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第5章 探し人はギルド受付嬢のお姉ちゃん?
4. 理想を現実に
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4. 理想を現実に
そして翌日。オレはリリスさんとエドガーさんとギルドの開店準備をしている。一応、昨日のことをエドガーさんにも報告をすることにした。
「なるほどな。まぁジェシカの気持ちも分かるがな。オレも盾騎士としての誇りを持っているし、譲れないものくらいあるさ。でもこれはギルド『フェアリーテイル』の人の問題だから、経営してる以上、マスターがなんとかするしかないんじゃないか?」
「はい……分かっています……」
「オレは、お前なりのやり方でやれば良いと思うぞ?レイアがこの王都に来ている以上、いずれはジェシカと対面することになるんだから」
エドガーさんは優しくそう言ってくれた。そうだよな……このままじゃいけないよな。
「ほら。こうやって37歳のベテラン冒険者のエドガーさんも自分のプライドを捨てて年下のエミルくんや私の顔色を毎日伺って、このギルド『フェアリーテイル』で働いてるんですから。ジェシカちゃんにはガツンとプライドなんか捨てて『オレについてこい!』とか言ってやればいいんですよ。ジェシカちゃんはチョロいんだから」
「オレは顔色など伺ってないぞ?適当なことを言うなよリリス」
また毒を吐きまくるリリスさん。本当にこの人は……でもお陰で少しだけ元気が出た。するとそこにジェシカさんがやってくる。
「おはよう」
オレがやるべきことは決まっている。だからオレはジェシカさんの腕を掴みギルドを出ようとする。
「え?ちょっと!いきなり何!?」
「来てくれ」
「えぇ?どこに……ちょっとマスター!?どこに行くのよ!?仕事はどうするの!?」
「すいません!話はあとです!行きましょう!」
オレはそう言い残し、ギルドを出る。そのまま強引にジェシカさんを引っ張りとある場所に向かった。
「……着いた」
「あの……マスター……手……」
「あっすいません!」
「ここは……?」
ここはギルド『フェアリーテイル』の近くにある宿屋の一室。オレは一呼吸おいて、そのまま部屋の扉をノックする。
「おはようございます。ギルド『フェアリーテイル』のエミルです。昨日の依頼の件でお話があります」
そして扉が開かれる。そこには探し人を依頼した1人の少女がいる。ここからが本番だ。
「おはようございま……え?お姉ちゃん?……お姉ちゃん!!」
「レイア!?どうしてここに……どういうことマスター?」
「すいません。昨日。レイアから依頼を受けたんだ。ジェシカさんを探しているって。でもジェシカさんはきっちりしている人だから理由が知りたくて昨日ジェシカさんと」
「そうだったんだ……」
騙したようになってしまったのは申し訳ないが、オレはどうしてもジェシカさんの本当の想いを知りたかった。
「お姉ちゃん。どうして連絡くれなかったの?お母さんもお父さんも心配してたんだよ?それにギルド『ホワイトナイツ』も辞めちゃって……」
ジェシカさんは黙ってしまった。ジェシカさんの表情を見る限り、彼女はまだ『ホワイトナイツ』を辞めたことに対して未練があるようだ。だからこそオレがその未練を断ち切ってあげるんだ。オレはギルドマスターだから。
「あのジェシカさん。昨日、レイアが自分で働いているギルドで冒険者をやりたいって言ってるってすごく嬉しそうに話していましたよね?それはレイアも同じでしたよ。2人とも想いは同じだと思うんです」
「マスター……」
「なぁレイア。お姉ちゃんに憧れてるんだって言ってたよね?それはなんで?」
「お姉ちゃんは、すごく優しくて可愛くて、仕事もできるし。ギルド受付嬢になるって昔から言ってたし、その夢を叶えて……私だけの自慢のお姉ちゃんなんです!」
「……だそうですジェシカさん。レイアは上級者ギルドで働いているジェシカさんに憧れてるわけじゃない。『ギルド受付嬢』のジェシカさんに憧れてるんです。きっと親御さんも同じじゃないですかね」
オレのその言葉を聞いて、ジェシカさんの目からは涙が溢れていた。
「うぅっ……レイア……ありがとう……私のためにこんな遠くまで……探しに来てくれたんだね……」
ジェシカさんは泣きながら妹のレイアを抱きしめる。その姿はとても美しく、とても幸せそうな光景に見えた。そして改めてジェシカさんに伝える。
「ジェシカさんの理想像はあるし、完全に納得できていないと思います。だから……オレと一緒にギルド『フェアリーテイル』を必ず王国一の冒険者ギルドにしましょう。理想を現実にするんです。これからもオレにギルドのこと教えてください。ギルド『フェアリーテイル』にはジェシカさんが必要なんです。お願いします」
「……うん。約束よマスター。破ったら承知しないから」
そう言ったジェシカさんはとても輝いて見え、彼女の笑顔を見たオレも笑顔になったのだった。
そして翌日。オレはリリスさんとエドガーさんとギルドの開店準備をしている。一応、昨日のことをエドガーさんにも報告をすることにした。
「なるほどな。まぁジェシカの気持ちも分かるがな。オレも盾騎士としての誇りを持っているし、譲れないものくらいあるさ。でもこれはギルド『フェアリーテイル』の人の問題だから、経営してる以上、マスターがなんとかするしかないんじゃないか?」
「はい……分かっています……」
「オレは、お前なりのやり方でやれば良いと思うぞ?レイアがこの王都に来ている以上、いずれはジェシカと対面することになるんだから」
エドガーさんは優しくそう言ってくれた。そうだよな……このままじゃいけないよな。
「ほら。こうやって37歳のベテラン冒険者のエドガーさんも自分のプライドを捨てて年下のエミルくんや私の顔色を毎日伺って、このギルド『フェアリーテイル』で働いてるんですから。ジェシカちゃんにはガツンとプライドなんか捨てて『オレについてこい!』とか言ってやればいいんですよ。ジェシカちゃんはチョロいんだから」
「オレは顔色など伺ってないぞ?適当なことを言うなよリリス」
また毒を吐きまくるリリスさん。本当にこの人は……でもお陰で少しだけ元気が出た。するとそこにジェシカさんがやってくる。
「おはよう」
オレがやるべきことは決まっている。だからオレはジェシカさんの腕を掴みギルドを出ようとする。
「え?ちょっと!いきなり何!?」
「来てくれ」
「えぇ?どこに……ちょっとマスター!?どこに行くのよ!?仕事はどうするの!?」
「すいません!話はあとです!行きましょう!」
オレはそう言い残し、ギルドを出る。そのまま強引にジェシカさんを引っ張りとある場所に向かった。
「……着いた」
「あの……マスター……手……」
「あっすいません!」
「ここは……?」
ここはギルド『フェアリーテイル』の近くにある宿屋の一室。オレは一呼吸おいて、そのまま部屋の扉をノックする。
「おはようございます。ギルド『フェアリーテイル』のエミルです。昨日の依頼の件でお話があります」
そして扉が開かれる。そこには探し人を依頼した1人の少女がいる。ここからが本番だ。
「おはようございま……え?お姉ちゃん?……お姉ちゃん!!」
「レイア!?どうしてここに……どういうことマスター?」
「すいません。昨日。レイアから依頼を受けたんだ。ジェシカさんを探しているって。でもジェシカさんはきっちりしている人だから理由が知りたくて昨日ジェシカさんと」
「そうだったんだ……」
騙したようになってしまったのは申し訳ないが、オレはどうしてもジェシカさんの本当の想いを知りたかった。
「お姉ちゃん。どうして連絡くれなかったの?お母さんもお父さんも心配してたんだよ?それにギルド『ホワイトナイツ』も辞めちゃって……」
ジェシカさんは黙ってしまった。ジェシカさんの表情を見る限り、彼女はまだ『ホワイトナイツ』を辞めたことに対して未練があるようだ。だからこそオレがその未練を断ち切ってあげるんだ。オレはギルドマスターだから。
「あのジェシカさん。昨日、レイアが自分で働いているギルドで冒険者をやりたいって言ってるってすごく嬉しそうに話していましたよね?それはレイアも同じでしたよ。2人とも想いは同じだと思うんです」
「マスター……」
「なぁレイア。お姉ちゃんに憧れてるんだって言ってたよね?それはなんで?」
「お姉ちゃんは、すごく優しくて可愛くて、仕事もできるし。ギルド受付嬢になるって昔から言ってたし、その夢を叶えて……私だけの自慢のお姉ちゃんなんです!」
「……だそうですジェシカさん。レイアは上級者ギルドで働いているジェシカさんに憧れてるわけじゃない。『ギルド受付嬢』のジェシカさんに憧れてるんです。きっと親御さんも同じじゃないですかね」
オレのその言葉を聞いて、ジェシカさんの目からは涙が溢れていた。
「うぅっ……レイア……ありがとう……私のためにこんな遠くまで……探しに来てくれたんだね……」
ジェシカさんは泣きながら妹のレイアを抱きしめる。その姿はとても美しく、とても幸せそうな光景に見えた。そして改めてジェシカさんに伝える。
「ジェシカさんの理想像はあるし、完全に納得できていないと思います。だから……オレと一緒にギルド『フェアリーテイル』を必ず王国一の冒険者ギルドにしましょう。理想を現実にするんです。これからもオレにギルドのこと教えてください。ギルド『フェアリーテイル』にはジェシカさんが必要なんです。お願いします」
「……うん。約束よマスター。破ったら承知しないから」
そう言ったジェシカさんはとても輝いて見え、彼女の笑顔を見たオレも笑顔になったのだった。
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