34 / 40
34. 本当に
しおりを挟む
34. 本当に
『ディアーナ』にあるホラーハウスのディアーナ城。若き『レイブン』の魔法士に敗れた1人の吸血鬼がまだもがいていた。
「許さん……許さんぞ……残念だったな……オレは不死身だぞ……」
徐々に身体を再生させていく。吸血鬼は死なない。首を落とされても、心臓に杭を打ち込まれようとも。だがその代償として魔力と生命力を消費する。そのために血を欲するのだ。
「この傷では……長くは持たんか……ならば!」
ヴラドは自らの身体を引き裂き、溢れ出る血を飲み干す。するとみるみると身体が再生していく。しかし、同時に体力も奪われる。吸血鬼は自身の限界を感じていた。
「クククッ……まだだ!もっと血を吸えばまだ戦える!もっと血を吸ってやる!!」
その様子を見ている人物がいる。
「あーあ。醜いね?『ドール』とかいう魔女にそそのかされてさ?プライドがないのかなぁ君は?」
「誰だ!?」
「よっと……」
その姿は透き通るような銀髪。そして全てを魅了するような美しい赤い瞳。
「お前は何者だ?」
「お前?誰に口をきいてるのかなぁ君?」
そして一瞬で造り出した黒き刃の剣で、バラバラに切り裂かれる。
「ぐあああっ!!」
「恥を知ったほうがいいよ?君はもう終わりだからさ?」
ヴラドの身体は今までの再生能力が嘘のように再生をしなくなっていく。
「くっ……なぜだ……なぜ……」
「まだ分からない?私が誰だか?」
その少女は縛っているツインテールをほどく。さらりと流れる長い銀の髪。
「まさか……あなた様は……!!」
「やっと分かったみたいだねぇ?でも遅いかなぁ。」
少女はニヤリと笑う。そしてヴラドを強力な魔力で一瞬で消し炭にする。その魅了するような瞳は赤く輝いている。
「はぁ……」
その少女はある場所まで歩き、その地面に舌を這いずり回らせる。そこは先ほどまで戦っていた若き『レイブン』の少年がいた場所。
「これがアデル君の血……なんて甘くて美味しいの……もうトマトジュースじゃ、がまんできないかもね?」
そう言いながらペロペロとその地面を舐め回す。その様子はまるで犬のようであった。
「アデル君の血が飲みたいなぁ……今度は首筋から吸血してみよっかな……ん?いけないいけない。まずは『ドール』とかいう魔女を探さないと。とりあえず今回は貸しにしとくよアデル君」
そう言って彼女は姿を消す。そこには彼女がいた証拠は何も残らなかった。
消毒液の臭い。オレはゆっくりと目を開ける。ここは病院だろうか?
「アデル=バーライト。目が覚めたのですね」
オレの事を覗き込む金髪碧眼の公爵令嬢が声をかけてくる。その声はいつもと同じで特別なことはないが、オレにとってとても優しく心地よいものだった。
「アリス……」
「まだ寝ててください。魔力の使いすぎだそうです」
「エミリーは!?」
「安心してください。無事です。」
その言葉を聞いてホッとする。よかった……本当に良かった……。
「あとセリア=グランメールも無事です。とりあえず適当に話をあわせて帰ってもらいました。」
「そうか。ありがとなアリス。」
「別にお礼など必要ありません。私は当然のことをしただけです」
アリスは少しだけ照れたように言う。なんだかんだ言って優しいやつだ。
「それにしてもよくオレがあの場所にいると分かったな?」
「コレット=フルールが通信魔法具の探知機能を使ったので。私は関係ありませんから。」
またかよ……オレのプライベートは守られないのかよ……。まあ仕方ないか。コレットには感謝しないとな。
「そうだな。助かったよ。」
そう言ったきり会話がなくなる。だが気まずい感じではない。むしろ心が落ち着くような感覚だ。するとアリスが口を開く。
「……アデル=バーライト。相談があるのですが?」
「なんだ?」
「私と……訓練をしませんか?山籠りです。もっと強くならなければいけない。そしてあなたの剣であるために」
真っ直ぐな瞳で見つめてくる。その瞳は吸い込まれそうなくらい綺麗だった。
「オレも今回の件でエミリーを傷つけてしまった……悔しいのはある。中途半端はいらないぞアリス。やるならとことんやろう。オレもお前の盾になるから」
オレも真っ直ぐアリスを見る。もう誰も傷つけさせない。大切な人を護るために。そしてオレたちは握手をする。
「壁ではないのですか?」
「盾だって言ってんだろ!いい加減にしろ!」
「ふっ……」
「ハハッ……」
お互いに笑い合う。こんなに笑ったのはいつぶりだろう。久しぶりに心の底から笑えた気がする。そしてアリスがここまで笑う顔も初めて見た。だから本当の意味での『相棒』になれたのかもしれない。
『ディアーナ』にあるホラーハウスのディアーナ城。若き『レイブン』の魔法士に敗れた1人の吸血鬼がまだもがいていた。
「許さん……許さんぞ……残念だったな……オレは不死身だぞ……」
徐々に身体を再生させていく。吸血鬼は死なない。首を落とされても、心臓に杭を打ち込まれようとも。だがその代償として魔力と生命力を消費する。そのために血を欲するのだ。
「この傷では……長くは持たんか……ならば!」
ヴラドは自らの身体を引き裂き、溢れ出る血を飲み干す。するとみるみると身体が再生していく。しかし、同時に体力も奪われる。吸血鬼は自身の限界を感じていた。
「クククッ……まだだ!もっと血を吸えばまだ戦える!もっと血を吸ってやる!!」
その様子を見ている人物がいる。
「あーあ。醜いね?『ドール』とかいう魔女にそそのかされてさ?プライドがないのかなぁ君は?」
「誰だ!?」
「よっと……」
その姿は透き通るような銀髪。そして全てを魅了するような美しい赤い瞳。
「お前は何者だ?」
「お前?誰に口をきいてるのかなぁ君?」
そして一瞬で造り出した黒き刃の剣で、バラバラに切り裂かれる。
「ぐあああっ!!」
「恥を知ったほうがいいよ?君はもう終わりだからさ?」
ヴラドの身体は今までの再生能力が嘘のように再生をしなくなっていく。
「くっ……なぜだ……なぜ……」
「まだ分からない?私が誰だか?」
その少女は縛っているツインテールをほどく。さらりと流れる長い銀の髪。
「まさか……あなた様は……!!」
「やっと分かったみたいだねぇ?でも遅いかなぁ。」
少女はニヤリと笑う。そしてヴラドを強力な魔力で一瞬で消し炭にする。その魅了するような瞳は赤く輝いている。
「はぁ……」
その少女はある場所まで歩き、その地面に舌を這いずり回らせる。そこは先ほどまで戦っていた若き『レイブン』の少年がいた場所。
「これがアデル君の血……なんて甘くて美味しいの……もうトマトジュースじゃ、がまんできないかもね?」
そう言いながらペロペロとその地面を舐め回す。その様子はまるで犬のようであった。
「アデル君の血が飲みたいなぁ……今度は首筋から吸血してみよっかな……ん?いけないいけない。まずは『ドール』とかいう魔女を探さないと。とりあえず今回は貸しにしとくよアデル君」
そう言って彼女は姿を消す。そこには彼女がいた証拠は何も残らなかった。
消毒液の臭い。オレはゆっくりと目を開ける。ここは病院だろうか?
「アデル=バーライト。目が覚めたのですね」
オレの事を覗き込む金髪碧眼の公爵令嬢が声をかけてくる。その声はいつもと同じで特別なことはないが、オレにとってとても優しく心地よいものだった。
「アリス……」
「まだ寝ててください。魔力の使いすぎだそうです」
「エミリーは!?」
「安心してください。無事です。」
その言葉を聞いてホッとする。よかった……本当に良かった……。
「あとセリア=グランメールも無事です。とりあえず適当に話をあわせて帰ってもらいました。」
「そうか。ありがとなアリス。」
「別にお礼など必要ありません。私は当然のことをしただけです」
アリスは少しだけ照れたように言う。なんだかんだ言って優しいやつだ。
「それにしてもよくオレがあの場所にいると分かったな?」
「コレット=フルールが通信魔法具の探知機能を使ったので。私は関係ありませんから。」
またかよ……オレのプライベートは守られないのかよ……。まあ仕方ないか。コレットには感謝しないとな。
「そうだな。助かったよ。」
そう言ったきり会話がなくなる。だが気まずい感じではない。むしろ心が落ち着くような感覚だ。するとアリスが口を開く。
「……アデル=バーライト。相談があるのですが?」
「なんだ?」
「私と……訓練をしませんか?山籠りです。もっと強くならなければいけない。そしてあなたの剣であるために」
真っ直ぐな瞳で見つめてくる。その瞳は吸い込まれそうなくらい綺麗だった。
「オレも今回の件でエミリーを傷つけてしまった……悔しいのはある。中途半端はいらないぞアリス。やるならとことんやろう。オレもお前の盾になるから」
オレも真っ直ぐアリスを見る。もう誰も傷つけさせない。大切な人を護るために。そしてオレたちは握手をする。
「壁ではないのですか?」
「盾だって言ってんだろ!いい加減にしろ!」
「ふっ……」
「ハハッ……」
お互いに笑い合う。こんなに笑ったのはいつぶりだろう。久しぶりに心の底から笑えた気がする。そしてアリスがここまで笑う顔も初めて見た。だから本当の意味での『相棒』になれたのかもしれない。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる