分のことなのに!」

「はぁ?」

 なんだこいつ。いきなり変なこと言い出したぞ。

「四大ってなんのことかしら?」

「もう!火・水・風・土の四属性を司る大精霊達の属性を守護し司る家のことですよ!ステラ様のシルフィード家は『風』を守護してますよね?」

「え?ええそうね……」

「火を司るフレイザード家。水を司るアクアマリン家。風を司るシルフィード家。大地を司るアースランド家が四大公爵家で、この聖ラステリア王国のそれぞれの領を管理しているんですよ!」

 なんか凄いテンション高くなってないか?面倒だな。まぁ適当に話を合わせておくか。

「その4人が今年入学してるんです。だから豊作だって言われているらしいです!火を司る『破炎』のグレン=フレイザードさん。水を司る『蒼氷』のエリス=アクアマリンさん。風を司る『風神』のステラ様。大地を司る『重岩』のラスター=アースランドさん。すごいですねぇ~。あっ!でもでもステラ様が一番ですよ!」

「そ、そうね。ありがとう。」

「ですです!今年は良いことがありそうです!」

 そんなことを話しているとガラの悪い男が話しかけてくる。

「おい。うるせぇぞそこの女ども。どけよそこはオレの席だぞ?」

「ひっ!」

 カトレアが怯えた声を出す。カトレアの前に出て男の前に立つ。なにがオレの席だ?意気がりやがって。

「なら名前くらい書いておいたらどうなのかしら?くだらないことで食事の邪魔をしないでほしいわね?」

「あぁん?なめてんのか。つーか誰だよお前?」

「ステラ=シルフィードですわ」

「ああ?あーお前が落ちこぼれクラスに好んで入ってる四大の恥さらしか」

 ……ほう。こういう勘違い野郎は軽く黙らせてやるか。

「……あなた、少し黙ってくれるかしら?」

「あ?」

「聞こえなかったの?黙れと言ったの。あなた程度が私の友達に文句を言うなんておこがましいにも程があるわ」

「んだとコラァ!」

 男は怒鳴ると拳を振り上げる。

「ひっ……!ステラ様!危ないです!」

「……大丈夫よカトレア。私に任せて」

 オレは振り下ろされる男の手を左手で受け止め、そのまま右手で顔を掴み地面に叩きつける。ドゴンッという音と共に一瞬、静寂が流れたかと思うと、すぐに周りにいた生徒はざわめき、騒ぎ出す。

「ぐぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

「うっさい。キャンキャン吠えるな。……わかったか?って聞いてねぇか」

 白目を剥いて気絶したようだ。まぁいいか。とりあえずこれで静かになるだろう。

「さ、行きましょうカトレア」

「す、ステラ様……。ありがとうございます!怖かったですぅ~」

 泣きながら抱きついてきた。やめろくっつくな!オレが男だとバレるかも知れんだろうが!

 それに、そんなに強くやったつもりはないが、やりすぎたかもしれん。それともオレのことを心配してくれたのか。どちらにせよ悪い気はしなかった。
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