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第3章 令嬢と大賢者。熱砂舞う王国の闇
5. 紅蓮の仔
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5. 紅蓮の仔
次の日。サーシャとマーリンは街で情報を集めることにしたみたい。サーシャの腰には私。マーリンの右手には昨日サーシャがプレゼントした、自分の身長くらいの長さの樫の杖が握られている。そしてその様子をサーシャが見て微笑んでいる。
「マーリン様。良かったです。その杖気にいってくれたみたいで」
「!?いや違うのじゃ!これは別に気に入ったとかではないのじゃ!」
マーリンが慌てている。そして恥ずかしそうにしている。可愛いところあるじゃない。
「さ、早く情報収集に行きましょう!マーリン様!」
「うむ……」
サーシャとマーリンは『ミスリル』の情報を探り始める。私はサーシャが腰に差しているため、特にすることがない。暇だわ……。しばらく情報を集めるとどうやら『ミスリル』はフランガラン帝国の王都の市場ならあるかもという情報が得られた。
「やっぱり王都ですね。問題はどうやって向かうかですけど……」
「ふむ……」
サーシャの言うことは正しい。フランガラン帝国は砂漠の真ん中にあるオアシスにある帝国。そこまではさすがに歩いていくことは出来ないだろう。何かしら移動手段が必要だ。
王族や貴族、有力な旅行商などは砂を走る魔法船を使う。しかし金額が相当高く、庶民にはとても手が出せないらしい。
「馬車を借りるのはどうですか?」
「それは無理な話じゃろ。金がないからの。それにこの国は商人に厳しい国。信用出来る人間しか商売させんじゃろう。つまり、ワシらみたいなよそ者には貸してはくれんじゃろうな」
「そうなんですか……困りましたね」
「まぁ。歩くのは嫌じゃが街や村を経由していくしかあるまい」
サーシャが腕を組み考える。その時だった。広場を世話しない感じでフランガラン帝国の紋章が入った鎧を着込んだ騎士達が走り回っている。
「またですか?何かあったんですかね?」
「こら。あまり干渉するでない。面倒事に巻き込まれるぞい?」
マーリンが注意するが、サーシャは好奇心を抑えきれずに騎士達に話しかける。この子ってこういう子よね。仕方ない。
「あのーすみません」
「ん?なんだ貴様らは?」
「何かあったんですか?」
「ある人物を探している。そいつは『紅蓮の仔』と呼ばれ、我がフランガラン帝国に害をもたらす化け物のような奴だ」
『紅蓮の仔』?大層な呼び名をつけちゃって。でも……どこかで聞いたことがあるような……
「すまない。急いでいるんでな」
そう言って騎士達は立ち去る。
「なんか嫌な予感がしますね……『紅蓮の仔』って一体……ん?マーリン様?」
マーリンは目を閉じて何かを考えているようだった。そして目を開き、ゆっくりサーシャに話し始める。
「サーシャ。さっきの話が本当なら少し面倒なことになるかもしれぬ。まさか『紅蓮の仔』とは……」
「えっ?どういう意味ですか?」
「『紅蓮の仔』とは生まれながらに魔力量が多い子供を指す言葉じゃ。そのせいで大体の子供が暴走しやすいのじゃが、稀に強大な力を手に入れることが出来る場合もある。もし生きておるのなら厄介なことになるかもしれぬ」
「そんな人が本当にいるんですか!?」
「ああ。実際、1000年前にワシも一度『紅蓮の仔』を見たことがあるが、あれは人ではなくもはや怪物と呼ぶに相応しい存在じゃった。そしてその力は強すぎる故に周りのものを傷つけてしまうのじゃ」
……思い出したわ。あの時のことね。確か……あの人の剣で……。そんなことを考えていると突然後ろから誰かに呼ばれる。
「あれあれ?お客様にゃ?」
「え?宿屋の猫のメイドさん?」
「もう宿屋は昨日辞めたにゃ。これから王都に向かうんだにゃ。」
だからこの人はなんで猫耳でメイドの格好してるのよ……しかも宿屋を辞めたならなおさらなんだけどさ。
「どうやって王都にいくつもりじゃ?街や村を経由して行くのか?」
マーリンのその言葉にそのメイドは勝ち誇ったような顔で答える。
「ちっちっちっ。甘いですにゃ。秘密の抜け道を使うのにゃ」
「抜け道じゃと?」
「そうにゃ。実はこの国には王族や貴族も知らない抜け道があるのにゃ。そこを使えばあっと言う間に目的地に着くのにゃ!宿屋で働いてればこのくらいの情報は手に入るのにゃ!」
「ほう。それはすごいのぉ」
「あの猫のメイドさん!私たちにもその抜け道を教えてもらえませんか?どうしても王都にある『ミスリル』が必要で……」
サーシャがそう言うと、猫のメイドはその大きな胸を張り自信満々の顔で言う。
「いいですにゃ。今日は気分が良いのにゃ。猫はきまぐれですにゃ。あと私の事はリズと呼んで欲しいにゃ」
「あっはい。私はサーシャ=グレイスです。こちらは大魔女マーリン様です」
「……大魔女?もしかして『英雄伝』の魔女ですにゃ!?」
「ふむ。知っておるようじゃな。まぁよろしく頼むぞリズ」
こうしてサーシャとマーリンは秘密の抜け道を知っているという。なぜか猫耳をつけたメイドさんのリズと共に砂漠の真ん中にあるフランガラン帝国を目指すことになるのだった。
次の日。サーシャとマーリンは街で情報を集めることにしたみたい。サーシャの腰には私。マーリンの右手には昨日サーシャがプレゼントした、自分の身長くらいの長さの樫の杖が握られている。そしてその様子をサーシャが見て微笑んでいる。
「マーリン様。良かったです。その杖気にいってくれたみたいで」
「!?いや違うのじゃ!これは別に気に入ったとかではないのじゃ!」
マーリンが慌てている。そして恥ずかしそうにしている。可愛いところあるじゃない。
「さ、早く情報収集に行きましょう!マーリン様!」
「うむ……」
サーシャとマーリンは『ミスリル』の情報を探り始める。私はサーシャが腰に差しているため、特にすることがない。暇だわ……。しばらく情報を集めるとどうやら『ミスリル』はフランガラン帝国の王都の市場ならあるかもという情報が得られた。
「やっぱり王都ですね。問題はどうやって向かうかですけど……」
「ふむ……」
サーシャの言うことは正しい。フランガラン帝国は砂漠の真ん中にあるオアシスにある帝国。そこまではさすがに歩いていくことは出来ないだろう。何かしら移動手段が必要だ。
王族や貴族、有力な旅行商などは砂を走る魔法船を使う。しかし金額が相当高く、庶民にはとても手が出せないらしい。
「馬車を借りるのはどうですか?」
「それは無理な話じゃろ。金がないからの。それにこの国は商人に厳しい国。信用出来る人間しか商売させんじゃろう。つまり、ワシらみたいなよそ者には貸してはくれんじゃろうな」
「そうなんですか……困りましたね」
「まぁ。歩くのは嫌じゃが街や村を経由していくしかあるまい」
サーシャが腕を組み考える。その時だった。広場を世話しない感じでフランガラン帝国の紋章が入った鎧を着込んだ騎士達が走り回っている。
「またですか?何かあったんですかね?」
「こら。あまり干渉するでない。面倒事に巻き込まれるぞい?」
マーリンが注意するが、サーシャは好奇心を抑えきれずに騎士達に話しかける。この子ってこういう子よね。仕方ない。
「あのーすみません」
「ん?なんだ貴様らは?」
「何かあったんですか?」
「ある人物を探している。そいつは『紅蓮の仔』と呼ばれ、我がフランガラン帝国に害をもたらす化け物のような奴だ」
『紅蓮の仔』?大層な呼び名をつけちゃって。でも……どこかで聞いたことがあるような……
「すまない。急いでいるんでな」
そう言って騎士達は立ち去る。
「なんか嫌な予感がしますね……『紅蓮の仔』って一体……ん?マーリン様?」
マーリンは目を閉じて何かを考えているようだった。そして目を開き、ゆっくりサーシャに話し始める。
「サーシャ。さっきの話が本当なら少し面倒なことになるかもしれぬ。まさか『紅蓮の仔』とは……」
「えっ?どういう意味ですか?」
「『紅蓮の仔』とは生まれながらに魔力量が多い子供を指す言葉じゃ。そのせいで大体の子供が暴走しやすいのじゃが、稀に強大な力を手に入れることが出来る場合もある。もし生きておるのなら厄介なことになるかもしれぬ」
「そんな人が本当にいるんですか!?」
「ああ。実際、1000年前にワシも一度『紅蓮の仔』を見たことがあるが、あれは人ではなくもはや怪物と呼ぶに相応しい存在じゃった。そしてその力は強すぎる故に周りのものを傷つけてしまうのじゃ」
……思い出したわ。あの時のことね。確か……あの人の剣で……。そんなことを考えていると突然後ろから誰かに呼ばれる。
「あれあれ?お客様にゃ?」
「え?宿屋の猫のメイドさん?」
「もう宿屋は昨日辞めたにゃ。これから王都に向かうんだにゃ。」
だからこの人はなんで猫耳でメイドの格好してるのよ……しかも宿屋を辞めたならなおさらなんだけどさ。
「どうやって王都にいくつもりじゃ?街や村を経由して行くのか?」
マーリンのその言葉にそのメイドは勝ち誇ったような顔で答える。
「ちっちっちっ。甘いですにゃ。秘密の抜け道を使うのにゃ」
「抜け道じゃと?」
「そうにゃ。実はこの国には王族や貴族も知らない抜け道があるのにゃ。そこを使えばあっと言う間に目的地に着くのにゃ!宿屋で働いてればこのくらいの情報は手に入るのにゃ!」
「ほう。それはすごいのぉ」
「あの猫のメイドさん!私たちにもその抜け道を教えてもらえませんか?どうしても王都にある『ミスリル』が必要で……」
サーシャがそう言うと、猫のメイドはその大きな胸を張り自信満々の顔で言う。
「いいですにゃ。今日は気分が良いのにゃ。猫はきまぐれですにゃ。あと私の事はリズと呼んで欲しいにゃ」
「あっはい。私はサーシャ=グレイスです。こちらは大魔女マーリン様です」
「……大魔女?もしかして『英雄伝』の魔女ですにゃ!?」
「ふむ。知っておるようじゃな。まぁよろしく頼むぞリズ」
こうしてサーシャとマーリンは秘密の抜け道を知っているという。なぜか猫耳をつけたメイドさんのリズと共に砂漠の真ん中にあるフランガラン帝国を目指すことになるのだった。
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