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追憶の章 魔女と聖女の始まり

24. 仲間として

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24. 仲間として



 私たちが麓の街ガナードについて1週間。魔法都市に向かうための資金稼ぎ、山越えの準備は着々とすすんでいる。今日もいつものようにギルドの依頼を終え、ギル坊をからかいながら宿屋の部屋にいると、突然ルナが訪ねてくる。

「ロゼッタ様。あ、あのね……ちょっといいかな?」

 部屋に入るなりそう言うと、彼女はベッドの上に座る。何やら真剣な表情でこちらを見つめている。私は首を傾げながらも、とりあえず向かい側の椅子に腰かけた。

「どうしたの?そんな深刻な顔して」

「うーん……あのさぁ……ディアナ様が最近夜な夜などこかに行っているみたいなの」

「え?ディアナが?」

「うん。朝方にすごい疲れたような足取りで帰ってくるの。私心配で……でも聞けなくて……」

「心配ですね。ロゼッタ様、何か心当たりとかあるんですか?」

 正直分からない。というかあいつに興味はない。だがここで無関心を決め込むわけにもいかないだろう。

「いや、特にないけど……」

「そっか……」

 そう言って下を向くルナ。そして意を決したように顔を上げ、私に言ってくる。

「お願い!ディアナ様に気づかれないようこっそり尾行してくれない!?」

「は?」

「だからっ!ディアナ様の後をつけてほしいの!お願いロゼッタ様!」

 泣きそうな顔になるルナ。そんな顔しないでよ……この子って意外と面倒な性格しているよね……まあ仕方ないか。一応ディアナのことだしね。

「分かったわよ。今日確認してみるから」

 私がそう答えると、途端に笑顔になりありがとうと言ってくる。ほんっと現金だなルナは。まあいいか。私はため息をつくと夜まで待ち、ディアナが宿を出た後をこっそりついていくことにした。

 どこに行くつもりなのかしら?まさか男の家に上がり込んでるとかじゃないでしょうね?……んなわけないか。あいつは聖女だしね。しばらく後をつけると、ディアナはある廃墟のような建物の前で立ち止まる。

「なに?廃墟?」

 思わず呟き、私は慌てて口を抑える。そしてゆっくりと建物の中に入っていくディアナを追いかけていった。廃墟の中に入ると、そこは薄暗く不気味な雰囲気だった。ディアナは奥へと進んでいく。すると開けたところに着く。そしてディアナは部屋の中央に立ち止まり、しばらくじっとしている。瞑想かしら?

 ……いや違う!私はディアナが何をしているか気づき、慌てて止めに入りその身体を掴む。

「バカ!あんた何やってんの!?」

「ロゼッタさん!?どうしてここに……」

 私が掴んだディアナの身体はすごい汗だくでローブまで濡れていた。

「……もうやめなさい。あんたに攻撃魔法は使えない」

「私は諦めません」

「……っ!いい加減にしなさい!あんたの女神の力を外に解放すればあんたは死ぬのよ!」

 そう。前に聞いたディアナの話。ディアナは元々身体が弱かった。女神の力を覚醒させ、体内に宿るその力で普通に動けているだけだ。もちろんあの強力な防御魔法や身体能力も。

 しかしそれは彼女の寿命を削っているのだ。このまま女神の力を解放してしまえば彼女は確実に命を落とす。それをディアナ自身も分かっているはずだ。それでもなお彼女は……

「ロゼッタさんには分かりません。私の気持ちなんて」

「分かるはずないでしょ!あんたの考えなんか!」

「なら放っておいてください。あなたが心配してくれる必要ありませんから」

 そう言うとディアナは再び魔力を高めようとする。私は舌打ちをし、無理やりディアナを抑えつける。

「いい加減にして!あんたに死なれたら困るのよ!分かってんの!?」

「なぜですか?私とあなたは聖女と魔女。本来なら相容れない存在です」

「あんたは私の仲間でしょうが!」

 そう自然と言葉が出ていた。私の言葉にディアナは目を見開き、動きを止める。

「仲間?」

「あ……いや……別に深い意味はないわ。それにギル坊やルナ。そしてメルティアだって悲しむでしょ!」

「……」

「とにかく!こんなところで無駄死にする必要はないわ!大人しく帰りましょう?」

「……分かりました。少し頭を冷やします」

 そう言ってディアナは立ち上がる。そしてこちらを見るといつものように無表情のまま私に言った。

「貸しだとは思っていませんから」

「はいはい。分かったわよ。早く帰って着替えなさい。風邪ひくわよ?」

 私がそう言うとディアナは素直にうなずき、私たちは廃墟を後にし、部屋に戻る。

「はぁ……」

 私は大きくため息をつく。ディアナにあんなこと言ったけど、私に何ができるのかしら。正直よく分からない。それにこの事はみんなに話すこと出来ないし、適当に誤魔化すことにした。

 そして次の日。私が寝ていると突然誰かに起こされる。

「いつまで寝ているのですか?」

「ふぇ?ディアナ?」

「少し私に付き合ってください。ほら行きますよ」

 そう言うとディアナは私の衣服を剥ぎ取り無理矢理着替えさせようとする。

「ちょ!ちょっと!やめて!自分でできるからっ!」

「そんな格好では外に出れません。黙って着がえて下さい」

「なんであんたが仕切ってんのよ!」

「ほら、さっさと行きますよ」

 ディアナに腕を引っ張られ、私は宿屋を出る。そしてそのまま昨日の廃墟に連れて行かれたのだった。
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