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17. 思惑
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17. 思惑
アリスは覚悟を決めたようにその刀を握りしめ、真っ直ぐエキドナを見つめる。そして腰を落とし、構えを取る。
「やるじゃない坊や?あなたは最後まで食べないであげるわね?」
「ありがとうございますエキドナ様」
「さぁ仲間にも裏切られた絶望を味わって死になさい!」
「そうだな。でも、死ぬのはお前だエキドナ?」
「な!貴様まさかわざと……」
そう言いかけた瞬間、強力な風圧と共にエキドナの身体は真っ二つに切り裂かれた。……待て待てオレの服も少し破けてるんだが?
「ぎゃあああああ!!!」
「悪いな?さすがに蛇を好きになることは出来ないな?」
「うぅ……ぐっ……」
エキドナはそのまま絶命した。さすがはカタリナの魔法具だ。全然魅了されなかった。あとあまり考えたくないが、もしかしたらあの惚れ薬の効果もあったのかもな。
「終わったか。大丈夫かアリス?」
「はい。予想以上にあなたの演技がヘタでムカつきましたけど大丈夫です。」
「というか屑は言い過ぎだからな?」
「はい?あれは演技ではありませんけど?」
「は?……あと服が破れてんだが?お前オレごと斬ろうとしてなかった?」
「距離感が掴めないので。知ってますよね?」
「お前な!」
知ってますよね?じゃねぇ。いや絶対わざとだ。こいつからは悪意しか感じない。オレが『生意気な無表情公爵令嬢』とか言ったのを根にもってんだろ。
こうしてエキドナを討伐したオレたちは後処理を『レイブン』の仲間に任せて帰ることにする。
「別に送ってもらわなくても大丈夫ですが?」
「そういう訳にもいかないだろ?こんな夜遅くに公爵令嬢を1人で帰らせるわけにはいかねえよ」
「はあ……わかりました」
そのまま無言でアリスの屋敷まで歩いていく。ふと隣を見るとアリスは月明かりに照らされながらとても綺麗で神秘的な姿に見える。そして一気に鼓動が速くなるのを感じた。
「どうしました?私の顔を見て?」
「いやなんでもない」
オレは自分の顔を見られないよう前を向いて歩き続ける。
「……服の事を根にもってるんですか?小さい男ですね。あなたって」
「うるせぇよ。この服はお前が買ってくれたやつだろ。」
「……なら、また一緒に買いにいけばいいです。」
「え?それってもしかして……」
「勘違いしないでください。あなたのダサい格好じゃ私には釣り合いませんし、恥ずかしいだけですから。むしろあなたのために時間を作ってあげるのだから感謝してほしいくらいですよ」
「へいへい。ありがとよ」
アリスはいつもの無表情だけど、どことなく頬を赤くしているようにも見える。そんなアリスを見ていると自然と笑みが溢れてきた。
「何笑ってるんですか?気持ち悪い」
「別に。素直じゃないなと思ってな。」
「は?何を言って……」
「ほれ、着いたぞ」
気がつくともう屋敷の前に立っていた。もう少しだけこのまま2人きりの時間を過ごしたかったが、まぁ仕方がない。これ以上遅くなると迷惑をかけてしまうだろう。
「では私はこれで失礼します」
「おう。おやすみアリス」
「……おやすみなさいアデル=バーライト」
そう言うと、アリスは早足で去っていった。その姿が見えなくなるまで見送るとオレも自分の家に帰ることにした。
翌朝、朝食を食べ終えて学院に向かう準備をしていると玄関の扉を叩く音が聞こえてくる。
「お兄ちゃんお願い!」
「おう。」
こんな朝早くから誰だろうか?と思いつつドアを開けるとそこには、あの銀髪ツインテールがいた。
「おはよう!アデル君!今日もいい天気だね!」
「……」
一瞬思考が停止するが、オレは咄嗟に扉を閉める。なんだ?今目の前にいたのは絶対に幻覚だ。きっと疲れてるんだろうな。外からドンドンという抵抗の音が聞こえてくる。
「なんで閉めちゃうの!?開けて!」
「なんでお前が家にくるんだよ!帰れ!」
「酷いよアデル君!せっかく来たのに……」
オレが無視してると、扉越しに泣き声が聞こえる。これはまずい。泣かせるつもりは無かったんだが……。仕方ないな。
「わかったから泣くなよ……」
オレは観念するとゆっくりと扉を開く。その瞬間、勢いよく抱きついてきた。
「うおっと……」
「やっと開けてくれたね。」
「嘘泣きとかずるいぞお前!あと離れろ。」
「やだよー!それよりさ、一緒に学校いこ?」
とりあえず離れてもらおうとするが、こいつの腕力が強すぎて全然引き剥がせない。というか痛い。
「お兄ちゃん誰その人?」
「いやエミリーこいつは……」
「あっアデル君の妹ちゃん!?可愛い!いつもサンドイッチありがとー、私はトマトが入ってるのが好きだよ!」
「おいコラ話を聞け!」
ダメだ。こいつ人の話聞かねぇタイプだ。あとオレの愛しのエミリーの前で変なこと言わないでくれ。
「もう何も喋るな!行くぞセリア!」
「じゃあねエミリーちゃん!また来るね!」
「あぁうん。行ってらっしゃい……」
こうして半ば強引に連れていかれた。
「えへへ。朝からアデル君と登校楽しいね!」
「オレは朝から最悪だけどな」
「あっそう言えば、アデル君ったら嘘つきなんだから!このこの!すみにおけないんだから!まったく」
「は?」
なんだよいきなり。セリアはニヤニヤしながら肘で小突いてきやがる。
「昨日アリスティアさんとデートしてたでしょ?私見たんだよね中央広場で?」
昨日見てた?まずい……エキドナとの戦いを見られてしまったのか?いやそれはない。中央広場はすぐに封鎖されたはずだからな。
「見たって?」
「なんか2人でご飯を食べに行くところ?」
「その後は?」
「え?その後?見てないよ私ストーカーじゃないしさ!でも仲良さそうだったね」
「そっか……」
よかった……どうやら本当に知らないようだ。オレは安堵のため息をつく。
「なあに?ほっとしてんのかな~?このこの~なんかあったのかな?」
「うるせぇ!なんもねぇよ!」
そう言ってオレは先に歩いていく。そしてセリアは微笑みながら呟く。
「……まぁいいけど。あんなザコにやられても困るしね。もっと強くなって楽しましてねアデル君?」
「おい!何してんだ?置いてくぞ?」
「ちょっと待って~!私トマトジュース飲みたい!」
こうして色々な思惑が動き始めていたのだった。
アリスは覚悟を決めたようにその刀を握りしめ、真っ直ぐエキドナを見つめる。そして腰を落とし、構えを取る。
「やるじゃない坊や?あなたは最後まで食べないであげるわね?」
「ありがとうございますエキドナ様」
「さぁ仲間にも裏切られた絶望を味わって死になさい!」
「そうだな。でも、死ぬのはお前だエキドナ?」
「な!貴様まさかわざと……」
そう言いかけた瞬間、強力な風圧と共にエキドナの身体は真っ二つに切り裂かれた。……待て待てオレの服も少し破けてるんだが?
「ぎゃあああああ!!!」
「悪いな?さすがに蛇を好きになることは出来ないな?」
「うぅ……ぐっ……」
エキドナはそのまま絶命した。さすがはカタリナの魔法具だ。全然魅了されなかった。あとあまり考えたくないが、もしかしたらあの惚れ薬の効果もあったのかもな。
「終わったか。大丈夫かアリス?」
「はい。予想以上にあなたの演技がヘタでムカつきましたけど大丈夫です。」
「というか屑は言い過ぎだからな?」
「はい?あれは演技ではありませんけど?」
「は?……あと服が破れてんだが?お前オレごと斬ろうとしてなかった?」
「距離感が掴めないので。知ってますよね?」
「お前な!」
知ってますよね?じゃねぇ。いや絶対わざとだ。こいつからは悪意しか感じない。オレが『生意気な無表情公爵令嬢』とか言ったのを根にもってんだろ。
こうしてエキドナを討伐したオレたちは後処理を『レイブン』の仲間に任せて帰ることにする。
「別に送ってもらわなくても大丈夫ですが?」
「そういう訳にもいかないだろ?こんな夜遅くに公爵令嬢を1人で帰らせるわけにはいかねえよ」
「はあ……わかりました」
そのまま無言でアリスの屋敷まで歩いていく。ふと隣を見るとアリスは月明かりに照らされながらとても綺麗で神秘的な姿に見える。そして一気に鼓動が速くなるのを感じた。
「どうしました?私の顔を見て?」
「いやなんでもない」
オレは自分の顔を見られないよう前を向いて歩き続ける。
「……服の事を根にもってるんですか?小さい男ですね。あなたって」
「うるせぇよ。この服はお前が買ってくれたやつだろ。」
「……なら、また一緒に買いにいけばいいです。」
「え?それってもしかして……」
「勘違いしないでください。あなたのダサい格好じゃ私には釣り合いませんし、恥ずかしいだけですから。むしろあなたのために時間を作ってあげるのだから感謝してほしいくらいですよ」
「へいへい。ありがとよ」
アリスはいつもの無表情だけど、どことなく頬を赤くしているようにも見える。そんなアリスを見ていると自然と笑みが溢れてきた。
「何笑ってるんですか?気持ち悪い」
「別に。素直じゃないなと思ってな。」
「は?何を言って……」
「ほれ、着いたぞ」
気がつくともう屋敷の前に立っていた。もう少しだけこのまま2人きりの時間を過ごしたかったが、まぁ仕方がない。これ以上遅くなると迷惑をかけてしまうだろう。
「では私はこれで失礼します」
「おう。おやすみアリス」
「……おやすみなさいアデル=バーライト」
そう言うと、アリスは早足で去っていった。その姿が見えなくなるまで見送るとオレも自分の家に帰ることにした。
翌朝、朝食を食べ終えて学院に向かう準備をしていると玄関の扉を叩く音が聞こえてくる。
「お兄ちゃんお願い!」
「おう。」
こんな朝早くから誰だろうか?と思いつつドアを開けるとそこには、あの銀髪ツインテールがいた。
「おはよう!アデル君!今日もいい天気だね!」
「……」
一瞬思考が停止するが、オレは咄嗟に扉を閉める。なんだ?今目の前にいたのは絶対に幻覚だ。きっと疲れてるんだろうな。外からドンドンという抵抗の音が聞こえてくる。
「なんで閉めちゃうの!?開けて!」
「なんでお前が家にくるんだよ!帰れ!」
「酷いよアデル君!せっかく来たのに……」
オレが無視してると、扉越しに泣き声が聞こえる。これはまずい。泣かせるつもりは無かったんだが……。仕方ないな。
「わかったから泣くなよ……」
オレは観念するとゆっくりと扉を開く。その瞬間、勢いよく抱きついてきた。
「うおっと……」
「やっと開けてくれたね。」
「嘘泣きとかずるいぞお前!あと離れろ。」
「やだよー!それよりさ、一緒に学校いこ?」
とりあえず離れてもらおうとするが、こいつの腕力が強すぎて全然引き剥がせない。というか痛い。
「お兄ちゃん誰その人?」
「いやエミリーこいつは……」
「あっアデル君の妹ちゃん!?可愛い!いつもサンドイッチありがとー、私はトマトが入ってるのが好きだよ!」
「おいコラ話を聞け!」
ダメだ。こいつ人の話聞かねぇタイプだ。あとオレの愛しのエミリーの前で変なこと言わないでくれ。
「もう何も喋るな!行くぞセリア!」
「じゃあねエミリーちゃん!また来るね!」
「あぁうん。行ってらっしゃい……」
こうして半ば強引に連れていかれた。
「えへへ。朝からアデル君と登校楽しいね!」
「オレは朝から最悪だけどな」
「あっそう言えば、アデル君ったら嘘つきなんだから!このこの!すみにおけないんだから!まったく」
「は?」
なんだよいきなり。セリアはニヤニヤしながら肘で小突いてきやがる。
「昨日アリスティアさんとデートしてたでしょ?私見たんだよね中央広場で?」
昨日見てた?まずい……エキドナとの戦いを見られてしまったのか?いやそれはない。中央広場はすぐに封鎖されたはずだからな。
「見たって?」
「なんか2人でご飯を食べに行くところ?」
「その後は?」
「え?その後?見てないよ私ストーカーじゃないしさ!でも仲良さそうだったね」
「そっか……」
よかった……どうやら本当に知らないようだ。オレは安堵のため息をつく。
「なあに?ほっとしてんのかな~?このこの~なんかあったのかな?」
「うるせぇ!なんもねぇよ!」
そう言ってオレは先に歩いていく。そしてセリアは微笑みながら呟く。
「……まぁいいけど。あんなザコにやられても困るしね。もっと強くなって楽しましてねアデル君?」
「おい!何してんだ?置いてくぞ?」
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