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第3章 最強無敵の英雄譚 ~ロデンブルグ防衛戦~

9. 最強無敵の英雄譚④

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9. 最強無敵の英雄譚④



 -ロデンブルグ東-

 一時は危険な状況だったがブレイドとアティの加勢もあり、ほぼ魔物の殲滅が完了した。

「ある程度片付きましたね」

「ああ。お疲れアティ」

「はい。ブレイドさんも。それよりさっきの大きな音なんですかね?北の方から聞こえたような気がしたんですけど」

 先ほどの戦闘中に大きな音が聞こえてきた。その方向は間違いなくロデンブルグ北の入り口。エルンは無事だろうか。2人の脳裏に嫌な予感がよぎる。そしてそれは的中する。

「大変大変~!ブレイド!アティ!」

「ミーユさん?」

「どうかしたのか?」

「私さ、街の人たちを避難させてて、ある程度目処がついたから、みんなのこと気になって『鷹の目ホークアイ』で見たの。そしたらエルンがいる北の入り口にこ~んなに大きい三つ首の狼が現れて!」

「三つ首の狼……だと?」

 ブレイドの脳裏にあの時のことが思い出される。大切な仲間を守れなかった記憶。無意識のうちに握りしめていた拳が更に強くなる。

「それじゃ今すぐエルンさんを助けに行かないと!」

「そだね!急ごう!」

「待てミーユ、アティ」

 2人が走り出そうとしたところをブレイドが止める。どうして止めてしまうのか分からない2人は困惑している様子だった。

「お前たちはここに残れ。エルンはオレが助けに行く」

「でもブレイド1人じゃ危険じゃん!」

「そうですよ!私たちも行きます!」

 仲間のため。この2人は純粋に助けたいと思っているのだろう。しかし、だからこそブレイドは同行させたくない。今の実力では間違いなく足手まとい、最悪死ぬ可能性もある。

 そんなことを考えているとルーベット隊長がやってくる。

「エルン殿の仲間はいるか!!救援を頼む!エルン殿は今禁魔種ケルベロスと対峙している!」

 ルーベット隊長の『禁魔種』そのフレーズを聞いてその場にいた騎士たちは絶望する。

「なんで禁魔種が……」

「神はオレたちを見捨てたのか……」

 勝利への確信が絶望に変わる。誰もがそう思っている最中ミーユとアティは一切その感情を持ち合わせていなかった。『仲間を助けたい』ただその感情だけが強くあったのだ。

「禁魔種だかなんだか知らないけど、エルンを助けよう!」

「私のハンマーでボコボコにします!」

「落ち着け。禁魔種はプラチナランクの冒険者複数人でやっと討伐できるほどの危険な存在だ。エルンは『相殺の調停キャンセラー』があるから今はなんとか抑えてるんだろう。しかし体力や魔力は無限じゃない。」

「だったらなおさらじゃん!」

「そうですよ!」

 ここまで危険なことだと分かっても……エルンを。ブレイドはそれを見て話始める。

「……ミーユ、アティ聞いてくれ。お前たちには言っていなかったが、オレは……最強パーティーと言われた元『閃光』なんだ」

 それを聞いた周りの騎士たちが騒ぎだす。

「『閃光』だって!?」

「嘘だろ?なんでこんなところに?」

「いや、でもあの人めちゃくちゃ強かったぞ!?」

『閃光』誰もが知る、かつての最強ギルド冒険者パーティーの名。それがまさか目の前にいる人物だという衝撃的な事実に動揺を隠しきれなかった。

「オレたち『閃光』はかつての王国特級任務依頼で仲間を亡くした。今エルンが戦っている禁魔種ケルベロスと戦ってな。危険な相手だ。オレが必ずエルンだけは助ける。だからお前たちはここで待て」

 ブレイドは正直ここまで話すつもりはなかっただろう。それでも『仲間を助けたい』というミーユとアティを信じたいと思っていたのかもしれない。そしてその言葉を聞いたミーユとアティはこう言う。

「そなの?なら早くエルンを助けに行って!そしてついでに仇もうっちゃって!」

「私は許しませんよ?エルンさんだけはじゃなくて、エルンさんもブレイドさんも無事に帰ってくる。それじゃなきゃハンマーでボコボコにしますから」

「お前ら……」

 ミーユとアティはブレイドを元『閃光』として見てはいない。自分たちの仲間、エルンのパーティーの一員だと。その気持ちを感じ取ったブレイドは改めて2人に宣言する。

「当たり前だろ?絶対に全員生きて帰る。エルンを連れてな」

「うん!」

「はい!」

「ここは頼んだぞ」

 ブレイドはそう言って北の入り口に向かって駆け出した。もう二度と仲間を失うわけにはいかない。その決意を胸に秘めて。
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