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第4章 聖女。本の知識でダンジョン攻略するのです! 

22. 恩返し ~マルセナside~ 

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22. 恩返し ~マルセナside~ 



 聖女マルセナが「聖女」ではなく一人の女性として生きていくことを決めた次の日。普段通りランバート王国の教会の仕事をしているマルセナ。しかし今の自分は「聖痕」が消え聖魔法が使えない状態なのだ。いずれバレるのも時間の問題になっていた。

「あらマルセナ様なんかいいことあった?」

「メアリー。別に何もないわよ」

「本当?なんかすごい嬉しそうな顔に見えたんだけど。まぁいいや」

 なんて鋭いのだこの子は。でもまだ言えないなぁ……そしてその日の夜、いつものように寝ていると突然胸騒ぎを感じた。虫の知らせというのか……それとも聖女の経験からなのか……

(なんだろう。すごく嫌な予感がする)

 そう思った瞬間マルセナはベッドから飛び起きて急いで着替えると自分の部屋を飛び出した。向かう先はもちろんライアン王子の部屋だ。マルセナがドアの前にたどり着くと中からは言い争うような声が聞こえてきた。

 そしてそのあとすぐに扉が開いた。出てきたのはやはりライアンだった。マルセナはすぐさま駆け寄り叫んだ。

「どうしたんですか!?何があったんですか!」

 するとライアンは顔を青くしながら答えた。

「マルセナ!すまない……私のせいなんだ……」

「どういうことですか!」

 マルセナはすぐに部屋に入り状況を確認した。そこには血を流し倒れている兵士がいた。マルセナはライアンに問いかけた。

「一体ここで何があったんですか!なぜこんなことをしたのか説明してください!」

「話している時間がない。今は私を信じて一緒に来てくれ!」

 そういうとライアンは自分の上着を脱いでマルセナの頭に被せ手を引いた。そのまま二人は外に向かって走り出した。

 道中で兵士たちが何事かと二人を見ていたがそんなことはお構いなしにひたすら走った。城を出て古びた教会の前まで着くとライアンはマルセナの手を引いて建物の中に入った。

 幸いにも教会には誰もいなかった。だが安心はできない。もし誰かに見つかればもう逃げられないかもしれない。

 それでも今は何も考えずにとにかく逃げたかった。二人で礼拝堂の中に入るとそこでようやく息を整え始めた。そして少し落ち着いたところでライアンは話しを始めた。

「父上と兄上に君との事が知られた。だから私を捕らえようと兵士が私の部屋に。反撃したところに君が来たというわけだ」

「そんなことをしたらあなたが……」

「私は本当に君を愛しているんだ。もうセントリン王国に攻めいるなど断じて出来ない」

 そういうとライアンはマルセナを抱き寄せキスをした。最初は驚いたもののマルセナも自然とその行為を受け入れた。

「何とかセントリン王国へ行き、カトリーナ教会にも知らせないといけないな……」

「ライアン……」

「安心してくれ。君は私が必ず守る」

 その時、突然外から足音が聞こえてきた。しかも一人じゃない。何人もいるようだ。二人は慌てて入り口まで戻り外の様子を伺った。

 外にはすでに何人かの兵士が集まっているが、こちらに来る様子はない。どうやら様子を見に来ただけのようだった。しかし、それがかえって不気味だった。

 それからしばらく経った後、また別の方向から複数の人の気配を感じ取った。それもかなり近い。これはまずいと二人は判断し今度は建物の中から外へ出た。もう逃げ場所はないの?マルセナが諦めかけた時、聞き覚えのある声が二人を導く。

「聖女マルセナ様。ライアン王子こっちです!」

「君は……」

「エミリー!?」

「さぁ早く!兵士たちに見つかる前に!」

 そこには若きメイドのエミリーがいたのだ。マルセナたちは必死に声のする方へ走って行った。二人がたどり着いた先は古い倉庫のようなところだった。中には既に数人の人影があった。そこにいたのはランバート王国の使用人や給仕長のメリッサさんもいたのだ。

 マルセナは思わず泣き出してしまった。

 無事だったことへの安堵感もあったがそれ以上にみんながよそ者の自分のために集まってくれたことが嬉しかった。

「とりあえずここにいれば少しは時間が稼げるでしょう」

「メリッサさん……それに皆さんどうして……」

「どうしてもこうしてもないですよ聖女マルセナ様。あなたを助けたい。それだけですよ」

 そう言うと他の人たちも大きくうなずいていた。そしてメリッサさんとエミリーが言った。

「マルセナ様のおかげで私たちは救われました。あなたが来てから毎日が楽しくなった。みんなの笑顔も増えた。あなたが変わったように、私たちも変わったのです。これからは私たちの力で恩返しさせてください」

「そう言うことです!聖女マルセナ様!親友の私が必ず逃がしてあげますから。」

 マルセナはメリッサさんとエミリーのその言葉を聞いてさらに涙を流した。自分は変われたんだ……そう思うのと同時に、幸せ者だと心の底から思えたのだった。
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